資料を完成させ、プレゼンするには、何を、どのような順序で進めるべきなのか?
多くのプレゼン本では、デザインやPowerPoint操作といった「1枚のスライドを綺麗に見せる方法」に主眼が置かれます。しかし、私たちが会議やセミナーに持ち込むのは、1枚のスライドではなく総体としての資料です。資料の目的を定義するところから始め、資料をどのように作り上げるかから考えるべきなのは明らかでしょう。
本書では、資料の目的を「説得の成功」と定義し、その目的を達成するためのプロセスと、そこで必要になるスキルを解説します。
試し読み
以下、本書の冒頭部分の抜粋です。Webサイトと電子書籍では体裁が異なるため、完全には一致しない点、ご了承ください。
+++(以下、抜粋)+++
はじめに
いまや、「資料を作り、プレゼンする」ことは、ビジネスパーソンに当たり前に求められるスキルです。ビジネスパーソンどころか、小学生向けのプレゼン教室が開かれているくらいです。誰もが、自分の考えを資料にまとめ、それを人前で表現することを求められる時代になりました。
一方で、こんなことに悩んでいないでしょうか。
- なんとなく資料を作ってプレゼンしているが、正しい進め方を学んだことがなく、これでいいのか不安だ
- 学校で学んだプレゼンのやり方が、企業ではまったく通用しない
- 色々とプレゼン本を読んできたが、本ごとに言っていることがバラバラで、何を信じていいのか分からない
- スライドにどれくらいの情報を詰め込んだらいいのか分からない
- PowerPointに習熟し、きれいなスライドを作れるようになったが、資料の評価はパッとしないままだ
本書を読めば、これらのことに悩むことはなくなります。
では、『資料作成・プレゼンのプロセス』、始めましょう。
本書の内容
本書は、『ロジカルな資料作成・プレゼンテーションの教科書』シリーズの第1巻になります。シリーズ全体を通じて、「資料を作り、プレゼンする」ことに関するスキルを学んでいきましょう。
ただし、すべてが学べるわけではありません。できればすべてを説明したいのですが、「資料を作り、プレゼンする」ことに関わるスキルはあまりに広範囲であり、すべてを網羅するのは現実的ではないのです。一部のスキルは割愛せざるを得ません。
第1巻である本書では、そのあたりのことも含めて、「資料を作り、プレゼンする」ことの全体像を学びましょう。ちなみに、PowerPointの操作方法などはまったく扱いませんし、それなりに難しい内容も含まれます。今のうちに気合を入れておいてくださいね。
本書のゴール:資料を作り、プレゼンすることの全体像を理解する
具体的には、本書では以下の問いに答えていきます。
- 「資料」とは何か?
- 資料の目的は何か?
- 資料を作り、プレゼンすることは、どのように進めるべきか?
- それをうまくやりきるには、どのようなスキルが必要か?
本書の内容は、ビジネス・研究・教育など用途を問わず、資料を作る人なら誰でも役に立つものです。本書で全体像を押さえれば、そこから先で何を学んでいくかを、自分の状況に合わせて判断できるようになります。
なお、本シリーズの全体像は本書の最後に説明します。続編の内容は本書の理解が前提になるので、まずは本書を読んで、内容や説明のスタイルが気に入るか確認してください。気に入ったなら、続編もお付き合いいただけると嬉しいです。
本書を読み進めるにあたって
本書を読み進めるにあたって、注意点が2つほどあります。
サポートページ
本書にはサポートページが存在し、以下のコンテンツが掲載してあります。
- 文中に挿入されているスライド・画像
- スライドはPDFでダウンロードできます
- ただし、引用した画像に関しては含まれません
- 文中で紹介したすべてのリンク
- その他、ダウンロードできるコンテンツなど
リンクは以下になります。パスワードを入力すると、サポートページに遷移します。
https://liffel.com/support/
パスワード:Liffel
手を動かす
次に、自分の(頭ではなく)手を動かしてください。これは本書に限らず、スキルを学ぶうえでもっとも重要なことです。
具体的には、以下のポイントを意識してください。
- 文中の練習問題に取り組む(答えをどこかに書く)
- 書かれている内容を、自分のパソコンで実践する
- サポートページからコンテンツをダウンロードして、実際に使ってみる
本書の内容は、「知っていれば十分」なことではなく、「自分でできないと意味がない」ことです。そして、自分でできるかどうかは、実際に手を動かさないと分かりません。上記のポイントを意識することで、学びが深まるはずです。
では、前置きはこれくらいにして、学習を始めましょう。
Lesson 1: 資料とは
まずは準備運動として、本書で頻繁に使用する言葉を定義していきます。
本書は資料作成の教科書ですから、「資料」という言葉を定義しないと始められません。「資料」とは何でしょう?
資料
最初に結論を述べると、本書における「資料」とは、文書かパッケージのことだとします。以下のスライドにまとめました。
これは言葉の定義なので、本書を読む間はそういうものだと受け入れてください。ポイントは以下のとおりです。
- 「資料」と「文書」は同義語として扱われることもあるが、本書では明確に意味を分ける
- 文書は資料の一種
- PowerPointで作ったファイルのことを「プレゼン資料」と呼ぶことがあるが、本書ではこれを「パッケージ」と呼ぶ
- 「プレゼンテーション(プレゼン)」という言葉は、スピーチを伴う行動を意味する言葉とする
詳しく見ていきましょう。
文書
まず、本書における「文書」とは、縦長の用紙に、主にテキストを使って作成する書類です。あなたも見慣れたもののはずなので、大丈夫でしょう。
文書作成に用いるアプリはWordです。というより、本書ではWordで作るものを「文書」と呼ぶ、と捉えてください。
なお、正しくは「Word」ではなく「文書アプリ全般」なのですが、本書では作成アプリに関してMicrosoft Office製品の名称(Word, Excel, PowerPoint)を使用します(シェアが圧倒的であり、すでに一般名詞として使用されている感があるので)。以下のように考えてください。
- Word:文書アプリのこと
- Excel:表計算アプリのこと
- PowerPoint:パッケージ作成アプリのこと
AppleやGoogleのアプリを使う人は、頭の中で読み換えてください。
パッケージ
次に、本書における「パッケージ」とは何かを、以下のスライドにまとめました。
このように、「パッケージ」とはスライドの集合体のことです。これも先ほどと同じく、本書ではPowerPointで作るものを「パッケージ」と呼ぶ、と捉えてください。
パッケージのことを「プレゼン資料」と呼ぶ人も多いですが、本書では「プレゼンテーション(プレゼン)」という言葉は「パッケージにスピーチを添えて行う行動」という意味で使います。
つまり、パッケージはモノ・データで、プレゼンは行動です。ここを明確に区別したいので「パッケージ」という言葉を導入しています。
「スライド」と「コンテンツ」に関しては、特に説明は不要でしょう。上記のスライドを確認してください。
まとめ
ということで、本書では文書とパッケージを合わせて「資料」と呼んでいくことにします。
ここで、「文書とパッケージは別物なのだから、ひと括りにしない方がいいのでは?」と思ったかもしれません。たしかに、文書とパッケージは見た目も違えば、作成に用いるアプリも違います。
それでも、この2つは本質的には同じものです。
どのような点で同じなのでしょう? 本書を読み終えるころには、この問いに対する答えが分かります。
それでは、準備運動は終わりです。本題に入りましょう。
+++(抜粋終わり)+++