どのように資料を構成すればよいのか?

構成(何を、どういう順序で伝えるか)はその位置づけが曖昧なせいか、ロジカルシンキング本でも、プレゼン本でもあまり扱われません。

本書では、パッケージ(プレゼン資料)を題材にしながら、論理的に受け手を説得しようとする状況において、どのように資料を構成するべきかを考えていきます。

※本書は2021年3月まで販売していた『スライドライティング 第2章 パッケージの構成』の第2版に該当します。内容が重複する部分があるので、旧書籍をお持ちの方はご注意ください。

試し読み

以下、本書の冒頭部分の抜粋になります。Webサイトと電子書籍では体裁が異なるため、完全には一致しない点、ご了承ください。

+++(以下、抜粋)+++

はじめに

本書『資料の構成』では、資料を構成する方法を学びましょう。説得のプロセス上では、以下に位置します。

『資料の構成』の位置づけ

ちょうど、ロジックとレトリックの中間にあるようなテーマです。

なお、説明しやすさの関係上、資料の形態としては、パッケージ(スライド)を考えます。スライドの見せ方の部分は文書には適用できないことが多いですが、書く内容は文書にも適用できるものです。文書を作る人も心配しないでください。

具体的には、以下の問いに答えていきます。

  • パッケージをどのように構成するべきか?
    • スライドにはどのような種類があるか?
    • それぞれのスライドの役割と、配置すべき位置はどこか?
    • それぞれのスライドには何を書き、どのように見せるか?

早速ですが、結論を先に見ておきましょう。パッケージの構成は以下のようになります。

資料の構成

詳しい内容は後述しますが、とにかく、このスライドの中身を理解し、自分の言葉で説明できるようになることが本書のゴールです。構成の基本的な型を押さえましょう。

本書を読み進めるにあたって

本書を読み進めるにあたって、注意点が3つほどあります。

注意点①:前提となる知識

まず、シリーズ第1巻である『資料作成・プレゼンのプロセス』は読了済みであるという前提で話を進めます(すでに冒頭からスライドを使い回していますが)。まだ読んでいない人は、そちらを先に読んでください。

注意点②:サポートページ

本書にはサポートページが存在し、以下のコンテンツが掲載してあります。

  • 練習問題用のテンプレート
    • ただし、組織から支給されているテンプレートがある人は、そちらを使った方がよいでしょう
    • パブリックドメイン(著作権なし)としますので、テンプレートがない人は、これを改変して使ってください
  • 文中に挿入されているスライド・画像
    • スライドはPDFでダウンロードできます
  • 文中で紹介したすべてのリンク

リンクは以下になります。パスワードを入力すると、サポートページに遷移します。

https://liffel.com/support/
パスワード:XXX(書籍には掲載されています)

注意点③:手を動かす

前作と同じく、自分の手を動かすことを大事にしてください。

本書では具体的なスライドの作り方を学びますが、これは自分で手を動かさないと決して身につかないことです。読んで分かったつもりになっても、実際に自分で作ってみると勝手が違うものですからね。

できれば、今すぐPowerPointを立ち上げてください(練習問題があるのはしばらく先ですが)。本書のオススメの読み方は、PowerPointの使えるパソコンを脇において、タブレットなどの大きめの端末で読むことです。

では、前置きはこれくらいにして、学習を始めましょう。

Lesson 1: 前提

『資料の構成』の前提

前作の最後に説明したとおり、本書からはレトリックの話をします。言い換えると、ロジック構築までは終わっているという前提のもとに話を進めるわけです。

ということは、具体的な状況を設定せざるを得ません。状況を設定しないことにはコンテクストが決まらず、資料の方向性が定まらないですからね。

この章では、前作の復習をかねて、本書ではどのような前提を置くのかを確認していきましょう。

状況設定

今回の状況設定は以下のものであるとします。

  • あなたは、ある会社の社長(山田 太郎)の右腕である
  • 先週の業績報告会で、関西支部の業績が急速に悪化していることが判明した
  • あなたは「お前が担当しろ。どうすればいいか、来週に報告してくれ」と社長に言われた
    • 本日は2020年4月1日である
  • 社内のルールとして、報告はプレゼンで行うこと、パッケージのデータはプレゼン前日17時までに会議の参加者に送付することが決められている

これは前作で設定した状況とまったく同じです。わざわざ変える理由がないですからね。同じ状況を使い回します。ざっくりしたイメージとしては、典型的な社内会議だと考えてください。

この状況を受けて、あなたは説得のプロセスを進めました。復習しておきましょう。

説得のプロセス

現在は、「ロジックを構築する」までが終わっている状態だと考えてください。

では、プロセスごとに、何が起きた(ということにする)のかを見ていきましょう。

プロセス①:ブランドを形成する

まず、あなたは最低限のブランドを有しています。というより、社長の右腕なのですから、それなりのブランドがあると考えてよいでしょう。社長はあなたを信頼しています。

よって、社長があなたの報告に対し「嘘をついているのではないか」、「分析の基本的なところで間違っているのではないか」といった疑いをかけてくることはありません。まっすぐに報告して、社長と議論ができる状態です。

前作の復習ですが、現実にそういう状態になるには、長い時間がかかります。これまでに何度も誠実な報告をしてきたからこそ、今回の状況があるわけですね。ブランドは一朝一夕には形成できません。

プロセス②:説得を設計する

次に、設計は以下のように行ったとします。設計シートを確認してください。前作と同じです。

説得の設計シート 記入例

ポイントを確認しておきましょう。

社内会議なので、LUバランスは論理性に寄っています。具体的なロジックとレトリックの方向性は以下のようになっています。

  • ロジック
    • 量:時間内に会議を終えられる範囲で、必要なことはすべて報告する
    • 質:できるだけデータを用意する
  • レトリック
    • メディアはパッケージを選ぶ
      • 社内ルールでそう決まっているから
    • フォントサイズは小さめ(14pt以下)、イメージ画像は不要
      • データを事前配布するので、小さめのフォントサイズが使える

論理性に寄せた、情報密度が高めのスライドを作るということですね。

なお、前作で述べたとおり、資料の情報密度はケースバイケースです。よって、この情報密度があなたの会社の社内会議に使うものとはズレている可能性はあります。ここはどうしようもないので、本書ではこの設定を受け入れてください。

これはこの点に限った話ではありません。あなたが実践で資料を作り・プレゼンする状況が、上記の前提条件と完全に一致することはないでしょう。本書で学ぶのは、あくまでも上記の前提に基づいた、1つの典型的な型でしかありません。「これが絶対的な正解だ」と捉えるようなことはせずに、状況に応じて柔軟に変更する姿勢を忘れないでください。

プロセス③:ロジックを構築する

設計を終え、あなたは現地にてリサーチを行い、ロジックを構築しました。以下のテキストファイル(及び、その背景にある分析結果など)が完成しています。この内容を資料に落とし込んでいくので、いまはざっと眺めるだけで十分です。

ロジック例①

ロジック例②

一般に、このテキストファイルは数ページに及びます。そうなるように思考・リサーチをしないと、受け手を説得できませんからね。ただ、本書ではここをメインに扱うわけではないので、内容をシンプルにして1ページ半程度にしています(内容はすべて架空のものです)。

これも前作の復習ですが、PowerPointを触り始めるタイミングは、このようなテキストファイルが出来た後です

説得のプロセスにあるとおり、レトリックで包む(=PowerPointを触る)のは、ロジックを構築した後です。まずはロジックを構築することにリソースを投入しましょう。

今回のケースなら、あなたは以下のような作業を行った、ということです。

  • 何を考える/調べる必要があるか(論点の構造)を考えた
  • 出てきた論点に、リサーチをして答えを出した
    • 現地に赴いて、関係者にインタビューをした
    • 必要なデータを集めて、分析をした
  • 集まった事実から、何が言えるかを考えた

この結果として、何を言うべきか大方決まったので、それを資料化するタイミングが現在(=次章以降で想定しているタイミング)になります。

なお、実際には、使えそうなグラフを先にスライドにしてしまうことはありますし、パッケージを作っている途中でロジックの粗が見つかることもあります。「テキストファイルの段階で、完璧なロジックが作れる」と考えるべきではありません。やってみればそれが無理だと分かります。

それでも、「ロジックの骨子をテキストファイルにする」ことだけは、必ずやってください。ここをサボると、キーメッセージがボヤけたり、論理構成が曖昧になったりして、ロジックの価値がゆらいでしまいます。これも前作の繰り返しですが、中身がないことを上手に伝えても、価値は生まれません

以上が、本書における前提になります。

次章から、どのようにパッケージを構成するかを学んでいきましょう。

+++(抜粋終わり)+++

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