論点を分解した後、何が、どのように進んで、最終的なスライドやパッケージが出来上がるのか?

リサーチが進みながらロジックが構築される過程は、順序どおりに進むプロセスというよりは、相互の要素がお互いに影響しあう、有機的なサイクルです。

本書では、そのサイクルの進み方や、そこで使うべきツール・アプリを学んでいきましょう。

試し読み

以下、本書の冒頭部分の抜粋になります。Webサイトと電子書籍では体裁が異なるため、完全には一致しない点、ご了承ください。

+++(以下、抜粋)+++

はじめに

本書は『ロジカルな資料作成・プレゼンテーションの教科書』シリーズの第3巻になります。本書では、「スライドやパッケージはどのように出来上がるのか」ということを学んでいきましょう。早速ですが、まずは全体像を見てください。

論点がパッケージになるまで

スライドの上部は、本シリーズ全体の根本的な考え方である「説得のプロセス」です。

本シリーズではこれまで、このプロセスの「ロジックを構築する」の冒頭にある論点の分解までと、最終的なパッケージの構成を解説しました。

本書の目的は、この間にある部分を補足することです。スライドにあるとおり、この部分は「プロセスとして、順序どおりに進む」というよりは、様々なことが並行に、相互に影響を与えながら進んでいきます。シリーズ第1-2巻ではこのあたりの深い部分まで踏み込んでいないので、本書でここを掘り下げます。

具体的には、以下の問いに答えていきます。

  • 論点を分解したあと、どんな作業をして、スライドやパッケージが出来上がるのか?
  • それらの作業は、どんなアプリ・ツールで行えばよいか?
  • ロジックと成果物が手元にあるとき、それをスライド化するプロセスはどのようなものか?

本書は、シリーズ全体の折り返し地点であると考えてください。

本シリーズは次巻以降、デザインやメディアといった「1枚のスライド内で完結すること」に焦点を当てます。言い換えると、パッケージ全体に関わる話は、次巻以降ではしません。本書までで「全体としての資料」の作り方を押さえて、次巻以降は細かいテクニックを学んでいきましょう。

本書のゴール:個々のスライドや、全体としてのパッケージをどのように作り上げるかを理解する

第1-2巻の更新点|本書の位置づけ

現在、本シリーズ第1-2巻の最新バージョンはv1.1になります。v1.0(2022年4月中旬まで発売)を購入された方に、更新点の説明&お詫びをさせてください。

更新点は以下になります。

  • 第1巻
    • 最後に説明した、シリーズ全体の構成を変更
    • それに伴い、「シリーズものなのでシリーズ番号はつけますが、基礎編だけ読んでいれば、あとは順不同で理解できるようになっています 」という記述を削除
      • 本書の理解が次巻以降の理解の前提になるため、順番どおりに読まないと理解できません。大変失礼しました
      • 本書も、シリーズ第1巻だけでなく、第2巻も読んでいたほうが理解しやすいです
  • 第2巻
    • 第13章「コンテンツスライドの構成」を修正

最新のシリーズ構成

シリーズ第1巻『資料作成・プレゼンのプロセス』のv1.0を購入された方は、「第3巻はデザインじゃなかったの?」と思われているかもしれません。デザインに関して書き進めたところ、先に本書のテーマを掘り下げる必要があると気づいたので、全体の構成を変更しました。

最新の構成は以下になります。申し訳ありませんでした。

シリーズ構成

本書のサポートページ

本書にはサポートページが存在し、文中に挿入されているスライドなどが掲載してあります。

リンクは以下になります。パスワードを入力すると、サポートページに遷移します。

https://liffel.com/support/
パスワード:XXX(書籍には掲載されています)

前提となる知識|これまでの内容の復習

簡単に、シリーズ第1-2巻の主なスライドと、言葉の意味を復習しておきましょう。

第1巻の内容

説得の構造

  • 説得(他者に「イエス」と言ってもらおうとする行為)の構造
    • ロジック:伝えていること
    • レトリック:ロジックの伝え方
      • メディア:伝え方の形式、及びそれに用いる装置
      • スタイル:あるメディアでの表現の仕方
    • ブランド:受け手にとっての説得者の位置づけ

説得のプロセス

問題と説得の関係

  • 論点:答えを出そうとする1つの問い
    • 大論点:論点を分解する(論点を、答えを出しやすい小さい問いに分けること)際に、最上位の論点であることを明示したいときに使う
    • 中論点・小論点:分解した、下位の論点

第2巻の内容

資料の構成

スライドの種類

  • パッケージを構成するスライド
    • 表紙/背表紙:パッケージの始まりと終わりの目印
    • 目的スライド:背景・論点・受け手にしてほしいことを伝え、プレゼンを立ち上げるスライド
    • 中表紙:プレゼンの全体像と現在地を表現するスライド
    • コンテンツスライド:普通のスライド
    • まとめスライド:ロジックを要約するスライド

では、前置きはこれくらいにして、学習を始めましょう。

Lesson 1: コンテンツスライド①(『資料の構成』Lesson 12)

まずは、コンテンツスライド(普通のスライド)とはどんなスライドなのかを掘り下げることから始めましょう。

結局、パッケージの大半はコンテンツスライドでできています。本書のテーマである「パッケージはどのように出来上がるのか」を理解するためは、コンテンツスライドを理解することが欠かせません。

一から学ぶため、まずは前作の復習から始めましょう。以下は、シリーズ第2巻『資料の構成』第12章の抜粋になります。これまでの内容を思い出しておいてください。内容を覚えている人は流し読みで構いません。

+++(以下、抜粋)+++

コンテンツスライドの構成

以下のスライドに、コンテンツスライドの構成をまとめました。

コンテンツスライドの構成

このように、コンテンツスライドはタイトル、ボディの2要素から構成されます

なお、厳密には備考欄、ロゴ、ページ番号なども入ってきます。ただ、このような細かい要素まで一気に説明しても分かりにくいだけなので、この章では上記の2つに絞ります。残りの要素に関しては第5巻『資料のレイアウト』で説明しますね。

また、この構成は、論理性に寄ったコンテクストにしか向いていません。分かりやすさに寄ったコンテクストなら、スライドをこんな風に分割せずに、大きいフォントや画像をドカンと使う(スライド全体をボディとして使う)ことをオススメします。

では、各要素を順に見ていきましょう。

コンテンツスライドの要素①:タイトル

タイトルとは

まず、タイトルとは、そのコンテンツスライドが答える問い(テーマ)のことです

これまで学んできたように、1つのパッケージを作ることは、1つの大きな問い(大論点)に答えることです。個々のコンテンツスライドの役割は、これの縮小版だと考えてください。1つの大きな問いを分解して小さくした問い(小論点)に答えるのが、コンテンツスライドの仕事です。タイトルの部分には、その「小さな問い」を書きます。

具体例

説明のための具体例を用意しました。以下のスライドを見てください。

スライド例①

グラフがドンと置いてあるだけの、「ザ・普通のスライド」ですね。このスライドは、今回の状況設定における、以下の太字部分をスライドにしたものです。なお、スライドにもあるとおり、データはすべて架空のものです。

ロジック例

この例では、テキストファイルには「(関西の)トラック市場はどのように推移しているか?」と書いてありますが、スライドのタイトルはそれとは変えてあります。その理由は、ここで本当に興味があるのはトラック市場の推移ではなく、「売上が減った原因は、市場にあるのか、シェアにあるのか?」という問いだからです。よって、より本質的な問いの方をタイトルにしました。

もちろん、そのまま「(関西の)トラック市場はどのように推移しているか?」という問いをタイトルにしても構いません。そちらのパターンも見てください。

スライド例②

これでも問題ありませんが、こちらのほうが退屈なスライドだと言えます。先ほどのタイトル(問い)のほうが魅力的ですよね。

ここでは中身の話をしたいわけではないので、一旦ここまでにしましょう。とにかく、コンテンツスライドのタイトルには、そのスライドが扱う問いを書くという点を押さえてください。

タイトルの書き方

お気づきのとおり、ここまでの例ではタイトルを単語や文節の形で書いています。

本シリーズでは繰り返し「論点(問い)は疑問文で書く」と述べてきました。それに習うなら、「本質として論点であるタイトルも、疑問文で書くべきでは?」と思ったかもしれません。

結論としては、タイトルを疑問文で書く必要はないというのが私の意見です。やってみると分かりますが、すべてのスライドが疑問文で始まると、さすがにくどすぎるのです。キャッチーさを重視して、単語や文節の形で書くのがオススメです。

ただ、自分の中ではしっかり疑問文を意識するのと、本番プレゼンにおけるスピーチ(各スライドの冒頭)では、なるべく疑問文を使ってください。上のスライドなら、「次に、トラック市場がどのように推移しているのかを説明します」といった感じです。このようにスライドの説明が始まると、受け手の中にスムーズに問いが想起されます。

コンテンツスライドの要素②:ボディ

ボディ

次に、ボディとは、問いに対する答えを表現する領域です。これは「スライドの中身」をそれっぽく言っているだけなので、特に難しく考える必要はありません。

具体例

再び、先ほどのスライドで確認しましょう。再掲しておきます。

スライド例①

先述のとおり、このスライドが扱っている問いは「売上が減った原因は、市場にあるのか、シェアにあるのか?」です。

見てのとおり、ボディにはこれに対する答えとなる内容が表現されています。以下のことを確認してください。

  • 上部のテキストボックスには、答えがテキストで書いてある
    • 主張(問いに対する直接的な答え):売上が減った原因は、市場の縮小ではなく、競合にシェアを奪われたからである
    • 根拠:関西地区のトラック市場は、この1年を通じて横ばいである(ので、市場が原因である可能性は消える)
  • 下部のグラフは、根拠を具体的なデータで表現している

このように、ボディでは問いに対する答えを様々なメディアで表現します。

ボディのレイアウトのパターン

原則としてボディには好きなようにコンテンツを置きますが、その一部を特定の用途に固定するパターンがいくつかあります。以下のスライドを見てください。

レイアウトのパターン

ここでは便宜上、以下のように名前をつけています。

  • ボディのみ型:特に専用の領域を設けないレイアウト
  • メッセージ型:ボディ上部にテキストを書くレイアウト
  • テイクアウェイ型:ボディ下部にテキストを書くレイアウト

ポイントは、論理性に寄ったコンテクストでは、メッセージ型を使うのが基本だということです。ボディのみ型が基本のように見えると思いますが、そうではないので注意してください(この理由で、「基本型」というネーミングにはしませんでした)。

これは大事なことなので別の言い方もしておきます。コンテクストが論理性に寄っているなら、プレゼンで主に伝えたいことは、テキストで明示します。論理性を重視するコンテクストに適切なメディアは文字(テキスト)だからです。すぐに消えてしまう音声で重要なことを伝えるべきではありません。

私の経験上、これと反対のことをしている(コンテクストが論理性に寄っているのに、テキストでメッセージを書かない)人は結構います。理由は以下のどちらかでしょう。

  1. 「テキストをできるだけ使うな」という、分かりやすさに寄ったコンテクストでのみ正しいことが書かれたプレゼン本を読んだ(そして、自分のコンテクストは論理性に寄っていることに気づいていない)
  2. ロジックを考えきれていない/テキストファイルがない

理由がどちらであれ、コンテクストが論理性に寄っているのに、ボディのみ型が頻出することは明確に間違いです。メッセージ型を使って、「このスライドで、自分は何を伝えたいか」をテキストで書いてください。

+++(抜粋終わり)+++

では、次章からさらに掘り下げていきましょう。

+++(抜粋終わり)+++

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