このエントリーでは、カスタムAIの作り方を説明します。ここでの「カスタムAI」とは、主要AIにおける以下の機能のことです(詳しくは後述)。
- ChatGPT:GPTs(または「CustomGPT」)
- Gemini:Gems
- Claude:Projects
カスタムAIを使いこなせると、AIの利便性が大きく上がります。特に、単なる調べものでなく、作業の効率化などにAIを使う場合には必須の機能と言っても過言ではありません。ここでしっかり押さえてください。
なお、このエントリーはある程度AIを触っている人向けの内容になります。あなたが完全なAI初心者の場合は、以下のエントリーから順に読んでください。
toc
カスタムAIとは
まず、「カスタムAI」とはその名のとおり、特定の方向に思考や答えの出し方をカスタムしたAIのことです1。ざっくり、何をするかを事前に指示してあるAIだと考えてもいいかもしれません。
とりあえず、例を見るのがわかりやすいでしょう。以下はGeminiのGemsで作成したカスタムAI「要約くん」です(名前は好みでつけられます)。
リンクを入力しただけなのに、AIがしっかりした回答をしていますよね。要約くんは「文章を読んで要約し、重要ポイント、示唆、読む価値がありそうかを判定する」カスタムAIなので、文章(この場合はリンク)を与えられた瞬間にそのように動いてくれるのです。
このような、「何を、どのように考え、どんな答えを出力するか」を事前に決めておくのがカスタムAIです。
カスタムAI:特定の方向に思考や答えの出し方をカスタムしたAIのこと
主要AIにおけるカスタムAI
冒頭でも触れましたが、主要AIにはすべてカスタムAIを作成する機能があります。確認してください。
- ChatGPT:GPTs
- 有料プランのみ
- 無料プランでも使える「プロジェクト」でもAIに指示は出せるが、指示が強く参照されない
- Gemini:Gems
- 読みは「ジェムズ」
- Claude:Projects
特にこだわりがないなら、まずはGemsで作成するのがよいでしょう。無料プランで使え、低機能モデルなら回数制限もないので、いろいろと試して「カスタムAIとはどのようなものか」を理解するのに向いています。それが理解できたら、各AIの特性も考慮して使い分けるとよいでしょう(例:アイデアに徹底的に反論させるカスタムAIはChatGPTで作る)。
プロンプトとは
カスタムAIは、「プロンプト」と呼ばれるAIへの指示文を書いて作成します。これは以下のイメージがわかりやすいでしょう。
このように、カスタムAIでは、チャットが始まる前にすでに1回目の入力が終わっているイメージです。この「1回目の入力」のことを「プロンプト」と呼ぶわけですね。
プロンプト:カスタムAIの挙動を決める、AIへの指示文
なお、一般に「プロンプト」とは「AIへの入力全般」を意味し、この意味だと通常モードでチャットボックスに書くことも「プロンプト」です。ただ、これだとわかりにくいので、本エントリーでの「プロンプト」は上記の意味に限定します。
「要約くん」のプロンプト
例として、先ほどの「要約くん」のプロンプトを見てください。
## 役割
あなたは文章理解を支援するAIです。
ユーザーが提示した文章や情報を要約し、重要なポイントと背景をわかりやすく説明してください。
## 答え方
文章を読み、以下の4点を回答してください。
1. 内容の要約
2. 重要ポイント
3. 実務や現実世界での示唆
4. 本文を読む価値がありそうか(★で評価。最高は5つ)
回答を分ける必要はありません。ひとつの回答でまとめて答えてください。
## 方針
- 専門用語は必要に応じて説明する
- 長い文章は簡潔に整理する
- ユーザーが理解しやすいように構造化して説明する 要約くんは、立ち上がった瞬間にこの入力を読み込んでいます。よって、実際のチャットでリンクを渡されただけで、即座に仕事に移れるわけですね。
このようなものがプロンプトです。
プロンプトの作成プロセス
では、プロンプトの作成プロセスを見ていきましょう。以下の3プロセスがオススメです。
- AIに作ってもらう
- カスタムAIとして実装する
- 改善点や不満点が見つかったら、その都度修正する
順に説明します。
プロンプトの作成プロセス①:AIに作ってもらう
まず、最初のバージョンはAIに作ってもらうのが圧倒的にオススメです。以下の質問を通常モードでAI(ChatGPT、Gemini、Claudeなど、なんでもOK)に投げてください。内容を理解する必要はありません。完全コピペで大丈夫です。
カスタムAI(ChatGPTのGPTsやGeminiのGems)のプロンプトを作成してください。
プロンプトを作成する前に、以下の項目を中心に、私に対して1つずつ順番に質問をして、必要な情報を集めます。
すべての質問が完了するまで、プロンプトは作成しないでください。
1. 役割とゴール: そのAIは何者で、最終的にユーザーにどのような状態(成果)を提供すべきか?
2. 前提条件: 回答の精度を高めるために必要な前提情報(ユーザーの情報、背景、環境など)は何か?(例:健康に関するアドバイスをするカスタムAIなら、ユーザーの年齢、性別、既往歴など)
3. 思考プロセス: 回答を出す前に、内部で何を分析し、どのような順序で論理を組み立てるべきか?
4. 出力形式: 表形式、マークダウン、箇条書きなど、具体的などんなフォーマットで出力するか?
5. 制約と振る舞い: 絶対に守るべきルール、避けるべき表現、推奨するトーン(敬語・簡潔など)
指示事項:
- 「1. 役割とゴール」以外の項目は、役割とゴールに照らして不要であれば質問しなくても構いません
- 各項目において、私の回答が抽象的な場合は「たとえば、〜ということですか?」と具体例を挙げて深掘りしてください
- IT、ビジネス、教育など、用途に合わせて、あなたが「これを聞いておくべきだ」と判断した独自の質問も追加してください
最終的な出力形式:
すべてのヒアリングが完了したら、以下の構造でプロンプトをまとめてください。
- メンテナンス性を重視し、箇条書きと改行を活用する
- 階層構造(##, ###)を適切に使い、論理構成を視覚化する
- 可能な限り具体的で、曖昧さの少ないプロンプトを書いてください
- コピーしやすいように、最終的なプロンプトはコードブロックとして出力してください あとは質問に答えていけば、最後にプロンプトが出力されます。ためしに「文章をレビューするカスタムAI」のプロンプトをChatGPTとGeminiに作成してもらいました。
ChatGPTの例 Geminiの例比較できるように、どちらも同じように(&結構テキトーに)答えましたが、それなりのプロンプトが出力されていますよね。
プロンプトの作成プロセス②:カスタムAIとして実装する
あとは、出力されたプロンプトをカスタムAIの「指示」や「手順」といったセクションにコピペすれば、晴れてカスタムAIの完成です。ここは各AIのUIに依存するため省略させてください。わからないことがあったら、AIに聞くとよいでしょう。
唯一、注意点を挙げるなら、「説明」というセクションはプロンプトを書く場所ではないということです。ここは「何をするカスタムAIか」を自分向けに書くセクションです。ほとんどの場合、そのカスタムAIが何をするかは名前から明らか(というより、そういう名前をつけるべき)だと思うので、「説明」は空白でも特に問題ありません。
プロンプトの作成プロセス③:使いながら改善する
実装できたら、あとは実際に使いながら、改善点や不満点が見つかるたびにプロンプトを修正しましょう。
先ほど見たとおり、プロンプトは自然言語(普通の言葉)で書かれています。プログラミング言語で書かれているわけではないので、簡単な修正なら自分でできるでしょう。
基本的に、細かい調整は人間がやるしかないし、そのほうが早いです。要約くんの例だと、ほとんどAIに作ってもらいましたが、「本文を読む価値がありそうかを★で評価して」というポイントは私が加えました。
なお、しっかりやりたいなら「マークダウン記法」の基礎を押さえると修正しやすくなります。興味がある人はAIに聞いてください。
もし大掛かりな修正をしたい場合は、それもAIに任せれば問題ありません。
以下のプロンプトでカスタムAIを使っていますが、(修正点・不満点)です。改善してください。
+++
(ここにプロンプトをコピペ) カスタムAIのメリットと使いどき
このように、プロンプトを作ること自体はたいした手間ではありません。むしろ重要なのは、カスタムAIにはどのようなメリットがあって、どういう状況で使うと便利なのかをしっかり理解しておくことです。
それがわからなければ、「このためにカスタムAIを作ろう」ということ自体が発想できないでしょう。これだけは、どこまでAIが進化しても私たちの仕事です。プロンプトはAIに任せて、人間は「カスタムAIに何をさせるか」に集中しましょう。
カスタムAIのメリット
まず、カスタムAIのメリットを整理しましょう。以下の2点です。
- AIの回答の質が上がる
- AIとのやりとりの効率が上がる
順に説明します。
カスタムAIのメリット①:AIの回答の質が上がる
まず、カスタムAIを使うとAIの回答の質が上がります。これは以下の理由によります。
- 回答の質そのものが上がる
- カスタムAIではモデルそのものが賢くなるわけではないが、詳細で具体的な指示を出すことで目的に沿った賢さを最大限に引き出せる
- 自分に最適化した回答をさせられる
- 回答の質が安定する(回答に一貫性・再現性が生まれる)
- 出力形式や方針を指定すると、回答がブレにくくなる
逆に言うと、こうなるようにプロンプトを書く必要があるということです。ただ、それは先ほどのコピペ文を使えばAIがやってくれるので、心配しなくて大丈夫です。
カスタムAIのメリット②:AIとのやりとりの効率が上がる
次に、カスタムAIを使うとAIとのやりとりの効率が上がります。これは以下の理由によります。
- 毎回、チャットボックスに長い文章を書く必要がない
- プロンプトさえ作り込んでおけば、毎回のやりとりは最低限のテキストで可能
- AIの回答も理解しやすい
- 答えがどういう形式で返ってくるかを事前に知っているので、サクサク理解できる
ざっくり、通常モードのやりとりが「会話」なのに対し、カスタムAIは「ツール」です。あくまでイメージですが、ボタンをポチポチ押すだけで用が済むような手軽さをゴールにするとよいでしょう(もちろん、実際はある程度のテキストを入力する必要はある)。
たとえば、以下のプロンプトを使うと、ステップを先に進めるときの入力が「y」の一文字だけで済みます。こういう工夫も、いろいろと試してみてください。
全体を通じて、ユーザーが「y」と入力したら、それは「yes」という意味です。文脈に応じて「開始して」、「そのまま進めて」、「問題ない」といった意味に解釈してください。 カスタムAIの使いどき
上記のメリットを最大限に享受できるのは、主に以下の3ケースでしょう。
- 繰り返す作業:同じ作業を、異なる内容・状況で何度も頼むケース
- 前提が重たい:調べものやアドバイスをさせるときに、こちらの前提を共有したほうが回答の精度が上がるケース
- 複数人で同じ用途に使う:チームなどで、同じ用途にAIを使うケース
順に説明します。
カスタムAIの使いどき①:繰り返す作業
まず、同じ作業を、異なる内容・状況で何度も頼むケースでは、カスタムAIが圧倒的に有用です。作り込んだプロンプトが何回も利用され、個別のやりとりは簡略化できる一方で、回答の質が向上します。
たとえば、これまで紹介した2つのカスタムAIは、以下のタイプの人に有用です。
- 要約くん:「文章を要約する」という作業が何度もある人(=長い文章を読む機会が何度もある人)
- 文章レビュアー:「文章をレビューする」という作業が何度もある人(=文章を何度も書く人)
もし何度も同じことをAIに指示したことがあるなら、それは最初のカスタムAIにピッタリの内容です。減るものはないので、カスタムAIを作成しましょう。
逆に言うと、1回きりで終わりの作業は、通常モードで十分なことが多いです。たとえば、滅多に長い文章を読まない人は、要約くんを作っても意味がないですよね。
カスタムAIの使いどき②:前提が重たい
次に、明確に「作業」とは言えなくても、AIに前提をしっかり共有しておいたほうが回答の精度が上がるケースも、カスタムAIを作る意味があります。例を見てください。
| カスタムAI | AIに共有すべき前提 |
|---|---|
| 健康アドバイザー | 自分の年齢・性別・既往歴・運動習慣など |
| ITアドバイザー | 自分のITスキル・所有ツールなど |
このような前提は、しっかり共有するに越したことはありません。そのほうがAIが自分にとってピンポイントなアドバイスをくれます。
ただ、このような前提は丁寧に書くとかなりの長文になります。というより、長文になるほど丁寧に書いたほうが、回答の精度が上がるのです。
となると、「通常モードで、新しいスレッドのたびに長文の前提を書く」というのは現実的ではありません2。カスタムAIを作って、プロンプトにまとめて書いておくのがよいでしょう。これなら修正もしやすいです。
カスタムAIの使いどき③:複数人で同じ用途に使う
最後に、複数人で同じ用途に使うなら、カスタムAIにすべきです。そのほうが回答の品質が安定するので、「お互いがAIで何をしているのか」の認識がブレません。仕事の文脈でAIを使うときには、この理由も大きいでしょうね。
人間が担うべきこと
まとめると、カスタムAIを作るうえで人間が担当するのは以下の2点です。
- カスタムAIにさせるべきこと(作業や用途)を特定する
- それをどのようにAIに手伝わせたいかを、できるだけ具体的に言語化する(ここはAIも手伝ってくれる)
プロンプトはできるだけAIに任せて、あなたはこの2点に集中してください。特に、太字にした部分はあなたがやるしかありません。あなたが普段、何を、どのように行っているかは、あなたにしかわからないからです。あなたがリードを取りつつ、AIをうまく頼れば、便利なカスタムAIができるはずです。
以上、カスタムAIについて説明しました。まずはよく使いそうなものをひとつ作ってみてください。その利便性が理解できるはずです。
なお、AI関連のエントリーは以下にまとめています。