
このエントリーでは、リサーチとはどのような行為で、どんな手法があるのかを学びましょう。
問いに答える際には、リサーチすることがほぼ必須です。リサーチを通じて情報を集めないことには、問いに対する正しい答えを出せません。
ただ、「リサーチ」とは当たり前に使われる言葉だけに、その意味は人によってバラバラです。いったい、「リサーチ」とは何をすることで、どんな手法があるのでしょう?
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リサーチとは
まずは「リサーチ」という言葉を定義しましょう。冒頭で述べたとおり、当たり前に使われる分、人によって意味がバラバラな言葉です。
当サイトでは、リサーチを「問いに答えるために、情報を集め・処理する行為」と定義します。
リサーチ:問いに答えるために、情報を集め・処理する行為
具体的なリサーチ手法に関しては、以下のスライドにまとめました。詳細は後述するので、ここではリサーチのざっくりしたイメージを掴んでください。
ここにある具体例のいくつかは、あなたもすでに経験しているでしょう。このような行為がリサーチです。
リサーチの条件:問いが立っている
リサーチの定義に関して、重要なポイントがあります。それはリサーチは問いに答えるための行為である、ということです。
逆から言ったほうが分かりやすいでしょう。問いがない状態で情報を集めることは「リサーチ」とは呼べません。
たとえば、「本を読む」という行為で情報を集められますが、これを「リサーチ」と呼んでいいのは以下の2つの条件が満たされているときだけです。
- あなたの中に「答えを出したい問い」がある
- その答えや、答えに繋がる情報が載っていると期待できる本を読んでいる
この2つの条件を満たさずに、なんとなく本を読むことはリサーチではありません。
こんなことは当たり前だと思うかもしれませんが、私の経験上、リサーチが失敗する最大の原因は、問いがないままリサーチ(っぽいこと)を始めることです。
これは「釣り針が付いていない竿を海に放る」ことに似ています。当然、引っかかるものがないので、魚は釣れませんよね。同じように、問いというフックがないと、情報の海に飛び込んでも、必要な情報が引っかからないのです。以下のスライドでイメージを掴んでください。
問いを立てずにリサーチを始めると、いつの間にか「情報を集めること」自体が目的化して、延々とリサーチを続けるハメになります。当然、アウトプットも出ません。リサーチする前に、必ず問いを立ててください。
リサーチする前に、問いを立てておく
リサーチ手法の全体像
次に、具体的なリサーチ手法を見ていきましょう。先ほどのスライドを再掲します。
まず、リサーチは以下の2つに大別できます。
- 情報収集:情報を集める
- 分析:集めた情報を処理する
なお、分析までやるかはケースバイケースです。シンプルな論点であれば、情報収集だけで終わることもありますね。一般に「リサーチ」と言う場合、情報収集のほうにフォーカスが当たります。
順に見ていきましょう。
リサーチ①:情報収集
まず、情報収集は以下の3タイプに分類できます。
- 既存の情報を集める:①デスクリサーチ
- 情報を生み出す
- 人間から情報を引き出す:②質問調査
- それ以外:③観察
順に説明します。
情報収集①:デスクリサーチ
まず、すでに世の中に存在している情報を集めるリサーチを「デスクリサーチ」と呼びます。その名のとおり、机で終わるから「デスク」リサーチですね。厳密には机というより、パソコンと図書館ですが。
デスクリサーチ:すでに存在する情報を集めるリサーチ
デスクリサーチの具体例は以下のとおりです。
- 検索する
- 本や論文を読む
- 新聞記事を読む
- 映像を見る
これらはすべて、どこかに記録されている情報を集める行為ですよね。このような行為がデスクリサーチです。要するに「調べる」ことですね。
現代では、上記の行為はほぼすべて、ネット上で完結します。絶版で電子書籍にもなっていない本を読みたければ図書館に行くしかありませんが、そのようなケースは例外的でしょう。
よって、「デスクリサーチ = ネット上の情報収集」と考えて大きな問題はありません。あと10年もすると、すべての情報はネットに集約し、デスクリサーチも「ネットリサーチ」と呼ばれるようになるかもしれませんね。
現代におけるデスクリサーチは、「ネット上でのリサーチ」と同義である
まずはデスクリサーチ
スライドにもあるとおり、リサーチの第一歩はデスクリサーチです。後述する質問調査や観察は、デスクリサーチでは答えが出せなかった場合のみ行ってください。
理由はシンプルで、デスクリサーチのコストがもっとも低いからです。ここでの「コスト」とは、金銭と時間の両方の意味です。
もちろん、ネット上のすべての情報が無料なわけではありませんが、それでも質問調査・観察に比べると安上がりなことが多いです。時間コストに至っては、まったく比較になりません。
また、すでに存在している情報を、あなたが再生産する意味はゼロです。わざわざコストをかけて質問調査・観察をするなら、新しい情報を生み出したいですよね。そのためには、デスクリサーチを通じて「何が分かっていて、何が分かっていないのか」を知る必要があるのです。
まずはデスクリサーチ
「デスクリサーチ」の同義語
ここで説明した「デスクリサーチ」と同じ意味で使われる言葉がいくつかあるので、それを紹介します。
- デスクサーベイ(単に「サーベイ」となることもある)
- 文献調査
- ただし、この言葉は「論文執筆において、参考となる先行研究や書籍を調べる」という意味あいが強い
- 情報収集(術)・情報調査・情報術
- デスクリサーチをテーマにした本のタイトルには、これらの言葉が使われていることが多い
- ただし、デスクリサーチだけでなく、質問調査まで含めるケースもある
どの呼称を使うかは好みの世界ですが、オススメは「デスクリサーチ」か「デスクサーベイ」です。当サイトでは「リサーチの一種で、もっともお手軽なもの」というニュアンスを強調したいので「デスクリサーチ」を採用しました。
情報収集②:質問調査
ここからは「情報を生み出す」リサーチです。まずは質問調査ですね。
質問調査とは、人間から情報を引き出すリサーチのことです。具体的には、以下のものがあります。
- インタビュー(口頭質問)
- 普通のインタビュー(1 to 1)
- グループインタビュー(1 to n)
- アンケート(質問票に回答してもらう)
- その他
- メールで質問する
- 掲示板やSNSで質問し、回答を募る
- ライブ配信者にチャットで質問する
上記の行為はすべて、あなたが問いを投げかけて、人間から情報を引き出していることを確認してください。このようなリサーチが質問調査です。
質問調査:問いを投げかけ、人間から情報を引き出すリサーチ
質問をする前に
繰り返しになりますが、リサーチの第一歩はデスクリサーチです。質問調査ではありません。言い換えると、人に聞く前に調べましょう。
先ほどの「その他」の部分に挙げたとおり、ネットのおかげで質問しやすい世の中になりました。Twitter(現X)やInstagramでは、私のような一般人が芸能人に質問することすら可能です(したことはありませんが)。
これ自体は素晴らしいことですが、なんでもかんでも質問することはオススメできません。理由は以下の3つです。
- 調べて答えが見つかるタイプの問いなら、調べたほうが正しい答えが見つかる可能性が高い
- 調べれば分かることを質問すると、あなたの信用度が下がる
- 質問に頼ることに慣れてしまうと、思考力がつかない
原則として、質問調査をする問いは「調べても答えが見つからない、ディープな問い」であるべきです。その問いに対する定性情報を集めたり(インタビュー)、定量データを集めることが(アンケート)、質問調査の役割です。
情報収集③:観察
情報を生み出す第2のリサーチは、観察です。これは言葉どおり、「見て、記録するリサーチ」のことです。
観察:見て、記録するリサーチ
主な観察対象になるのは、以下のようなことです。
- 自然現象
- 試験管や実験室の中で起こること
- 動物(人間も含む)の振る舞い
- ただし、人間に質問はしない(それは質問調査だから)
これらの対象を数えたり、実験したりするのが観察です。
観察 is king
観察はリサーチの王様です。妥当な根拠を構築したいなら、「その問いは、観察によって答えることができないか?」を考えましょう。
理由はシンプルで、人間が作る情報(=デスクリサーチや質問調査で得られる情報)は間違っている可能性があるからです。
知ってのとおり、人間は間違えることもあれば、嘘をつくこともあります。つまり、人間の作る情報は簡単には信用できません。
しかも、この傾向は近年の情報爆発によって加速しています。テキストになった嘘が当たり前に見つかり(例:掲示板やSNSの書き込み)、「フェイクニュース」という言葉が普通に使われる状況は、ネット社会以前には考えにくいことでした。
よって、デスクリサーチや質問調査をする際には、取得した情報が本当に正しいのかをあなたが評価しなければいけません。一方、観察ではこのプロセスをカットできます。
もちろん、観察においてもあなたが間違えたり、嘘をついたりする可能性はあります。しかし、これを言い出してしまうとあらゆる根拠が信頼できなくなる関係で、ビジネスや研究のような「参加者の質が担保されており、全員が真面目に考えようとする場」では、「観察によって得られた情報は疑わない」というのがマナーです1。詳しくは以下のリンクを参照してください。
リサーチ②:分析
最後に、分析を説明します。
先述のとおり、分析とは集めた情報を処理することです。分かりやすく言うと、集めた情報を、パソコンや自分の頭の中でいじくることですね。代表的なものを以下に挙げます。
- 定量データ(数字)の分析
- 記述統計(平均・偏差・分散など)の算出
- 検定(t検定など)
- グラフ化
- 定性データの分析
- 表にして整理する
- 要約
問いによっては、情報収集だけでは答えが出せないことも多いです。その場合は、分析を通じて情報の形を変え、問いに対する答えを導く必要があります。
分析のポイント
ポイントは、どんな分析をするかは、情報収集の前に決めておくことです。
理由はシンプルで、どんな分析をするかが事前に決まっていないと、分析に必要な情報を集め切れないからです。歯抜けのグラフとか、誰も見たくないですよね。「最後にこういう分析をする。そのためには、こういう情報が必要だ」ということが分かっているから、情報収集が有意義なものになるのです。順番を間違えないでください。
どんな分析をするかは、情報収集を始める前に考えておく
以上、リサーチの全体像を解説しました。次エントリーでは、情報収集の3タイプを比較しながら、それぞれの特徴や優位性を学んでいきましょう(後日投稿予定)。
また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。
参考文献
はじめて学ぶ社会調査: リサーチ・マインドを磨く8つのレクチャーFootnotes
-
残念ながら、ネット上の議論にこのマナーは適用できないでしょう。嘘つきを排除する仕組みが用意できません。 ↩