このエントリーでは、文章の種類・分類を説明します。
文章を読むにせよ書くにせよ、その種類を見極められることは重要です。文章は種類によって目的が異なるからです。目的が分からなければ、正しく読み取ることも、伝わる文章を書くこともできません。
また、ネットが登場して以降、私たちが日常的に触れる文章の量は爆発的に増えています。旧来の枠組みでは捉えきれない文章も登場しているので、そのあたりも整理しましょう。
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文章の分類:全体像
早速ですが、以下のスライドを見てください。世の中の主な文章を分類しました。
なお、旧来の分類はこの縦軸だけのものが多いです。ネット時代に合わせて、新しい枠組みを作ってみました。
個々の種類の前に、分類の枠組みを説明します。
縦軸:現実か虚構か
まず、縦軸は「文章の扱う内容が現実か虚構か」です。以下の整理ですね。
- 現実:現実・事実に関することしか述べない(ノンフィクション)
- 虚構:架空のこと・創作したことまで述べる(フィクション)
なお、現実に関することでも、書き手の感情・想像が多く含まれるほど、内容の信憑性は下がります。そのような文章は上下の中間に置いています。
横軸:手段か目的か
次に、横軸は「その文章が手段としてのコミュニケーションか否か」です。以下の整理だと考えてください。
- 手段:コミュニケーション手段(情報を伝えるための道具)としての文章である
- 文章の意味が正しく伝わることが重要
- 目的:それ自体が目的としての文章である
- 書くこと自体が目的なので、文章の意味にそこまで重要性がない
- 目的の例
- 自分の感情を発露する
- 創作を楽しむ・文章で遊ぶ
- 構ってほしい・認めてほしい(承認欲求)
手段に寄るほど公式な文章で、目的に寄るほど非公式・遊び的な文章だと考えてもいいでしょう。
目的としての文章の分かりやすい例は、俳句や短歌です。意味を正しく伝えることを重要視するなら、文字数を制限する理由がありません。俳句や短歌の目的は意味を正しく伝えることではなく、制約があるが故の表現や、創作そのものを楽しむことにあるのです。
主な文章の種類
枠組みが準備できたので、主な文章の種類を見ていきましょう。
文章の種類①:実用文(説明的文章)
まず、手段として現実・事実に関することを述べる文章を「実用文」と呼びます。ほかに「説明的文章」という名称になっていることも多いです。
実用文(説明的文章):手段として現実・事実に関することを述べる文章
実用文の分類
実用文はその目的によって、以下の3種に大別できます。
具体例 | 目的 | |
---|---|---|
論説文 | ・論文 ・小論文 | 主張の正しさを読み手に認めさせる |
説明文 | ・マニュアル(説明書) ・新聞記事 | 複雑な事実を読み手に理解させる |
連絡文 | ・メール ・手紙 | 単純な事実や用件を読み手に伝える |
小説家でもないかぎり、私たちが仕事や研究で書く文章はすべて実用文になります。
文章の種類②:文芸(文学的文章)
次に、創作に関する文章(公然に虚構を扱う文章)を総じて「文芸」と呼びます。文による芸術なので「文芸」ですね。ほかに「文学的文章」という名称もあります。
文芸(文学的文章):創作に関する文章
文芸の分類
文芸は芸術なので、分類を考えることにはあまり意味がありません。芸術である以上、究極的にはなんでもありだからです。ただ、「文章の形式で遊ぶか」という点での区別は持っておくとよいでしょう。
形式で遊ぶ文芸を総じて「韻文」と呼び、具体例は以下になります。
- 詩
- 俳句
- 短歌
どれも、普通の文章(散文)のようには書かず、リズムや形式を重視する文章です。
一方、散文で書かれる文芸には以下のものがあります。
- 物語文(小説など)
- 随筆(カタカナだと「エッセイ」)
物語文・随筆は、文章のゴールが「読み手を感動させる」である点では実用文と異なりますが1、「意味が正しく伝わらないと、そのゴールが達成できない」という点では実用文と同じです。
これを読み手の視点で言い換えると、実用文・物語文・随筆を読む場合、まずは意味を正しく取ることが第一です。よって、共通テスト(旧センター試験)では論説文と並んで、物語文が読解問題として出題されるわけですね2。
随筆は文芸なのか実用文なのか
余談ですが、上記のうち「随筆」は分類が難しいジャンルです。まずは「随筆」の定義を確認しましょう。
ポイントは、随筆が扱うのは現実だということです。私の知るかぎり、虚構を扱うものを随筆とは呼びません。
つまり、随筆は「創作」とは呼べない部分があるのです。現実に関する文章なので、その意味では実用文に近いです。
ところが、随筆は「文芸」と分類されるのが一般的です。実際、そのほうが適切でしょう。枕草子や徒然草を「実用文」と呼ぶのはどうもしっくりきません。
こうなる原因は、随筆では往々にして「答えがないようなこと」に関して「書き手が自分の感情を中心に、好き勝手に書く」からです。よって、随筆は現実に関する文章ではあっても、書き手が「読み手が内容に同意してくれること」を期待しているとは言えません(少なくとも、同意されるために全力を尽くしていない)3。
たとえ現実に関することであっても、読み手の同意を期待しない文章を「実用文」とは呼べないでしょう。よって、当サイトでも「随筆は文芸である」としました。
ただ、「エッセイ」と呼ばれる文章の中には「論説文」と解釈できるものがあるのも事実です。結論として、「随筆・エッセイ」という言葉には囚われないのがよいでしょう。中身から文章の目的を判断するしかありません。
「随筆・エッセイ」という分類はあてにならないので、中身から文章の目的を判断するしかない
また、英語の「essay」になると、話はまったく変わるので注意してください。英語で「essay」とは、短い論説文のことです。完全に実用文であり、読み手に同意させることを目指して書く必要があります。留学したい人は、この違いに注意してください(TOEFLや出願書類で「essay」を書く)。
文章の種類③:新しいジャンル
ここまで紹介した文章は、どれも従来の分類で捉えられているものです。名称や定義にも大きなバラツキはありません。
ここからは、ネット時代になって登場した新しいジャンルです。スライドを再掲するので確認してください。
スライドでは、以下の2つを掲載しました。
- 文章化したおしゃべり
- フェイクニュース
順に説明します。
新しいジャンル①:文章化したおしゃべり(おしゃ文)
新しいジャンルの筆頭は、文章化したおしゃべりです。長いので以下「おしゃ文」と呼ぶことにします。
おしゃ文の具体例は以下になります。
- 友人とのチャット
- SNSの投稿(の大半)
- 匿名掲示板での書き込み(の大半)
これらは現実に関する文章ではあっても、実用文のように明確な目的があって書かれるものではありません。コミュニケーションそのものが目的であり、おしゃべりに近いと言えるでしょう。以下のように、書き方もおしゃべりに近づける方向性です。
- 話し言葉をそのまま使う(書き言葉は使わない・嫌われる)
- 絵文字やスタンプによって、テキストでは表現できない感情(本当のおしゃべりでは表情などを通じて伝えられること)を補う
- 長文は嫌われ、短文を交互にやりとりすることが好まれる
ネットが登場してから、おしゃ文が爆発的に増えました。現在、ほとんどの人がもっとも多く読んでいる文章はおしゃ文でしょう(おしゃ文を「文章」と呼んでいいのか、という問題はあるにせよ)。
新しいジャンル②:フェイクニュース
もう1つの新しいジャンルは、フェイクニュースです。現実に関する嘘を流布する文章ですね。
テレビ・新聞といったマスメディアがフェイクニュースを流すことも皆無だったわけではありませんが、ネット時代になってフェイクニュースは劇的に増えました。以下の点が変わったからです。
- 個人が嘘を世界に発信できるようになった
- 嘘のメリットが増加した
- 嘘がバレにくくなった
- 世の中に流通する情報が増えすぎて、嘘を検証するリソースが足りない
- ターゲティング広告の発展により、だまされる人だけをピンポイントで狙って嘘をつけるようになった
- (クリック広告などを通じて)嘘を収益化できるようになった
- 嘘がバレにくくなった
この結果として、テキストになった嘘が急増しています。注意してください。
文章の種類④:個人的文章
最後に、人に読まれることを前提としない文章をひっくるめて、「個人的文章」と呼ぶことにしましょう。
個人的文章:人に読まれることを前提としない文章
個人的文章は人に見せないので、その目的や体裁はあなたが自由に決めて構いません。分類の枠組みにも当てはめようがないため、先ほどのスライドからもカットしています。
個人的文章の例
個人的文章の具体例としては、以下のものがあります。
- 日記
- メモ
- ロジック
- プレゼンや書籍における、おおまかな話の流れ
- 「アウトライン」や「ストーリー」と呼ばれることもある
このうち、「ロジック」だけは文書やプレゼンを作成するときに必要なので、たとえ個人的文章であっても効率的な作り方を学ぶことをオススメします。以下のエントリーを参考にしてください(別カテゴリーです)。
さらに学習を進めたい人は
以上、文章の種類・分類を説明しました。次はこの分類を使って、「文章力」について考えてみましょう。
また、文章力に関するエントリーは以下のリンクにまとめてあります。