AIの分類

このエントリーでは、AIを使いこなして考えるために必要となる力について説明します。

現代において、「考える」という行為にAIを使わないことは単なる「怠惰・非効率」である、と言っても過言ではないでしょう。

現代のAIは、ざっくり「世の中にある公開情報をだいたい知っている、猛烈に頭がいい、疲れ知らずでこちらの相手をしてくれるパートナー」です。乱暴に言うと、世界一の天才が、無料で、嫌な顔ひとつせず(AIに顔はありませんが)、私たちをサポートしてくれるわけです。これを使わない手はありません。

一方で、「とにかくAIに頼れば、うまく考えられる」というほど単純な話でもありません。適切な準備ができていなければ、私たちはAIが言うことを盲信するだけのイエスマンになってしまうでしょう。これでは、私たちがAIに使われる側になってしまいます。

このエントリーでは、その「適切な準備」とは具体的にどのようなことかを考えます。AIを使う人間であるために、私たちは何をすべきでしょうか?

なお、このエントリーにおける「考える」とは「正解がない問いを立て、それに答える」行為のことです。テスト勉強などは対象にしていないので注意してください。詳しくは以下のエントリーで解説しています。

また、対象とするAIはいわゆる三大AI(ChatGPT、Gemini、Claude)です。まだひとつも触ったことがない人は、読み進める前にどれかひとつでも触っておくと、内容が理解しやすいはずです。有料モデルである必要はありません。AIの分類は以下のエントリーで説明しているので、AI初心者の方は先にこちらを読むのがオススメです。

では始めましょう。

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AIと考えるうえで必要な4つの力

早速ですが、AIと考えるために必要な4つの力を以下のスライドにまとめました。AIと考えるうえで必要な4つの力

このように、以下の4つの力が必要です。

  1. 欲望
  2. 言語力
  3. 批判的思考力
  4. メタ認知力

順に説明します。

AIと考えるうえで必要な4つの力①:欲望(知的好奇心)

AIと考えるうえで必要な4つの力

AIと考えるために必要な力その①は、欲望(知的好奇心)です。これを「力」と呼んでいいのかは議論の余地がありますが、とにかく、欲望がなければAIと考えることはできません。

理由はシンプルで、AIはこちらから問いかけないと何もしてくれないからです。AIとのやりとりの始まりは常に、私たちからの問いかけです。言い換えると、「なぜこうなっているのか?」、「もっとうまくやれないか?」といった、「問いを立て、その答えを出そうとするエネルギー」がなければ、AIという高性能な知能は沈黙したままです。そのエネルギーとは、私たちの欲望にほかなりません。

欲望こそが、AIを使いこなすための根本的なエンジンです。これがなければ何も始まりません。

欲望を鍛えるには

では、欲望を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう? というより、欲望は鍛えられる類のものなのでしょうか?

率直に言って、ここは遺伝的な影響が大きいところで、後天的に有効な解決策があるとは思えない、というのが現時点での私の意見です。食欲や性欲には遺伝的な個人差があり、それは後天的な努力でどうにかなるものではありません。同じことは知的好奇心にも当てはまるのではないでしょうか。

ただ、このエントリーを読んでいる時点で、あなたには健全な知的好奇心があると考えられます。特に心配する必要はないでしょう。

スマホから距離を取る

ちなみに、「知的好奇心を上げる」という意味で有効なことは(私の知るかぎり)見当たりませんが、「知的好奇心を維持する」という意味では万人に効果がありそうなことがひとつあります。それはスマホを触りすぎないことです。具体的には、以下の行為をやりすぎるべきではありません。

  • コミュニケーション(SNS含む)
  • ゲーム
  • ポルノ

これらの行為にどっぷり浸かると、脳がドーパミン中毒になります。私の観察するかぎり、ドーパミン中毒になっている人が健全な知的好奇心を維持できている例は存在しません。脱線になるのでこれ以上は説明しませんが、スマホは単なる便利な道具ではないことを覚えておいてください。

AIと考えるうえで必要な4つの力②:言語力

AIと考えるうえで必要な4つの力

AIと考えるために必要な力その②は、言語力です。言語力が低い人は、AIを使いこなせません。

これも理由はシンプルで、AIとのやりとりは言語によって行われるからです。以下のように、AIとのやりとりにおいて言語力は決定的に重要です。

  • こちらからの問いかけ
    • 言語力がなければ、自分の中にある欲望を、明瞭で具体的な言葉でAIに伝えられない
    • AIはこちらの問いかけのレベルに合わせて答えを調整してくるので、こちらの問いかけのレベルが低いと、AIの賢さを十分に活かせない
  • AIからの返答
    • 言語力(読解力)がなければ、AIの返答を正しく読み取って、やりとりを発展させられない

特に問題なのは太字にした部分で、問いかける言葉のレベルが低いと、AIのレベルも低くなります(厳密には、「低いように感じられる」)。もし現時点で「AIってそこまで賢くないよな」と感じているなら、あなた自身の言語力を疑ったほうがよいかもしれません。

言語力を鍛えるには

では、言語力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう?

まず、前提として「あなたは読解力に問題はない」とさせてください。読解力に問題がある人はこのエントリーをここまで読まないし、読解力を簡単に改善する方法はおそらく存在しません(言語を大量にインプットするしかない)。

残るのは、アウトプット(こちらからの問いかけ)の部分、つまり、日本語の作文力です。この力に関しては、AIを使いまくることで改善できるし、おそらくこれがもっとも効率的な方法です。

作文力が低いとしたら、その原因はほぼ確実にこれまでに書いた量が絶対的に足りないことです。実際、日本の学校教育では「一定量以上の、体系的な文章」を書く経験がほとんどできません。

この問題は、AIを使いまくることで解決できます。AIを使いまくれば、嫌でも言葉をアウトプットすることになりますからね。

言語力を鍛えるAIの使い方①:書く

ただ、闇雲にAIを使いまくっても、おそらく言語力は向上しません。以下の2点を意識してください。

  1. キーボードを使って、それなりの長文を書く(音声入力を使わない)
  2. 下書きをする(チャットボックスに直接書かない)

まず、音声入力はまったくオススメしません。音声入力のほうが効率的なのは事実ですが、一発で質の高い言葉を声として出力できるのは天才だけです。まずは書いて、自分の言葉とじっくり向き合いましょう。

このとき、テキストエディターなどに下書きしましょう。AIのチャットボックスに直接書くと、どうしてもEnterを押して作成途中の文章が送信されてしまう事態が頻発します。また、「書いたものをコピペする」というのは一手間増えるわけですが、このときに「書いた言葉を自分でチェックする(=結果として、言語力が高まっていく)」ことは一手間に十分見合うメリットです。

言語力を鍛えるAIの使い方②:AIに指示を出す

徹底的にやりたいなら、AIに「質問に答えるだけでなく、質問文そのものに対するフィードバックもしてほしい」と指示を出しておくのもひとつの手です。

当たり前ですが、普通のモードだとAIは「質問に答えること」を優先し、「質問文の改善点」を教えてくれることはありません。あまりに曖昧な質問をした場合は例外ですが、最低ラインを超えている場合は答えだけが返ってきます。これでは、言語力の問題に自覚的になることは難しいでしょう。

三大AIには、どれもカスタマイズ機能がついています(例:GeminiのGems)。ここに「プロンプト」と呼ばれる指示文を書くことで、AIを「質問に答えるだけでなく、質問文のフィードバックをする」挙動に変えられます。これに関しては、具体的なやり方とセットで別エントリーで紹介します(後日投稿予定)。

AIと考えるうえで必要な4つの力③:批判的思考力

AIと考えるうえで必要な4つの力

AIと考えるために必要な力その③は、批判的思考力です。具体的には、「AIの言うことを鵜呑みにせず、正しいかどうかを自分で判断できる力」のことだと考えてください。

なお、この力は呼び名が安定しておらず、以下の呼び名になることもあります。

  • ロジカルシンキング(力)

    • 当サイトでは、この呼び名をメインで使っています
  • 合理的思考力

  • 論理的思考力

一般に、「内容を疑う」というニュアンスが強いときには「批判的思考」を使うので、ここではそれに合わせました。

どう呼ぶにせよ、この力がなければ私たちはAIと対等なやりとりができません。質問して、答えが返ってきて、「そうですか、ありがとうございます」でおしまいです(AIにお礼を言う必要はありませんが)。

AIのミスを恐れない

また、批判的思考力がなければ、AIの間違いが気になって、AIを使いこなせないでしょう。

知ってのとおり、AIには「ハルシネーション」と呼ばれる、間違っていることを平然と断言する傾向があります。この傾向はすさまじいスピードで改善されていますが、それでも、AIがたまにおかしなことを言うのは間違いありません。私の体感的には、ざっくり10回に1回くらいは変なことを言います(2026年時点)。

しかし、「正しいかどうかを決めるのは自分だ」という意識(能力)があれば、この傾向はそこまで気になりません。10回に9回はためになることを教えてくれるわけですからね。1回のミスには目を瞑って、9回のメリットを享受できます。しかも、私の経験上は、「そこは違うんじゃない?」と指摘すればAIはそれを認めます。

一方、「正しさは他者から与えられるもので、自分はそれを決める立場にはない」という意識の人は、たまに起こるミスが許せないでしょう。それは嘘をつく先生と同じようなものですからね。

つまり、根本的に必要なのは批判的思考力というより「正しさを決めるのは自分である」という意識です。この意識を持つために、批判的思考力を鍛える必要があるわけですね。

AIが神様になるリスク

おそらく近いうちに(2030年くらい?)、受験勉強や資格試験の世界では「一定以上の言語力とモチベーションがある人は、誰かに習うようなことはせず、AIと独学する」ということになるでしょう。世界一の家庭教師がコンピューターの中にいますからね。ほかの方法で勉強する理由がありません。学校という箱や、先生という存在は残っても、その役割は再定義されていくはずです。

こうなること自体は不可避だと思いますが、このような「絶対的な正解がある領域で、その正解を教えてくれる存在」としてのみAIを使うことには、潜在的なリスクもあると感じています。

そのリスクとは、AIが自分の中で神様になってしまうことです。

たとえば、小学校から大学卒業まで、そのような用途でAIを使った人がいるとします。そうすると、16年間、AIはその人にとって「必ず正しいことを教えてくれる存在」だったわけです。それはもう、その人にとっては「神様」と呼んで差し支えないくらい絶対的な存在でしょう。社会に出てから神様(AI)を対等な議論相手と見なして、その正しさを疑うことは不可能ではないでしょうか。

つまり、AIを使い始めるのと同時に批判的思考力を鍛えないと、AIの言いなりになるリスクが高まるのです。これは若い人ほど注意してください。

批判的思考力を鍛えるには

では、批判的思考力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう?

ここは当サイトでメインに扱っている部分なので、以下のカテゴリーを参考にしてください。

ガチガチに学びたい人は、以下の『思考のすすめ』もオススメです。

また、AIが神様になってしまうことへの対策としては、AIとディベートすることがあります(私の仮説ですが)。言い換えると、「正しさを教えてくれる存在」ではなく、「正しさを議論する相手」としてAIを扱うわけですね。このやり方については別エントリーで詳しく解説します(後日投稿予定)。

AIと考えるうえで必要な4つの力④:メタ認知力

AIと考えるうえで必要な4つの力

AIと考えるために必要な力その④は、メタ認知力です。これは上のスライドにあるとおり、「AIとやりとりをする自分を眺める力」のことです。

以下のように、批判的思考力との違いで捉えるとわかりやすいでしょう。

批判的思考力メタ認知力
批判の対象AIの回答自分の認知
問うこと
  • AIの回答は正しいか?
  • AIは根拠を説明したか?
  • AIの根拠は妥当か?
  • 私はAIとのやりとりを通じて、何を達成したいのか?
  • 私はAIとのやりとりを通じてゴールの達成に向かっているか?

メタ認知力がないと起きる典型的な失敗は、「AIとやりとりばかりして、アウトプットが出ない」ことです。

批判的思考力までの3つの力があれば、あなたはAIとやりとりして、思考を発展させられるでしょう。それで、気がつくと数時間が経っています。これまでにはありえなかったスピードで思考が発展していきますからね。

これは誰もが一度は経験することではないかと思いますが、このような事態が継続することは望ましくありません。私たちのゴールは、AIとやりとりすることではないからです。

あくまでも、AIは目的を達成するためのツールです。メタ認知力とは、この大前提を維持する力のことだと考えてください。

メタ認知力を鍛えるには

では、メタ認知力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょう?

正直なところ、どうすればメタ認知力が鍛えられるのかはよくわかりません。ここはシンプルに、健全なAIの使い方になるようにルール・プロセスを設計するのがよいと思います。言い換えると、「メタ認知力がある人がしそうなAIの使い方」を想像し、そのようにAIを使うということです。

私が意識しているのは、以下のポイントになります。

  • AIからの提案(回答の最後につく「次はこれを考えませんか?」的なもの)は原則として無視
    • 次に何をするかを決めるのは自分でありたいから
    • これに付き合っているとAIに入り浸ることになる
  • 1日の最初にAIを触らない
    • 思考力が満タンの状態ですべきことは自分で考えることであって、AIに相談することではない
  • 用が済んだスレッドは削除する・スレッドを削除できているかを意識する
    • 「疑問が解決した」、「内容をアウトプットにした」などのタイミングで、スレッドを削除する
      • これを意識するだけで、「用を済ますためにAIを使っている」ことを忘れずに済む
      • もちろん、残したいものは残せばいい
    • スレッドがどんどん溜まっていくのはよくないサインだと考える

誤解しないでほしいのですが、ここでは「この使い方が正しい」と主張するつもりはありません。「自分にとっての健全なAIの使い方」を考えて、それを具体的なルール・プロセスに落とし込む例として紹介しているだけです。参考になれば嬉しいですが、あなたにとってのルール・プロセスは、あなた自身が考えるしかないでしょう。

以上、AIと考えるために必要な力を考えてみました。

なお、AI関連のエントリーは以下にまとめています。