
このエントリーでは、「考える」とはどういうことかを説明します。ここがロジカルシンキングの出発点なので、しっかり押さえてください。
では始めましょう。
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「考える」とは
早速ですが質問です。「考える」とは、何をすることでしょう?
「そりゃ、頭を使うことでしょ」と思ったかもしれません。一般的な意味では、それであっています。しかし、「考える = 頭を使う」では漠然としすぎていて、何を意味しているのか分かりませんよね。この定義だと、本当の意味で頭を使っていないのは死人くらいです。
ということで、「考える」という言葉をもっと狭く定義しましょう。少なくとも、生きている人を「考えている人」と「考えていない人」に分類できるくらいでないと、定義として実用性がありません。
結論に飛びます。「考える」とは、正解がない問いに対する答えを探すことです1。
たとえば、身近な例だと、以下のような問いの答えを探すことは「考えて」います。
- 進学するか、就職するか?
- どの会社に就職するか?
- 家を買うか、借りるか?
これらの問いに、唯一の正解はありませんよね。このように、正解がない問いの答えを探すことが「考える」ということです。
おそらく、この定義はあなたが普段使っている「考える」とは違うでしょう。しかし、ロジカルシンキングを学ぶ間は、この意味に切り替えてください。
考える:正解がない問いに対する答えを探すこと
私たちは「考えて」いるか
このように「考える」を定義すると、私たちは日常生活において、ほとんど考えていないということが分かるはずです。
たとえば、この1週間を振り返ってみてください。あなたには、正解のない問いを明確に意識して、答えを探した時間がどれだけあったでしょうか? 一部の例外的な人を除けば、そんな時間は多くないはずです。「考える」という行為は、そんなにありふれたものではありません。
この定義に従うと、テスト勉強も「考えている」とは呼べません。知ってのとおり、テストには正解があるからです。「考える」ためには、正解が分かっていない問いを対象としなければなりません。
誤解しないでほしいのですが、テスト勉強は「考える」練習にはなります。正解を見なければいいですからね。しかし、実社会では正解が存在している問いを考えたりはしません。検索するか、人に聞いて終わりです。
「考える」という行為のゴール
「考える」とは、正解がない問いに対する答えを探すことだと定義しました。では、考えた結果として、私たちは何を成し遂げたいのでしょう。言い換えると、「考える」という行為のゴールは何でしょうか?
答えはシンプルで、正しい答えを出すことです。
これは当たり前ですよね。問いに対する答えを探しているときに、間違った答えにたどり着きたい人はいません。また、いつまでも答えを探し続けたいという人もいないでしょう。答えを探し始めたら、どこかで正しい答えを見つけて終わりにしたいはずです。
「考える」という行為のゴール:問いに対して、正しい答えを出すこと
しかし、このゴールは簡単に達成できるものではありません。先述のとおり、私たちが考える問いには正解がないからです。学校で解く問題のように、解答例があったりはしません。何をもって「正しい」とするのかを自分で決めて、答えを選んでいくしかないのです。
では、どのように考えたら、正しい答えにたどり着けるのでしょう?
結局、この問いがすべてです。この問いに対する答えを、誰もが知りたいわけです。
どうすれば、正解がない問いに対して、正しい答えを見つけられるのか?
この問いに対する答えを学ぶのが、ロジカルシンキングというスキルです2。
ロジカルシンキングで学ぶこと:正解がない問いに対して、正しい答えを探す方法
ただし、ロジカルシンキングを学んだからといって、必ず正しい答えが見つけられるわけではありません。正解がない問いの答えを探すのは、そんなに甘い話ではないのです。
しかし、何も知らないよりは随分マシになることは確実です。スポーツを始めるときには、最初に基本的な型を習いますよね。同じように、考えるときに使える、基本的な型があるのです。これを覚えることで、ただ闇雲に考えるよりも、はるかに上手に考えられるようになります。
練習問題
では、ここまでの内容を確認しておきましょう。
「考える」という行為の定義を述べよ。また、その定義に従い、あなたがこの1週間に考えたことを述べなさい。
以下に解答欄があるので、答えを書いてみてください。
「考える」とは、正解がない問いに対する答えを探すことである。
※考えたことは何でも構いませんが、「宇宙はどのように始まったのか?」のように、考えたことを疑問文で書けるとグッドです。
考えるための4つの道具
次に、考えるための道具を用意しましょう。これは「考える」ことを学ぶための、最も基本的な道具です。以下のスライドを見てください。
この4つが、ロジカルシンキングを学ぶ上でのキーワードです。詳細は次回以降のエントリーで説明しますので、ここでは大きな構造・関係を掴むことを意識してください。
論点とロジック
まず、あなたが答えを出そうとする問いのことを論点と呼びます。
論点:答えを出そうとする問い
これは単に、「問い」を言い換えているだけです。「問い」だと、一般的な言葉すぎて分かりにくいですからね。以降は「論点」と表記します。
続いて、論点に対する答えの全体ことをロジックと呼びます。
ロジック:論点に対する答えの全体
これも誤解を避けるためです。「答え」だと抽象的すぎて、何のことを話しているのか分からなくなりますからね。これからは、ある論点に対して提示された答えの全体のことを「ロジック」と呼ぶことにします3。
ここまでの内容を確認しましょう。以下の会話を見てください。


この会話では、クマによって「どうしたら来月までに3kg痩せられるか?」という論点が提示されています。それに対して、パンダが答えを提示しています。つまり、パンダの発言のすべてが、「どうしたら来月までに3kg痩せられるか?」という論点に対するロジックになります。
この2つの言葉を使って、「考える」という行為を言い直してみましょう。「考える」とは、設定した論点に対してロジックを構築することです。
「考える」とは、設定した論点に対してロジックを構築することである
主張
ロジックの中には、明らかに特殊なものが1つあります。論点に対する直接的な答えとなる言説です。これを主張と呼びます。
主張:論点に対する直接的な答え
先ほどの例で見てみましょう。


太字にした部分が主張です。順に確認しましょう。
まず、論点は「どうしたら来月までに3kg痩せられるか?」です。つまり、痩せるために何をすればいいかが知りたいわけです。
ということは、論点に対する直接的な答えは、「XXをするべきだ」というニュアンスの、何らかの行動を提案する言説であるはずです。上のロジックでそれに該当するのは「バナナダイエットをするべきだよ」ですよね。よって、これがパンダのロジックにおける主張になります。
なお、「主張」の代わりに「結論」という言葉を使っても構いません。一人で考える場合には「結論」のほうがピッタリくるでしょう。しかし、多くの場合、考える過程で人と議論したり、考えた結果を誰かに共有したりします。その場合は「主張」のほうが適切なことが多いので、当サイトでは「主張」で統一表記します。
ロジックには、必ず主張が含まれていなければなりません。主張が見当たらないロジックは、もはやロジック(論点に対する答え)とは呼べないからです。
例として、先ほどの会話から主張を取り除いてみましょう。


これでは、2人の会話は成立していませんよね。ロジックが論点に答えていないからです。言い換えると、パンダの話した内容がロジック(論点に対する答え)であるためには、「XXをするべきだ」という主張がどうしても必要なのです。
根拠
最後に、根拠とは、主張が正しい理由です。これは一般的に使う言葉なので問題ないでしょう。
根拠:主張が正しい理由
先ほどのパンダの会話の問題点は、根拠が分かりにくいことです。丁寧に解釈すると「自分が見ている(=信用できる)テレビ番組で、そう言っていた」が根拠だと分かりますが、それを会話から掴むのは難しいですよね。このあたりの改善方法も、これから学んでいきましょう。
まとめ
では、最後にもう一度スライドを確認してください。
何かを考えるときには、常にこの4つ(ロジックは主張と根拠なので、事実上は「論点・主張・根拠」の3つ)を意識してみてください。これまでより、上手に考えられるようになるはずです。
以上、「考える」とはどういうことかを説明しました。次回は「答えを出すこと」の先にあるゴールを考えてみましょう。以下のエントリーに進んでください。
また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。