このエントリーでは、意思決定とは何をすることかを説明し、意思決定を分析するための道具を用意します。
では始めましょう。
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意思決定とは
当サイトでは「意思決定」を、何をするか・何を「正しい」とするかを決めることだと定義します。ざっくり言うと、正解がない問いに答えることですね。好きなほうで覚えてください。
意思決定:何をするか・何を「正しい」とするかを決めること(正解がない問いに答えること)
例を見ておきましょう。
意思決定すること | 意思決定の結果(例) |
---|---|
今日はどんな服を着るか? | ジャージを着る。 |
どんな服だと仕事に集中しやすいか? | 素材の柔らかい服。 |
前者は「何をするか」、後者は「何を『正しい』とするか」を決めています。そして、どちらの問いにも正解はありませんよね。このような行為が意思決定です。
意思決定の3要素
次に、意思決定を分析するための道具を用意しましょう。以下のスライドを見てください。
このように、あらゆる意思決定は以下の3要素で説明できます。
- 論点
- 結論
- 理由
順に説明します。
意思決定の要素①:論点
まず、「論点」とは、意思決定すること(内容)です。これが意思決定の起点ですね。
論点:意思決定すること(いま、何を意思決定したいのか)
先ほどの表に、この言葉を当てはめましょう。見出し部分を見てください。
論点 | 意思決定の結果(例) |
---|---|
今日はどんな服を着るか? | ジャージを着る。 |
どんな服だと仕事に集中しやすいか? | 素材の柔らかい服。 |
スッキリしましたね。
意思決定の要素②:結論
次に、「結論」とは意思決定の結果です。
結論:意思決定の結果
これも先ほどの表に当てはめましょう。
論点 | 結論(例) |
---|---|
今日はどんな服を着るか? | ジャージを着る。 |
どんな服だと仕事に集中しやすいか? | 素材の柔らかい服。 |
さらにスッキリしました。
意思決定の要素③:理由
最後に、「理由」とはその結論になった経緯や根拠です。分かりやすく言うと、「なぜその結論になったのか」を説明するものですね。
理由:その結論になった経緯や根拠(なぜその結論になったのか)
先ほどの表に、理由を加えました。
論点 | 結論(例) | 理由(例) |
---|---|---|
今日はどんな服を着るか? | ジャージを着る。 | ジャージが近くにあったから。 |
どんな服だと仕事に集中しやすいか? | 素材の柔らかい服。 | 経験上、そう感じるから。 |
どちらも、結論が導かれた経緯や根拠になっていることを確認してください。
なお、まだ理由の質は問題にしていないし、すべての意思決定に理由が必要なわけでもありません。そこは誤解しないでください。
「合理的な」意思決定の3要素
スキルとして意思決定を学ぶときには、合理的な意思決定を目指すことが普通です。ここでの「合理的」とは「誰にとっても正しい」という意味だと考えてください。
合理的:誰にとっても正しいさま
先ほどの3要素(論点・結論・理由)は、あらゆる意思決定を説明できるという点では便利なのですが、合理的な意思決定に限定すると使い勝手が悪いところがあります。ということで、以下のように更新しましょう。
先ほどと似たスライドですが、こちらを覚えてください。ポイントは以下のとおりです。
- 「論点」はそのまま
- 「結論」を「主張」にする
- 「理由」を「根拠」にする
ここで太字にした3つが、ロジカルシンキング(当サイトでは「合理的な意思決定の仕方」という意味)を学ぶうえでのキーワードです。詳細は次エントリーから説明するので、ここでは大きな構造・関係を掴むことを意識してください。
順に説明します。
「論点」はそのまま
まず、「論点」はそのまま「意思決定すること(内容)」という意味です。変更はありません。
「結論」を「主張」にする
変わるのはここからです。まず、「結論」を「主張」と呼ぶことにします。
両者のニュアンスの違いを確認してください。以下は私の解釈ですが、おおむね同意してもらえると思います。
結論 | 主張 | |
---|---|---|
変わる余地 | なさそう(「もう決まったこと」というニュアンス) | ある(「正しいと認めてほしいこと」というニュアンス) |
他者の存在 | 感じられない | 明確にある(普通、主張は他者に向けて発するもの) |
意思決定が合理的か(誰にとっても正しいか)を考えるうえでは、意思決定の結果を「主張」と呼ぶほうが好ましいです。
合理的な意思決定では、「誰もが正しいと認めてくれる結論」を目指します。つまり、意思決定は自己完結せずに、他者の視線に晒されると考えてください。本当に晒されるかはともかく、そういう意識で意思決定します。
言い換えると、合理的な意思決定では、ひとりよがりな「結論」ではなく、誰からも正しいと認めてもらえる「主張」を探すということです。
主張:意思決定の結果
「理由」を「根拠」にする
次に、「理由(なぜその結論になったのか)」を「根拠」に置き換えます。
これも両者の比較から始めましょう。以下を見てください。
理由 | 根拠 | |
---|---|---|
意味 | 結論に至った要因であるなら、あらゆる意味で使える(経緯・原因・根拠など) | 結論が「なぜ正しいのか」という意味に限定される |
その他 | あらゆるシーンで使われる | 「主張」とセットで使われることが多く、フォーマルな印象がある |
このように、「根拠」は「理由」の一種であり、「なぜ正しいのか」という意味に限定されます。
この説明だけでピンとこない方は、以下のリンクを読んでください(学習の順序としてはジャンプします)。
合理的な意思決定を目指すうえでは、「根拠」が好ましいのは明らかでしょう。主張が正しいかを考えたいわけですからね。
根拠:主張が正しい理由
主張と根拠で「ロジック」
最後に、主張と根拠のセット、つまり、論点に対する答えの全体を「ロジック」と呼ぶことにします。スライドを再掲するので確認してください。
これは単に、答えの全体を意味する言葉があったほうが便利だからです。実際に意思決定を分析する際には「ロジック」とひとまとめにせず、必ず主張と根拠を区別してください。
ロジック:主張と根拠(論点に対する答えの全体)
この言葉を使って、「考える」という行為を言い直してみましょう。「考える」とは、設定した論点に対してロジックを構築することです。
「考える」とは、設定した論点に対してロジックを構築することである
練習問題
ここまでの内容を練習問題で確認しましょう。少し難しめにしてあります。
以下の会話における、論点・主張・根拠を答えよ。また、パンダの話を分かりやすくするにはどうすればよいか。
- 論点:どうしたら、来月までに3kg痩せられるか?
- 主張:バナナダイエットをするべきだ
- 根拠:面白くて毎週見ているテレビ番組でそう言っていた
パンダの発言の問題点は、根拠が分かりにくいことと、主張が最後に来ていることです。
改善案としては、主張を頭に持ってきて「バナナダイエットをするべきだよ。面白くて毎週見ているテレビ番組でそう言っていたよ」とすれば分かりやすくなります。
ただし、この根拠が妥当であるかは怪しいですね。そのあたりはこれから勉強しましょう。
まとめ
最後に、もう一度スライドを確認してください。
正解がない問いを考えるときには、常にこの3つ(論点・主張・根拠)を意識してください。それだけでも、これまでよりずっと上手に考えられるはずです。
以上、意思決定の3要素を説明しました。ここからは、それぞれの要素をさらに掘り下げましょう。以下のエントリーに進んでください。
また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。