このエントリーでは、主張と根拠の関係(ロジックの構成)を学びましょう。ロジックとは何か、その構成要素である主張と根拠はどのような関係にあるのかを押さえてください。
では始めましょう。
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ロジックとは
まずは「ロジック」という言葉の意味を確認しましょう。上のスライドにあるように、ロジックとは論点に対する答えの全体です。
ロジック:論点に対する答えの全体
ロジックは主張と根拠で構成されます。主張とは「論点に対する直接的な答え」、根拠とは「主張が正しい理由」です。ここがキーポイントなので、しっかり押さえてください。
ロジックは主張と根拠から構成される
なお、上のスライドに関しては以下のリンクで詳しく解説しています。もしここまでの説明でピンとこなかったり、次の練習問題がうまく解けなかった場合は、以下のリンクを読んでから先に進んでください。
練習問題
ここまでの内容を、練習問題で確認しましょう。
以下の会話における、論点、ロジック、主張、根拠に該当する部分を答えよ。
家を買うべきだろうか、借りるべきだろうか?
借りるべきだと私は思うよ。
理由は3つある。
まず、今の日本で不動産を買うのは高値づかみになる可能性が高い。日本の人口はこれから減り続けるわけで、家はこれから余る一方だからね。これは借りる視点に立つと、家賃は下がっていく可能性が高いということだ。家賃相場に合わせて家を借り替えるほうが得なんじゃないかな。
2つめに、引っ越しに対する柔軟性だ。君はまだ若いし、この町にずっと住むって決めたわけじゃないだろ? だったら、賃貸のほうが何かあったときに動きやすい。
3つめに……(以下略)
以下に解答欄があるので、答えを書いてみてください。
- 論点:クマが話していること(=家を買うべきだろうか、借りるべきだろうか?)
- ロジック:パンダが話していることすべて
- 主張:「借りるべきだと私は思うよ」
- 根拠:「理由は3つある」以下すべて
ロジックの構成
準備ができたので、ロジックの構成(=主張と根拠の関係)を掘り下げていきましょう。以下のスライドにまとめました。
ポイントは以下のとおりです。
- 通常、主張は1つの言説である
- これに対し、根拠は複数の言説で構成される
- 根拠を構成する個々の言説のことを、「根拠ブロック」と呼ぶことにする
- 根拠ブロックは論理関係でつながっており、全体としての根拠を構成している
- 全体としての根拠が主張の重さを支えられたら、主張は正しい(=根拠は妥当である)
順に説明します。
主張と根拠の分量
まず押さえるべきポイントは、根拠は主張よりも多くの文で構成されるということです。分かりやすく言うと、根拠は主張より長くなります。
このことを、先ほどの練習問題で確認しましょう。
借りるべきだと私は思うよ。
理由は3つある。
まず、今の日本で不動産を買うのは高値づかみになる可能性が高い。日本の人口はこれから減り続けるわけで、家はこれから余る一方だからね。これは借りる視点に立つと、家賃は下がっていく可能性が高いということだ。家賃相場に合わせて家を借り替えるほうが得なんじゃないかな。
2つめに、引っ越しに対する柔軟性だ。君はまだ若いし、この町にずっと住むって決めたわけじゃないだろ? だったら、賃貸のほうが何かあったときに動きやすい。
3つめに……(以下略)
この例では、主張は「借りるべきだと私は思うよ」の一文しかありません。そして、これが普通です。
一般に、ロジックを構成する多数の文の中に、主張は一文しかありません。場合分けをするケースもあるので、すべてがそうだとは言い切れませんが、主張が多数の文で述べられることは基本的にありません。
通常、ロジックの中に主張は一文しか存在しない。
そうなる理由はシンプルで、そういうものを「主張」と定義しているからです。以下のスライドにあるとおり、主張とは「論点に対する直接的な答え」です。直接的な答えがいくつも述べられるわけがありませんよね。
実際、論点のタイプによって、主張になりうる言説の型は決まっています。以下の表で確認してください。
なお、この表に関する詳細な解説は以下のリンクで行っています。
先に進みましょう。主張が一文であるのに対して、根拠は複数の文から構成されます。難しい論点に対するロジックであれば、数百を超えることも普通です。難しい論点に対する主張を支えるためには、それだけ多くのことを根拠として述べる必要があるからです。
つまり、ロジックの大半は根拠です。主張としての1つの文に対して、根拠としての大量の文がくっついている。これが典型的なロジックの構成です。
ロジックの大半は根拠である
根拠ブロック
ここで、「根拠ブロック」という言葉を用意しましょう。根拠ブロックとは、根拠を構成する個々の文のことです。なお、この言葉はロジックの構造を理解しやすくするための造語なので、他で使わないように注意してください。
根拠ブロック:根拠を構成する個々の文
先ほどのロジックで、具体的に確認しましょう。
借りるべきだと私は思うよ。
理由は3つある。
まず、今の日本で不動産を買うのは高値づかみになる可能性が高い。日本の人口はこれから減り続けるわけで、家はこれから余る一方だからね。これは借りる視点に立つと、家賃は下がっていく可能性が高いということだ。家賃相場に合わせて家を借り替えるほうが得なんじゃないかな。
2つめに、引っ越しに対する柔軟性だ。君はまだ若いし、この町にずっと住むって決めたわけじゃないだろ? だったら、賃貸のほうが何かあったときに動きやすい。
3つめに……(以下略)
「理由は3つある」以下が根拠であることは先述のとおりです。根拠ブロックは「根拠を構成する個々の文」なので、以下の文がそれぞれ根拠ブロックになります。
- 理由は3つある。
- まず、今の日本で不動産を買うのは高値づかみになる可能性が高い。
- 日本の人口はこれから減り続けるわけで、家はこれから余る一方だからね。
- (以下略)
根拠ブロックという言葉を用意することで、根拠のイメージがハッキリします。
先述のとおり、根拠は多数の文から構成されます。つまり、複数の根拠ブロックを組み上げたものが全体としての根拠を構成し、それが主張を支えているのです。先ほどのスライドでイメージを掴んでください。
このように、ロジックとは文の建築です。一番上にある「主張」という屋根を、根拠ブロックを組み合わせた土台(根拠)が支えているのです。
論理関係
先に進みましょう。建築の場合、それぞれの建材をつなぎ合わせるものが必要です。たとえば、木材をつなぎ合わせるためには釘や接着剤を使いますよね。
同じように、文と文も、何かでつなぎ合わせる必要があります。では、文と文をつなぎ合わせる接着剤は何でしょう?
答えは、論理関係です。ざっくりしたイメージとしては、接続詞のことだと考えて問題ありません。論理関係(接続詞)が、文と文との接着剤として機能します。
論理関係:文と文とのつながり(接続詞)
論理関係としてもっとも分かりやすいのは、主張と根拠の関係です。主張から見ると根拠は「なぜなら」という論理関係でつながっており、根拠から見ると主張は「だから」という論理関係でつながっています。これは「根拠」という言葉の定義そのものから生じる論理関係なので、変わることはありません。
根拠の中には、もっと多様な論理関係が出てきます。代表的なものは以下のとおりです。
- 前提として
- 第1に、第2に、第3に……
- さらに/加えて
- なお/ちなみに
これらの接着剤を使うことで、バラバラな根拠ブロックをつなぎ合わせ、一つの根拠として組み上げることができます。
実際に、先ほどの例でも確認しておきましょう。
借りるべきだと私は思うよ。
理由は3つある。
まず、今の日本で不動産を買うのは高値づかみになる可能性が高い。日本の人口はこれから減り続けるわけで、家はこれから余る一方だからね。これは借りる視点に立つと、家賃は下がっていく可能性が高いということだ。家賃相場に合わせて家を借り替えるほうが得なんじゃないかな。
2つめに、引っ越しに対する柔軟性だ。君はまだ若いし、この町にずっと住むって決めたわけじゃないだろ? だったら、賃貸のほうが何かあったときに動きやすい。
3つめに……(以下略)
このケースでは、3本の柱で「家は借りるべきだ」という主張を支えようとしています。根拠の冒頭の「理由は3つある」という宣言からそれは明らかですね。さらに、その後も「まず」、「2つめに」、「3つめに」という言葉を使って、根拠を3つの塊に仕分けています。先ほどのスライドを再掲するので、イメージをすり合わせてください(スライドは柱が一本多い)。
このように、ロジックを文の建築として捉えると、主張と根拠の関係が理解しやすくなります。
「妥当な」根拠とは
ロジックのイメージが立体的になったところで、最後に「根拠が妥当である(=根拠は主張の正しさを支えられる)」とはどういうことなのかを考えましょう。
主張と根拠のうち、ロジカルシンキングで考察の対象にするのは根拠です。もちろん、最終的な関心は主張の是非にありますが、根拠を評価することでそれを決めようというのがロジカルシンキングだからです。このあたりの話は、以下のリンクを参考にしてください。
以降、主張を「正しい」と認めてもらえる根拠のことを「妥当な根拠」と表記します。
妥当な根拠:主張を「正しい」と認めてもらえる根拠
では、どのような根拠が妥当なのでしょう? これを理解するのに、先ほどのイメージが役に立ちます。
結論を述べると、「根拠が妥当である」とは、組み上げた根拠(土台)が主張(屋根)を支えられるということです。屋根が安定していれば「主張は正しい」、土台が崩れて屋根が落ちれば「主張は間違っている」となります。
こう捉えると、どういうときに根拠の妥当性が崩れるのかもイメージしやすくなります。
まず、個々の根拠ブロックに十分な強度がなければ、そこから根拠は崩れます。たとえば、柱が腐っていたら、屋根は支えられませんよね。
この「根拠ブロックの強度」に該当するのが、根拠の客観性であり、普遍性です。詳しくは今後のエントリーで説明しますが、簡単に言うと、自分の思い込みでしかないことや、偶然に起こっただけのことを根拠としても、妥当な根拠にはなりません。そのような根拠は「それはあなたの思い込みでしょ?」、「たまたまそうなっただけでしょ?」という批判に耐えられないからです。
また、たとえ個々の根拠ブロックが十分な強度を持っていたとしても、ブロックの組み方が間違っていれば、主張は支えられません。たとえば、上のスライドで柱の一本がなければ、バランスが悪くて主張を支えられませんよね。3本の柱で屋根を支えたいなら、柱の位置を変える必要があります。
この「ブロックの組み方」に該当するのが、根拠の網羅性です。これも今後のエントリーで説明しますが、議論に抜け漏れがあると、そこから根拠が崩れてしまうということです。どこに柱を置いて、それらをどのような接着剤(論理関係)で組み上げるかを考える必要があります。
まとめると、妥当な根拠を構築するには以下の2つを理解できればよいのです。
- どのような根拠ブロックを用意するか
- それをどのように組み上げるべきか
あとは、いまイメージで述べたことを具体的に理解・実践できれば、あなたも強固なロジックを作れるようになります。そのあたりはこれから勉強しましょう。
以上、ロジックの構成を説明しました。次回は、ここまでのまとめをしましょう。
また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。