解決可能性

問題のインパクトが終わったので、次は問題の解決可能性を考えます。

なお、このエントリーは一連の「問題を評価する」シリーズの一部です。以下のエントリーから順に読み進めてください。

では始めましょう。

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解決可能性とは

問題の解決可能性とは、その名のとおり問題を解決できる可能性のことです。これは以下の2つに分けて考えるのがオススメです。

  1. 答えを出せるか
  2. 答えを実行できそうか

順に説明します。

解決可能性①:答えを出せるか

まずはシンプルに、答えを出せるかを考えましょう。評価している問題(問い)に対して、最後に「XXです」と言い切れそうかを検討します。

逆から言ったほうが分かりやすいかもしれません。答えを出せるかを評価するとは、その問いに対して「分かりません」と言わずに済むかを考えることです。「分かりません」以外のことを言えそうなら、論点にしてもよさそうですよね。

答えを出せるかを、考える前に評価する

難しいのは、答えが出せるかの評価を、実際に考える前に行う必要があることです。考え始めてしまったら、それはもう論点にしているのと同じですからね。問題の評価は、論点として設定する前に行うことです。論点設定のプロセスを確認してください。

論点設定のプロセス

もちろん、杓子定規に「評価の段階では、少しもリソースを使わない」と決意する意味はないので、少しくらいは考えてもいいでしょう。ただ、それなりにリソースを突っ込んでしまうと、それはもう「論点にするかを検討するための評価」とは呼べないし、「答えを出せそうにないので論点にはしない」という決断もしにくくなります(サンクコストの呪い)。

問いに対する専門性|仮説が立つか

どうすれば、リソースを使わずに「答えが出せるか」を評価できるのでしょう?

ざっくりした答えとしては、自分がその問いに対する専門性を有しているかを考えるだけです。

具体的には、以下の条件を満たせるほど、答えを出せる可能性は高くなります。

  • 似たような論点に答えたことがある
    • ピンポイントの答えは分からなくても、答えのパターン(A、B、Cのどれか、など)を知っている
    • 答えを出すための抽象的な枠組みは分かっており、個別具体的な情報が分かれば答えを出せる
  • 仮説(根拠のない、仮の主張)が頭の中に浮かぶ
    • かつ、その仮説に自信が持てる
  • 主張するために必要な根拠と、その根拠を作るためのリサーチが具体的に描ける
  • その領域の個別具体的な情報を持っている/入手できる
    • 現場の状況、実務経験、情報提供者へのコネなど

この中でもっとも分かりやすい目安は仮説が立つかです。言い換えると、最終的な結論の具体的な内容ですね。仮説に関する詳細な説明は次エントリーで行います。

完全な当てずっぽうではない、それなりに自信のある仮説が立つなら、それは評価している問いに対してあなたが専門性(知見・経験)を有していることの証左です。仮説が本当に正しいかは検証してみないと分かりませんが、それでもなんらかの結論は出せそうですよね。この場合、論点にする方向で進めて問題ないでしょう。

一方、仮説がまったく立たない、つまり、どんなことが答えになるのか検討もつかない問いは、論点にしないのが無難です。おそらく、あなたはその問いを考えるのに必要な知識や経験を有していません。いますぐ論点にしてリソースを投入するよりは、機が熟すのを待ったほうがよいでしょう。

解決可能性②:答えを実行できそうか

次に、答えを実行できそうかという視点で評価することも忘れないようにしましょう。

こちらは「どうすればXXできるか?」というタイプの問い限定の評価視点ですが、ビジネスで扱う問いはほぼこのタイプです。あなたが研究者でないなら、基本的にこの視点での評価も行ってください。

世の中には、「正しい答えはおおむね分かっているし、答えを実行したほうがいいことも明らかだが、実行できそうもない」というタイプの問いが存在します。そういう問いは、答えを出したところで何も変わらないので、論点にすべきではありません。

事例①:痩せたいのか、痩せることに本気なのか

とりあえず、身近な例を見てみましょう。

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来月までに3kg痩せるために、何をすればいいか?

この問いに対する答えがまったく思い浮かばないという人はいないでしょう。どうしても痩せたいなら、絶食するだけです。

もちろん、健康的・効率的に痩せたいなら、いきなり絶食する以外の方法を考えたほうがいいのは間違いありません。しかし、来月までに3kg痩せなければすべてを失うような状況なら、考えるより先にとりあえず絶食しますよね。食事を我慢することが正しい方向性であることは明らかです。

つまり、この問いを論点にするか迷う時点で、痩せるためにそこまで本気ではないことが想像できます。本気なら、いきなり行動に移るでしょう。

事例②:なぜ全社で統一できないのか

ビジネス寄りの例も見ておきましょう。

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グループ全社のXXXを統一するにはどうすればいいか?

ここで「XXX」には「人事評価制度」や「システム」が入ります。そういうものは、その気になれば統一できることは明らかです。トップが「やれ」と言って、予算をつけるだけですからね(統一すべきかはケースバイケース)。

それでも統一されていないということは、なんらかの理由があって統一していない・できないと考えるべきでしょう。その理由が克服できないなら、上記の問いを論点にしても最終的には「統一できない」という結論になって、何も変わらない可能性があります。

答えが明らかな問いは危ない

2つの事例に共通するのは、すべきことは自明に見えるのに、それがされていないということです。

このタイプの問いを論点にするかは、慎重に考えるべきです。繰り返しになりますが、自明であるはずの「すべきこと」がされていないなら、それ相応の理由があるはずです。私の経験上、それは以下のどれかであることがほとんどです。

  • 本当はそこまでたいした問題ではない
  • 解決策を実行する費用が用意できない
  • 関係者の同意をとることが不可能

これらの要因は、短期間ではどうにもならないことが多いです。つまり、論点にしたところで最終的には「現状維持」という結論が出るので、そうなるくらいなら最初から論点にすべきではありません。

もちろん、どう考えても重大な問題で、お金や合意形成の問題までクリアーする覚悟があるならそのかぎりではありません。とにかく、答え(解決策)をやり切れるのかを、最初に考えるようにしましょう。

以上、問題の解決可能性について説明しました。次は仮説について説明します。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。