このエントリーでは、ロジカルシンキングのデメリット(というより、落とし穴)を説明します。
なお、ロジカルシンキングそのものについては説明しないので、ロジカルシンキング初心者の方は、以下のリンクを参考にしてください。
では始めましょう。
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告白をしたら、OKがもらえるか?
まずは例から始めましょう。
ここで質問です。
そもそも、「告白したら、OKをもらえるだろうか?」という論点を考えることには、意味があるのでしょうか?
この論点には、考えるより明快な解決方法があります。実際に告白することです。そうすれば、即座に、100パーセント確実な形で、告白がうまくいくかが分かりますよね。
「いやいや、そこでフラれることが怖いから、この論点を考えてしまうわけでしょ」と思ったかもしれません。
そうですよね。多くの人が中高生のころにこの論点に頭を悩ますのは、失敗する見込みが高いなら、実行したくないからです。フラれるくらいなら、告白したくない。当然ですよね。
また、実行するのは考えるより大変です。経験者は分かると思いますが、実際に告白するのは「告白がうまくいくか」を考えるより1万倍くらい大変です(当社比)。勇気が出せなくて告白できないこともあったりしますよね。
しかし、結局のところ、実際に告白するまでは、告白がうまくいくかは決して分かりません。どこまで考えても、「うまくいく/いかないだろう」止まりです。「だろう」を取り除きたいなら、やるしかありません。
考えるか、実行するか
さて、分かりやすさのために告白の例を使いましたが、このエントリーは恋愛コラムではないので、そろそろ一般化しましょう。
行動論点
要するに、「Xを実行したら、うまくいくだろうか?」という類の論点は、考えるよりもXを実際に実行するほうが、早く、確実な答えが出せます。これ以降、「Xを実行したら、うまくいくだろうか?」という類の論点を、行動論点と呼ぶことにしましょう。
行動論点:「Xを実行したら、うまくいくだろうか?」という類の論点
行動論点とは、以下のようなものです。
- 値下げをしたら、売上は狙い通り伸びるだろうか?
- このスペックの新商品で、本当にヒットするだろうか?
- A社を買収したら、当社とシナジーを発揮して企業価値を伸ばすことができるだろうか?
気づいたかもしれませんが、ビジネスで考える論点のうち、重要なものはほぼすべて行動論点です。そして、先述のとおり、行動論点には「考えるより、実行したほうが答えが早く出せる」という特性があります。
行動論点は、考えるよりも実行したほうが、早く確実な答えが出せる
行動論点に対し、ロジカルシンキングを使って考えることに意味があるのかは、議論の余地が大いにあります。「考えてもハッキリしたことは分からないんだから、さっさと実行すればいいのに」という批判が可能だからです。
では、行動論点を考えることは時間の無駄で、何でもさっさと実行すればいいのかというと、そういう話にはなりません。実行するのは考えるよりもコストがかかるからです。
たとえば、「A社を買収したら、うまくいくか?」という論点の場合、これを実行するのに動く金額は場合によっては数千億円単位です。さっさと実行するよりは、事前によく考えたほうがよさそうですよね。
ということで、行動論点に遭遇したときに、考えるべきなのか実行するべきなのかは答えが出せません。ケースバイケースです。
行動論点の答え方のガイドライン
ただし、考えるか、実行するかの判断基準は分かっています。以下の2つです。
- 行動の実行コスト
- 元に戻せるか/簡単にやめられるか
順に考えてみましょう。
判断基準①:行動の実行コスト
まず、行動の実行コストを考えましょう。
原則として、実行コストが低い場合は、「実行したらうまく行くか」を延々と考える理由はありません。さっさと実行するべきです。そのほうが早く、確実な答えが出せます。たとえ失敗したとしても、大したコストはかかっていないのだから問題ありません。
行動の実行コストが低いなら、さっさと実行したほうがいい
判断基準②:元に戻せるか/簡単にやめられるか
ただし、元に戻せるか/簡単にやめられるかは事前に考えておきましょう。
実行コストが低く、かつ失敗しても簡単に実行前の状態に戻せるなら、その行動を実行しない理由はまったくありませんよね。しかし、たとえ実行コストが低くても、失敗したときに元に戻せない/戻せても大きなコストがかかるなら話は変わってきます。
告白が簡単に実行できないのは、主にこらちの理由かもしれませんね。実行コストは勇気だけなので、これは絞れば出てくるでしょう(議論の余地はありますが笑)。一方、フラれた場合に以前と同じ関係性を維持できるとは考えにくいので、躊躇してしまうわけです。
ビジネスの例だと、正社員の採用などもこれに該当します。現行の日本の法律では、採用した正社員を解雇するのは容易ではありません。そのため、企業は正社員の採用に慎重になる傾向があると言われています。
まとめ
ここまでの話を逆から言うと、実行コストが高まるほど、実行した後に元に戻すのが難しくなるほど、実行する前に考えることが正当化されるということです。
どのレベルから考えることを正当化するかは、さすがにケースバイケースです。ここは個人の性格や組織の文化が強く反映される部分ですね。
ただし、たとえ考えるとしても、期限を区切って考えたほうがいいでしょう。行動論点に対して、考えて(つまり、実行せずに)確実な答えを出す方法は存在しないからです。
行動論点、つまり、「Xを実行したら、うまくいくだろうか?」という論点は、未来予測です。残念ながら、未来を確実に予測する方法はありません。最善を尽くして考えたら、「やる/やらない」のどちらかを決断するべきです。
もしくは、「一旦考えるのを止めて、Xヵ月後にまた考える」というのもいいかもしれません。時間が経てば、状況が変わって決断しやすくなる可能性があります。とにかく、行動論点に絶対確実な答えを出すことは不可能なのですから、「考え続ける」という状態になるのは避けたほうがよいでしょう。
まとめると、行動論点に関するガイドラインは以下のようになります。
- 実行コストの低く、かつ失敗しても簡単に元に戻せるなら、考えずに実行する
- 実行コストと元に戻すコストがあるレベルを超えた段階で、実行する前に考える
- ただし、考える期限を区切ったほうがよい
なお、そもそもあなたに実行の権限がある場合しか、このガイドラインは意味がありません。「決めるのはこっちでやるから、お前は考えろ」と言われることは、企業ではよくあることです。この場合は諦めて考えましょう。
まとめ:ロジカルシンキングのデメリット
ここまでの話を、ロジカルシンキングという視点からまとめ直しておきます。ロジカルシンキングのデメリットですね。
ロジカルシンキングを重視しすぎると、行動できなくなります。考えても行動論点に確実な答えは出せないにも関わらず、延々と「本当にそれでうまくいくの? 根拠は?」と、出口のない理詰めを繰り返すようになってしまうのです。
これはダメですよね。「考えることより実行することのほうが大事だ」と言い切ることはできませんが、考えてばかりで行動しなければ、何も変わらないのは間違いありません。あなたの目的は問題を解決することであって、考えることではないはずです。行動をせずに、問題が解決することはありません。このあたりの話は、以下のリンクも参考にしてください。
つまり、行動するために考えている(=問題を解決するためにロジカルシンキングを使っている)のです。この大前提を、いつも忘れないようにしてください。何もしなかったり、これまでと同じ行動を繰り返すだけなら、考える必要はないのです。
以上、ロジカルシンキングのデメリットについて説明しました。何でもかんでもロジカルシンキングをすればいいわけではないので、頭でっかちにならないよう、気をつけてくださいね。
さらに学習を進めたい人は
ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。では、準備運動はここまでにして、次回からいよいよロジカルシンキングの内容を学んでいきましょう。以下のエントリーに進んでください。
また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。