ロジカルシンキングの3つのポイント

このエントリーでは、ロジカルシンキングのもっとも基礎的なトレーニングを紹介します。

なお、ロジカルシンキングの内容については説明しないので、途中で分からなくなったら以下のリンクを参考にしてください。

では始めましょう。

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トレーニングの内容

このトレーニングは、ディベートや小論文の問題文(お題)を見て、「論点」と「主張の型」を書き出すというものです。

例題を見てみましょう。

例題

スマホが人々の思考・健康に及ぼす悪影響を論じた『スマホジャンキー』を読み、実際にスマホが人々の生活に与える悪影響の具体例を挙げたうえで、著者の見解を参考にしつつ、私たちが悪影響を受けずにスマホの利便性を享受するにはどのようにすればよいか、あなたの考えを述べよ。

この問題に答える、つまり、あなたの考えを述べる必要はありません。この論述問題における論点(問われている疑問文)と、主張の型(論点の答えになりうる言説の型)を書き出してください。以下の表を埋めるということです。

論点主張の型
XXXXXX

これはお題さえあればできることなので、これ以上の情報は不要です。上の例でも、実際に『スマホジャンキー』を読む必要はないし、そもそも架空の本です。

ヒントとして、論点と主張の型の対応関係をまとめた表を、以下に掲載しておきます。

疑問文の分類|オープン/クローズド・クエスチョンとは

以下に解答欄があるので、答えを書いてみてください。

論点主張の型
どうすれば、私たちは悪影響を受けずにスマホの利便性を享受できるか?Xのようにすればよい。

論点は「どうすればいいか?」を聞いているので、主張になりうるのは「こうすればいい」を意味する言説だけです。

言い換えると、この論述問題では「かくかくしかじか、このようにすれば、私たちは悪影響を受けずにスマホの利便性を享受できる(と、私は考える)」という言説が含まれていなければ、その時点で0点が確定します。論点に対する適切な主張がない文章は、もはや論文と呼べないからです。あなたが受験生なら、これを覚えておいてくださいね。

このトレーニングで培われる力

このトレーニングによって、以下の2つの力が養われます。

  1. 論点をシンプルに、分かりやすく表現する力
  2. 主張を即座に明確にする力

結局のところ、ロジカルシンキングとは「問いに答える」ことです。よって、問いと答えの関係を明確にするこのトレーニングが、ロジカルシンキングの中核となる力を鍛えます。

トレーニングのポイント

次に、トレーニングのポイントを解説していきます。

このトレーニングで注意するのは、「どのように論点を書くか」という一点のみです。論点さえうまく書ければ主張の型は自動的に決まるので、特に何かをする必要はありません。

論点の書き方に関するポイントは、以下の3つです。

  1. 一文の疑問文で書く
  2. 文末に疑問符(?)をつける
  3. 可能であれば、疑問詞(なに・だれ・いつ、など)を前に出す

順に説明します。

論点の書き方①:一文の疑問文で書く

まず、論点は一文の疑問文で書きます。こうすることで、「結局、何に答えればいいのか」が明確になります。

ディベートや小論文のお題が、疑問文でストレートに書かれていることはまずありません。先ほどの例のように、少し分かりにくい形になっていることがほとんどです。

実際にロジカルシンキングを使う状況も、これにそっくりです。さまざまな背景や前提条件が説明される中で、論点が埋もれるのです。これこそが、論点が曖昧になったり、ズレたりする原因です。

ということで、論点を掘り起こしましょう。余計な前提条件などを削ぎ落とし、一文でピシッと論点を書いてください。

この際、できるだけ短くしてください。それが論点をシンプルに表現する能力を育てます。

目安としては、書いた論点が40文字を超えている場合、論点にノイズが含まれていないか疑ってください。複雑な論点であっても、40文字を超えることは滅多にありません。

なお、言葉の意味を厳格にしようとすると論点が長くなりがちですが、その場合は「※」マークなどで後から補足するのもひとつの手です。長い文というのはそれだけで分かりにくいので、論点は短いに越したことはありません。

論点の書き方②:疑問符(?)を使う

次に、疑問文の文末には疑問符(?)をつけてください。これによって論点であることが明確になります。

ちなみに、疑問符は元来の日本語には含まれていなかったため、日本語の正式な文書では疑問符を使うべきではないという考え方が存在します。実際、文章術の本を読むと、疑問符や感嘆符(!)は下品なので使うなといった指導が出てきます。

とりあえず、トレーニングの間はこのことは忘れてください。「?」マークだけが、「考えたいこと」を率直に表現する方法です。他の方法は、私の知るかぎり存在しません。

Point

「?」マークを使って、考えたいことを明確にする

古い形式にこだわるべきかは、本番だけ注意してください。あなたの周りが形式にこだわっているなら、無理に疑問符を使う必要はないかもしれません(私は、疑問符を使うことを強くオススメしますが)。

論点の書き方③:可能であれば、疑問詞(なに・だれ・いつ、など)を前に出す

最後に、可能なかぎり疑問詞を前に出しましょう。これも、問いを明確にするのに役立ちます。

先ほどの例題で具体的に説明します。

例題

スマホが人々の思考・健康に及ぼす悪影響を論じた『スマホジャンキー』を読み、実際にスマホが人々の生活に与える悪影響の具体例を挙げたうえで、著者の見解を参考にしつつ、私たちが悪影響を受けずにスマホの利便性を享受するにはどのようにすればよいか、あなたの考えを述べよ。

この問題から論点を普通に書くなら、「私たちが悪影響を受けずにスマホの利便性を享受するにはどのようにすればよいか?」となります。これでも十分に論点として機能しますが、解答例では「どうすれば、私たちは悪影響を受けずにスマホの利便性を享受できるか?」としました。疑問詞を簡潔にして、前に出しているわけですね。

すべてのケースでこれが可能なわけではありませんが、できるだけ疑問詞を前に出してください。主張の型を決めているのは疑問詞です。疑問詞を真っ先に明確にできれば、主張の型もそれだけ明確になります。

疑問文の分類|オープン/クローズド・クエスチョンとは

余談ですが、英語の場合はもっと簡単に主張の型が決まります。文の最初の一語を見るだけです。それだけで、オープン・クエスチョンなのかクローズド・クエスチョンなのか、主張の型はどれになるのか、などが即座に分かります(上の表の分類が英語になっているのもそれが理由)。これに対し、日本語ではクローズド・クエスチョンであることを文の始めに明示する方法はありません。

日本語にも良い点はたくさんありますが、こと「論点を明確にする」という点では、英語に圧倒的な優位性があります。「英語を勉強するとロジカルシンキングがうまくなる」というほど単純な話ではありませんが、頭の片隅に英語的な視点を持っておくと、曖昧な日本語に遭遇したときに役に立ちますよ。

例題と解答例

ここからは、ひたすら例題と解答例です。以下の論述問題における、「論点」と「主張の型」を書き出してください。

問題①

言語・道徳・経済などの進化について述べた『進化は万能である』を読み、政府が公用語の正しい用法を規定することには正当性があるか、あなたの考えを述べなさい。

論点主張の型
政府が公用語の正しい用法を規定することに、正当性はあるか?正当性はある/ない。
問題②

近年、医療デマによる被害が甚大になりつつあることを受けて、医療に関しては政府が言論の自由を制限するべきだという議論が存在する。言論の自由が生まれた背景とその意義を踏まえたうえで、あなたの考えを述べなさい。

論点主張の型
医療に関して、政府が言論の自由を制限するべきか?制限するべき/するべきではない。
問題③

IP電話、ビデオ会議システムなど、通信技術の急速な発展に伴い、職種によっては物理的に近くにいることなく働くことが可能になった。これを受けて、個人と企業の関係はどのように変わっていくと考えられるか。あなたの考えを述べなさい。

論点主張の型
通信技術の発展を受けて、個人と企業の関係はどのように変わっていくか?これまでXであった個人と企業の関係は、Yのようになっていくだろう。
問題④

格差の拡大と固定化について論じた『大格差時代』を読み、文中の「格差の再生産」とそれに対する筆者の考えを説明しなさい。

この問題はこれまでのものより難しいです(=問題文が悪文)。よく考えてから解答を見てください。

論点主張の型
「格差の再生産」とはどのような現象か?「格差の再生産」とは、XXのような現象のことである。
「格差の再生産」について筆者はどう考えているか?「格差の再生産」について、筆者はXXのように考えている。

ということで、あの短い文章の中に2つの論点が含まれています。

このトレーニングで鍛える能力が、ロジカルシンキングを実践するうえでもっとも重要です。どんなお題でも即座に解答が分かるまで、このトレーニングを繰り返してください。「ディベート テーマ」、「小論文 過去問」などで検索をかければ、お題はいくらでも見つかります。自分の答えが合っているか不安な人は、友達や同僚と解答を確認しあってください。

以上、ロジカルシンキングのトレーニングを紹介しました。

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。ロジカルシンキングの学習をさらに進めたい人は、以下のエントリーに進んでください。別のトレーニングを紹介します。

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