このような会話が、今も日本のどこかで繰り広げられている……かは分かりません。しかし、パンダの話が分かりにくいのは事実です。また、話の内容にも問題があります。バナナダイエットをしても、おそらくダイエットはうまくいきません。
いまや、ロジカルシンキングは社会人の必須スキルとしての地位を確立しました。就職活動を始めた大学生や新社会人なら、「ロジカルシンキング」という言葉を一度は聞くことになります。
なぜこんなことになっているのでしょうか。つまり、なぜ、ロジカルシンキングを学ぶべきなのでしょう? このエントリーでは、この問いに答えます。
すでにロジカルシンキングの勉強を始めようと思っている人は、これを読んで学習のモチベーションを高めてください。まだロジカルシンキングの勉強を始めるか悩んでいる人は、これを読んで少しでも勉強する気になってくれたら嬉しいです。
では始めましょう。
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ロジカルシンキングとは
まず、ロジカルシンキングをざっくり説明します。
当サイトにおける「ロジカルシンキング」とは、基本的な「考え方」と「説明・議論の仕方」のことです。このエントリーは「ロジカルシンキングを学ぶべき理由」に焦点を当てるので、ロジカルシンキングの内容から学びたい人は、先に以下のエントリーを読んでください。
例として、ロジカルシンキングを使って冒頭の会話を改善してみましょう。
依然として内容には問題がありますが、少なくともさっきより分かりやすくはなりましたよね。もちろん、ロジカルシンキングを学べば内容の改善もできるようになります。
ロジカルシンキングで学ぶ主な内容は、以下の表にまとめてあります。
この表を詳しく説明していると終わらなくなってしまうので、詳しく知りたい人は上記のリンクを参考にしてください。
では、先に進みましょう。
ロジカルシンキングのメリット
結局のところ、ロジカルシンキングを学ぶべき理由というのは、ロジカルシンキングを習得するメリットにほかなりません。メリットがないことを勉強するくらいなら、遊んでいたほうがマシですよね1。
というより、メリットを理解せずにロジカルシンキングを学ぶのは不可能です。学習においてモチベーション(やる気)を引き出してくれるのはメリットだからです。
ロジカルシンキングに限らず、あらゆる学習を進めるうえで、モチベーションほど重要なものはありません。小さい子供でもないかぎり、誰も「勉強しろ」なんて言ってくれませんからね。自分で自分を勉強に向かわせるしかありません。また、「学びたい」と思っていないことを無理に勉強しても、何も身につかないでしょう。
学ぶことにメリット(価値)を見出すから、モチベーションを持って勉強できる
ロジカルシンキングを学ぶうえでは、価値を見出しておくことは特に重要です。ロジカルシンキングは一朝一夕には身につかないからです。
ロジカル「シンキング(thinking)」というくらいなので、このスキルはあなたの考え方を変えます。習得にどれくらいの時間がかかるかは人によりますが、最低でも1年くらいはかかると思ってください(ただし、これは教材を勉強する期間ではなく、学んだスキルを実践する期間)。これは嫌々ながらに取り組める期間ではないですよね。
ということで、ロジカルシンキングのメリットを理解しておくことは、ロジカルシンキングを習得するうえでの必須条件です。
答え
では、ロジカルシンキング、つまり、基本的な考え方と説明・議論の仕方を習得することのメリットは何でしょう?
おそらく、あなたはもう、その答えをうっすらと分かっているはずです。そうじゃないと、「ロジカルシンキング」という単語に興味を持っていないと思うんですよね。
答えは「お金になる」です。ストレートで恐縮ですが、これ以外の答えは考えられません。
もちろん、これはわざと直接的な表現にしています。普通は、以下のような大人な(婉曲な)表現が使われます。
- ロジカルシンキングは社会人の基本スキルであり、身につけておくことは当然のたしなみ
- ロジカルシンキングを習得することで、就職や転職が決まりやすくなる
- ロジカルシンキングを習得すれば、仕事でより高い価値を出せるようになる。結果としてあなたの評価も上がり、昇進のチャンスが増える
こういう言説をどこかで見たから、あなたは「ロジカルシンキング」という単語に興味を持って、このページに至っているのではないでしょうか。
では、上のような言説は何を意味しているかというと、要するに「お金になる」ということですよね。
もちろん、仕事はお金だけではないということは私も分かっています。しかし、お金がないと生きていけないのも事実ですよね。ロジカルシンキングに限らず、英語、プログラミングなど、社会人に人気があるスキルは、すべてお金になる(そのスキルが就職や昇進につながる)から人気があるのです。ここは綺麗事を言っていても始まりません。
ということで、こういうことです。
ロジカルシンキングのメリット:お金になる
ロジカルシンキングは仕事でどのように役立つのか
さて、根拠も示さずに「お金になる」とだけ断言しても、怪しすぎますよね。ということで、なぜロジカルシンキングがお金になるのかを、ここから説明していきます。
先述のとおり、ロジカルシンキングがお金になる理由は、仕事で役に立つからです。では、ロジカルシンキングは仕事でどのように役立つのでしょう?
ロジカルシンキングを習得すると、大きく分けて以下の3つの力が身につきます。
- 自分で考える力:正解がない問いに対して、自分なりの答えを出せるようになる
- 人に伝える力:自分の考えを、正確に、分かりやすく伝えられるようになる
- 人と一緒に考える力:自分以外の人も巻き込んで考えられるようになる
これらはすべて、「考える」ことを求められる仕事の基本能力です。
順に説明します。
ロジカルシンキングで習得する力①:自分で考える力
第1に、ロジカルシンキングを習得すると、自分で考えられるようになります。
「いやいや、私はもう自分で考えてるし!」と思ったかもしれません。たしかに「頭脳が機能している」という意味ではそうですよね。しかし、ロジカルシンキングでは「考える」という言葉を、もう少し特殊な意味で使います。
ここでの「考える」とは、正解がない問いに対して、自分なりの答えを出すことです。そして、その答えに根拠を用意します。「私がそう思うから」というのは通用しません。徹底的に、「何が観察されたのか(何が事実なのか)」に重きを置きます。
「考える」をこう定義すると、私たちは日常生活において、ほとんど考えていないということが分かるはずです。ロジカルシンキングを学んで、考えられるようになりましょう。
では、なぜこの力が仕事で役に立つのでしょう?
答えは、仕事では正解がない問いだけを考えるからです。正解がある問いは、検索するか人に聞いて終わりです。つまり、考えることを求められるすべての仕事で、正解がない問いの答えを自分で探せないと、お話にならないのです。「役に立つ」とか、そういうレベルの話ではありません。
「考える」仕事では、正解がない問いの答えを自分で探せない人は存在意義がない
ロジカルシンキングで習得する力②:人に伝える力
第2に、ロジカルシンキングを習得すると、自分の考えたことを、正確に、分かりやすく伝えられるようになります。
冒頭の例のように、思いつくままに話す(書く)と、私たちの言葉は驚くほど分かりにくくなります。ロジカルシンキングでは、自分の考えを正確に、分かりやすく伝えるための方法論を学び、あなたの伝える力を改善します。
では、なぜこの力が仕事で役に立つのでしょう?
答えは、仕事とは、他者に貢献することだからです。どんな仕事であれ、あなたのしたことに喜ぶ誰かがいるから、それが仕事として成立します。
つまり、仕事では他者と関わることは必然であり、その過程で他者とのコミュニケーションが必ず発生します(仕事によって量は大きく異なりますが)。そのコミュニケーションは、正確で分かりやすいに越したことはありませんよね。
仕事では他者とのコミュニケーションが必要なので、自分の考えを正確に、分かりやすく伝える力が役に立つ
ロジカルシンキングで習得する力③:人と一緒に考える力
自分で考え、それを人に伝えられるようになると、人と一緒に考えられるようになります。これがロジカルシンキングで身につく第3の力です。
ロジカルシンキングを学ぶと、人と一緒に考えるうえでのルールが理解できます。このルールを理解してはじめて、あなたは人と一緒に考えられるようになるのです。
これはスポーツにたとえると分かりやすいでしょう。サッカーで遊びたいなら、参加者全員がサッカーのルール(ルールブックに書かれていることだけでなく、従うべき規範全般)を理解している必要がありますよね。たとえば、「キーパー以外は、手でボールを扱ってはいけない」、「勝つことを目的とし、そのためにチーム全員で協力する」といったことです。参加者の一人でもこれらのことを理解していなかったら、サッカーとして成立しません。
「集団で考える」という行為も、これと同じです。集団で考えるためには、参加者が「集団で考える」という行為のルールを理解している必要があるのです。そのルールこそ、ロジカルシンキングです。
たとえば、集団で考えるためには、参加者全員が自分の考えを持ち込む必要があります。自分の考えがない人は、何も貢献できないからです。サッカーでいえば、一歩も動かずに、ボールも蹴らないプレイヤーみたいなものですね。
また、お互いに自分の考えを分かりやすく伝える必要もあります。相手に理解されることを目指さずに自分の考えをベラベラ話す人がいても、集団としての答えに効率的にたどり着けません。これもサッカーでたとえるなら、「決してパスしないプレイヤー」でしょうか。そんなプレイヤーがいたら勝てませんよね。
ほかにも、建設的で効率的な議論をするための作法(ルール)が、いくつかあります。ここでは詳細は説明しませんが、とにかく、それを参加者全員が理解していないと、「集団として考える」ことはできないのです。人と一緒に考える力とは、このルールを理解することに他なりません。
では、なぜこの力が仕事で役に立つのでしょう?
答えは、仕事では複数人で考えるからです。大学までは、集団で考える機会はまずありません。ところが、仕事の世界では一人で考えることのほうが稀です。みんなで考える、議論するといったことの作法を知らなければ、仕事で価値は出せないのです。
仕事では複数人で考えるので、人と一緒に考える力が役に立つ
確認
では、ここまでの内容を確認しておきましょう。
ロジカルシンキングを学ぶことで身につく力を3つ述べよ。
以下に解答欄があるので、答えを書いてみてください。自分で書いたほうが、ずっと効率的に学習できます。分からない場合は、記事を読み返してくださいね。なお、この解答欄に書いたことは保存できないので、解答を保存したい場合は自分のメモアプリなどを使ってください。
- 自分で考える力:正解がない問いに対して、自分なりの答えを出せるようになる
- 人に伝える力:自分の考えを、正確に、分かりやすく伝えられるようになる
- 人と一緒に考える力:自分以外の人も巻き込んで考えられるようになる
まとめ
最後に、今回の話をまとめておきます。
ロジカルシンキングを習得すれば、お金になります。なぜなら、ロジカルシンキングは「考える(正解がない問いの答えを探す)」ことを求められる仕事の必須スキルだからです。ロジカルシンキングを学ぶことで、①自分で考える力、②人に伝える力、③人と一緒に考える力の3つが身につきます。この3つの力があれば、考える仕事へ就職しやすくなり、さらにはそこで成果を出すことができるでしょう。
こんな感じですね。厳密には「『考える』仕事はお金になる」という部分の説明が抜けているのですが、そこは自明だと思うので割愛させてください。
おわりに
さて、ここで挙げた3つの能力は、「お金になる」という理由で習得すべき類のものなのでしょうか?
①自分で考える力、②人に伝える力、③人と一緒に考える力、これらはどれも人間として習得すべき基本能力であって、「お金になる」という理由で身につけるようなものではないでしょう。
たとえば、「識字率」という言葉があるくらいなので、人間は文字が読めなくても生きていけるわけです。しかし、現代の日本において「文字を読む」という能力を習得していない人がいたら、ちょっとシャレにならないと思いますよね。私としては、先ほどの3つの力は「文字を読む」のと同レベルの重要性を持っていると思うのですが、あなたはどう思いますか?
実際、ロジカルシンキングの基本事項は、欧米では「言語技術/クリティカル・シンキング」というジャンルで、義務教育で習います2。
日本の義務教育・高等教育ではこの部分がゴッソリ抜け落ちているため、新入社員研修でロジカルシンキングが大盛況という、謎の状況が生まれています。これってどうなんでしょうかね。
とにかく、結論としてはこういうことです。
ロジカルシンキングのメリット:人間としての基本能力が身につく
以上、ロジカルシンキングを勉強するメリットを説明しました。早速、これからロジカルシンキングの勉強を始めましょう!
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また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のリンクにまとめてあります。こちらも参考にしてください。