このエントリーでは、PowerPointのスライドサイズをどれにすればいいかを考えてみましょう。
詳しくは後述しますが、スライドサイズは最初に決めて、できれば後から変更したくないものです。どの大きさにすべきでしょうか?
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スライドサイズの変更方法
最初に、スライドサイズを変更する方法を紹介しておきます。以下のとおりです。
- 「デザイン」タブ→「スライドのサイズ」をクリック
- 使いたいサイズを選ぶ
これだけです。分からない場合は、以下のリンク(Microsoft公式サイト)も参考にしてください。
スライドのサイズを変更するスライドサイズは初期設定で「ワイド画面(16:9)」になっているはずです。とりあえず、新規のファイルを用意して、何回か別のスライドサイズに変更してみるとよいでしょう。
なぜスライドサイズが重要なのか
話を戻しましょう。スライドサイズは最初に、慎重に決める必要があります。
理由は、作成済みの資料のスライドサイズを変更することは、大きなリソースがかかるからです。
当たり前ですが、スライドサイズを変更すればレイアウトがズレます。ためしに、スライドにいくつかコンテンツを置いて、スライドサイズを変更してみてください。少なくとも、余白の大きさは変化したはずです。
作り込んだスライドの場合、これだけでは済みません。改行の位置が変化する、コンテンツがスライド外に飛び出る、といったこともあります。
要するに、スライドサイズを変更すると、それまでに作成した資料が、一旦は使い物にならなくなるということです。過去の資料を新しいスライドサイズで使うためには、すべてレイアウトの修正が必要になり、それには大きなリソースがかかります。
これは特に、過去に作成した資料を使い回す人・組織にとっては大問題になります。もちろん、古い資料のスライドサイズは変更しないという手もありますが、それでは新しい資料との一貫性がとれません。
大量の資料を修正するのも、持っている資料の一貫性がとれないのも、どちらも望ましいことではありませんよね。ということで、スライドサイズは最初に決めたものから変更しないのが理想です。
ちなみに、私はこれまで2度もスライドサイズを変更しました。絶対に真似しないでくださいね。
スライドサイズの選び方
では、どのサイズを選べばよいのでしょう? 以下のスライドにまとめました。
結論から述べると、印刷時の見栄えを重視するなら「A4」、ディスプレイでの見栄えを重視するなら「16:9」を選ぶべきです。
順に説明します。
判断基準
まず、スライドサイズを決めるうえでもっとも重要な判断基準は、資料を印刷・投影する媒体とのフィットです。スライドと媒体のサイズが一致していれば(相似であれば)、余計な余白が生まれず、見栄えのいいものになります。逆に、これがズレていると不自然な余白が生まれ、洗練さを欠いた印象を与えます。
私たちが資料を印刷・投影するのは、主に以下の3つです。
- 紙
- 液晶ディスプレイ
- プロジェクター
このうち、プロジェクターに関しては考慮する必要はありません。プロジェクターで投影したときにスクリーンに余白が生まれるのは当然ですし、近年に発売されているプロジェクターなら、どちらのサイズでも投影できるからです。かなり古いプロジェクターだと16:9を出力できないことがありますが、考慮するレベルのリスクではないでしょう1。
つまり、紙と液晶ディスプレイの、どちらとのフィットを重視したいかが、スライドサイズを決めるうえでの判断基準になります。
選択肢
この判断基準に従うと、選択肢は以下の2つに絞り込まれます。
- A4
- 16:9
それぞれ、紙と液晶ディスプレイにジャストフィットするサイズです。
まず、日本では印刷する紙がA4です。一方、現在普及している液晶ディスプレイのサイズは16:9です。また、YouTubeやZoomのようなWebサービスの画面比率も16:9になっています。
PowerPointにはほかにも多様なスライドサイズがありますが、それらは紙とディスプレイのどちらにもジャストフィットしません。特殊な事情がないかぎり、選ぶ理由はないでしょう。
どちらにするか|突っ込んだガイドライン
結局、どちらを選べばいいのでしょう?
考え方としてはシンプルで、印刷時の見栄え重視ならA4、ディスプレイ上の見栄え重視なら16:9です。どちらの媒体でジャストフィットさせたいかで決めてください。
さて、先述のとおり、私は2度もスライドサイズを変更した苦い経験があります。この経験をもとに、もう少し突っ込んだガイドラインを作ってみました。これが正しいかは分かりませんが、悩む人は参考にしてください。
まず、資料を印刷することが確実で、避けられないのであれば、迷わずA4を選ぶべきです。
感覚的な話ですが、印刷時に生まれる余白のほうが、ディスプレイ上の余白よりガッカリ感が大きい気がします。ディスプレイ上だと余白が黒くなるので、余白にそこまで存在感はありません。それに比べ、A4に印刷したときに不自然な余白があると、しっかり残念な感じになります。これは避けたほうがよいでしょう。
ただ、2022年現在、コロナ禍のせいで資料を印刷する機会はかなり減りましたよね。ほかにも、印刷にはコストがかかることや、SDGs(持続可能な開発目標)の機運が高まっていることなども無視できません。もし「印刷しなくても何とかなるだろう」と思えるなら、思い切って16:9を選ぶことをオススメします。
理由は当然「ディスプレイ上で見栄えがいいから」というものですが、あと2つほど理由があります。
- おそらく、16:9のほうが四角形として美しい
- 印刷を無視できるため、大胆な配色や写真が使いやすくなる
順に説明します。
16:9のメリット①:四角形として美しい
まず、16:9のほうが四角形として美しい(人間にとって好ましい形である)と考えられます。
そもそも、スライドサイズのような縦横比のことを「アスペクト比」というのですが、これは映像産業(テレビや映画)が「どのアスペクト比がもっとも魅力的な映像になるか」という視点で検討し、何度も変更されてきた歴史があります。
その歴史をざっくり述べると、4:3(A4とほぼ同じアスペクト比で、昔のテレビはこれだった)から横長に変化していくものです2。その結果として、現在のディスプレイは16:9が主流なのです。いまや4:3のディスプレイはほとんど見かけませんよね。PowerPointの初期設定のスライドサイズも、昔は4:3だったのが、いつの間にか16:9になりました。
横長のほうが好まれる理由はハッキリしませんが、「視野に近い形の四角形が好まれる」というのが私の仮説です。実際、私たちの視野を四角形して捉えると、それは4:3(A4)よりは16:9に近いですよね(私は他人の視野を見たことはありませんが笑)。先ほどのスライドを再掲するので、確認してみてください。
結局、私たちは4:3(A4)より16:9が好きなのでしょう。実際、私はコロナ禍を機にスライドサイズをA4から16:9に切り替えましたが、いまになってA4のスライドを見ると、かなり野暮ったく見えます。
ということで、単純な四角形として美しいのは(おそらく)16:9です。よって、たとえ資料を印刷する可能性がゼロではないとしても、それが稀なケースに限られるなら(例:PDFを受け取った相手が印刷する)、その分のダメージは受け入れても16:9にしたほうがよいというのが私の意見です。
16:9のメリット②:大胆な配色や写真が使いやすくなる
次に、表紙のような「目印として機能させたいスライド」において、大胆な配色や写真が使いやすくなることもメリットです。これは16:9のメリットというより「資料を印刷しない」と決めることのメリットですが、結果としては同じです。
たとえば、「背景色を濃い色にして、文字を白で抜く」といった、インパクトのある配色を使いやすくなります。これを印刷でやるとインク代がかさむ上に、色がかすれてしまうこともありますからね。印刷しないなら、そういう心配が不要になります。
それでも悩むなら
最後に、それでも印刷に関するリスクを評価しきれないと思うなら、とりあえずA4を選んでください。
実は、スライドサイズをA4から16:9に変更しても、そこまで大ダメージはありません。
PowerPoint上では、A4と16:9の高さは同じです。A4から16:9への変更を行っても、スライドの両サイドの余白が増えるだけで、レイアウトが大崩れすることはありません。先述のように、私は最近この変更をしましたが、以前に4:3からA4に変更したときに比べると3、ほとんどリソースはかかりませんでした。
もちろん、この変更もできれば避けたいところですが、ほかのサイズ変更に比べるとかなりマシです。よって、「資料はA4で作っているが、印刷はしない」というテスト期間を設けて、問題なさそうなら16:9に移行すればよいでしょう。
以上、スライドサイズの考え方を説明しました。
最後に宣伝ですが、スライドのレイアウトについてさらに詳しく学びたい方は、以下のシリーズの第5巻をご購入ください。