「論点」とは|ロジカルシンキングにおける意味

このエントリーでは、ロジカルシンキングの文脈における「論点」とは何かを説明します。

論点はロジカルシンキングや問題解決の起点となる概念です。すべての出発点ですので、しっかり押さえてください。

なお、ほぼ同一の内容の動画もあるので、動画で学びたい方はそちらをご利用ください。このエントリーの最後に埋め込んであります(目次からリンクで飛べます)。

では始めましょう。

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一般的な「論点」

論点とは何でしょうか?

まずは一般的な「論点」の意味を確認しておきましょう。辞書には以下のように書かれています。

議論の中心となる問題点。「論点から外れる」

デジタル大辞泉 コトバンク より2019年7月30日取得

このように、普通に「論点」という言葉を使う場合、「いま議論したいこと」、「話題の中心」、「意見の対立が生じているポイント」、という意味で使うことが多いです。イメージとしては、「キーポイント」という言葉が近いでしょう。

ただ、この定義は曖昧すぎてロジカルシンキングの文脈では使い勝手が悪いため、当サイトでは「論点」をもう少し厳密に定義します。

ロジカルシンキングにおける論点

「考える」とは

ロジカルシンキングにおける論点とは、答えを出そうとする1つの問い(疑問文)のことです

Keyword

ロジカルシンキングにおける「論点」:答えを出そうとする1つの問い(疑問文)

具体例を見ておきましょう。以下はこのエントリーの論点です。

  • ロジカルシンキングにおける「論点」とは何か?

あなたは、この問いに対する答えが知りたいから、このエントリーをここまで読んでいますよね(最後まで読んでもらえると嬉しいです)。このようなものが論点です。

先ほどの一般的な定義から変わっている点は、以下の2点です。

  1. 論点は問い(疑問文)である
  2. 論点は1つである

順に説明します。

論点の条件①:問い(疑問文)である

論点の1つめの条件は、問い(疑問文)であることです。

つまり、ロジカルシンキングの文脈では、論点は必ず疑問文の形で書いてください

これ以降は、疑問文で書かれていないものは論点ではありません。たとえば、「どの会社に就職するべきか?」は論点ですが、「就職活動」は論点ではありません。疑問文になっていないからです。

論点を疑問文で書くことは、ロジカルシンキングを実践するうえで決定的に重要なことです。必ずこのルールを守ってください。

なぜ疑問文しかダメなのか

なぜ、論点を疑問文で書くことがそこまで重要なのでしょう?

答えは、考えたいことを具体的に表現するには、疑問文以外の形式は使い物にならないからです。

これは本当に大事なことなので、逆からも言っておきます。単語や文節で何を書こうと、考えたいことは具体的になりません。以下のスライドを見てください。

論点の書き方

単語や文節で論点を表現するとは、以下のようなものを論点(考えたいこと)として掲げるということです。

  • 新商品開発(単語)
  • 新商品の開発について(文節)

このような表現は、まったく具体的ではありません。たとえば、「新商品の開発について」という文節からは、以下のような疑問文がいくつでも想像できてしまいます。

  • 新商品の開発をするべきか?
  • 新商品として、どんな商品を開発するべきか?
  • いくつの新商品を開発するか?
  • 新商品の開発は予定通りに進んでいるか?

このように、単語や文節で「考えたいこと」を表現しようとしても、それが1つに定まらないのです。これでは考えることはできません。

もちろん、論点を疑問文で書いたからといって、考えたいことが自動的に1つに定まるわけではありません。曖昧な副詞や形容詞が含まれている疑問文は、意味が分からないこともあるからです。そのあたりの対処法は、これから勉強しましょう。

ここでは、考えたいことを具体的に表現するには、最低でも疑問文にする必要があることを押さえてください。

Point

考えたいことを具体的に表現するには、疑問文で書くしかない

主な疑問文の型

参考までに、主な疑問文の型と、それに対する答え(主張)の型をまとめた表を掲載します。

疑問文の分類|オープン/クローズド・クエスチョンとは

ほとんどの場合、あなたが設定する論点は、この表にある疑問文のどれかと同じ形になるはずです。自分が何を問いかけているのか(=何を考えようとしているのか)、意識してみてください。

なお、この表に関しては次エントリーで詳しく解説します。

論点の条件②:1つである

先に進みましょう。論点の2つめの条件は、1つであることです。

これは自明かもしれませんが、念のため意識してください。フォーカスを当てて考えたいことが同時に2つあったらおかしいですよね。1つに絞るから、そこに思考力を集中できるのです。

もし考えたい問いが2つ以上ある場合は、「今の論点はこれ、次の論点はあれ」という形で、考えるタイミングを分けてください。といっても、それしかやりようがありませんが1

論点の条件③:簡単には答えが出せない

ここまでの2つの条件から、論点の3つめの条件が浮かび上がります。それは、「論点」とは、あなたにとって簡単には答えが出せない問いである、ということです。

これは論点というものの特性を考えれば明らかでしょう。わざわざ1つの問いを「これが論点だ。この問いに対する答えが知りたい」と意識して、答えを出そうとするわけです。そんな問いが、3秒で答えが出せるものであるはずがないですよね。

たとえば、「今日の昼ごはんを何にするか?」という問いを論点と呼んで、ウンウン頭を使う意味はありません。食べたいと思ったものを食べるだけです。

つまり、「論点」というレッテルを貼られる時点で、その問いはあなたにとって簡単には答えが出せない問いなのです

Point

論点とは、簡単には答えが出せない、1つの問いである

実践上の注意点

次に、実践で「論点」を使う際の注意点を説明します。

先述のとおり、定義上はどんなタイプの疑問文でも論点になれます。しかし、実践のロジカルシンキングでは、「どうすればXできるか?/Xするためには何をすればよいか?」という、行動を問いかけるタイプの疑問文しか論点になれないことがほとんどです。

先ほどの表で確認してください。一番上のタイプの問いしかダメだということです。

疑問文の分類|オープン/クローズド・クエスチョンとは

こうなる理由は、学生や研究者でないかぎり、ロジカルシンキングは問題解決の一部として使うからです。

原則として、問題は行動しないと解決しません。行動せずに、現状がゴールに近づくことはないからです。この「現状をゴールに近づける行動」は、問題解決では解決策と呼ばれます。以下のスライドも参考にしてください。

問題解決のプロセス

なお、このスライドの詳細や「問題解決」という言葉に関しては別エントリーで説明しています。ここまでの説明がピンとこない場合は、以下のリンクを読んでから先に進んでください。

まとめると、問題解決では、解決策(すべき行動)を考えるためにロジカルシンキングを使います。よって、論点は行動を問いかけるものである必要があるのです。

典型的なパターンは、「XXという、よろしくないこと(問題・課題)が生じている。これを解決するために、何をすればよいか?」というものです。これを基本と考えてください。

もちろん、解決策を問いかけないタイプの問いを論点にしても構いません。しかし、その場合は本当にその論点で大丈夫なのか疑ったほうがよいでしょう。特にビジネスの場合はそうです。最後に行動に繋がらないことを考えて、あなたの顧客はどう満足しますか? この問いに対する答えが必要です。

Point

ビジネスにおける論点は、ほとんどの場合「解決策(行動)を問いかける疑問文」である

余談:「論点」の別の言い方・別の使われ方

最後に余談ですが、このエントリーで説明した「論点」に相当する概念は、業界によって呼び名が変わります。また、「論点」という言葉を違う意味で使う人もいるので、この2点について説明します。

「論点」の別の言い方

まず、「考えたい問い」を意味する言葉として、「論点」の他にも、以下の言葉が使われます。

  • テーマ・議題・争点(広く一般に使う)
  • アジェンダ(外資系企業)
  • リサーチ・クエスチョン(研究)

これらの言葉は、このエントリーで説明した「論点」の同義語である(=意味の違いはない)と考えてよいでしょう。ただ、言葉の定義というのは、その言葉を使う人たちの間で揃っていないと意味がありません。不安な場合は周りの人に確認しましょう。

どの呼び名を使うかですが、呼び名はただのレッテルなので、「論点」にこだわる必要はありません。あなたの好みや周囲を観察して呼び名を決めればよいでしょう。

ただし、個人的には「テーマ」や「アジェンダ」という言葉にはリスクがあると感じています。これらの言葉を多用する人は、論点(に該当すること)を単語や文節で表現する傾向があるのです。

単語や文節はキャッチーなので、掴みとしてそれらの表現を「テーマ」や「アジェンダ」として打ち出すことは問題ありません。しかし、その背後には「考えたい疑問文」が必要です。ここだけ注意してください。

まとめると、論点に該当することをどう呼ぶかは、特に気にする必要はありません。とにかく、「考えたい・議論したいこと」が疑問文の形で明確になっており、議論の参加者に共有されているかに注意を払いましょう。

Point

考えたい疑問文が明確で、共有されているかをチェックする

違う意味で使われる「論点」

次に、「論点」や「問題」という言葉がこのエントリーとは違う意味で使われるケースを紹介します。

一部のビジネス書では、「論点/課題/問題/イシュー」という言葉が、原因分析を行った結果として見つかる「真因(原因の候補の中で、悪さをしているもの)」という意味で使われることがあります

違いとしては、以下のように考えるとスッキリするでしょう。

  • 当サイトの「論点」:それを決めるまでに多くの作業や評価をしない
    • 論点を考えてから、作業や論点の評価をする
    • まだそれにリソースを投入する価値があるかは分からない
  • 別の意味での「論点」:多くの作業や評価の結果として見つかるもの
    • 議論の余地なく答えを出すべき/解決すべきこと

これは単に言葉の用法の違いなので、「そういう定義で使う人もいる」ということを覚えておいてください。当サイトでは、そのまま「真因」を使う予定です。

以上、ロジカルシンキングにおける論点を説明しました。

次は、疑問文とは何かを勉強しましょう。このエントリーで述べたとおり、論点とは疑問文です。疑問文を理解することが、論点とうまく付き合うための第一歩です。

また、論点を設定する方法が学びたいなら、以下のエントリーを参考にしてください。ただし、学習の順序としてはジャンプするのと、内容が一気にハイレベルになります。

最後に、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。

動画で学びたい・復習したい方はこちら

冒頭で紹介した動画になります。内容は完全に同一ではありませんが、主なポイントは同じです。

Footnotes

  1. ただし、ある論点を考えているときにまったく別の論点に関する考えが進化することはあるので、人間の頭脳の中では無意識の並列処理が行われているのかもしれません。