プレゼンにおけるアニメーションの是非・使い方

2022-01-23
Daisuke Shoka

このエントリーでは、プレゼンテーションにアニメーションを使うべきか、使うとしたらどのように使うべきかを説明します。

これは簡単には答えが出せない問題で、検索しても様々な意見が見つかります。つまらない結論を先に言ってしまうとケースバイケースなのですが、その「ケースバイケース」をどのように判断するべきかを考えてみます。

では始めましょう。

アニメーションの効果

まず、「必要/不要」という判断をする前に、アニメーションの効果を整理しておきましょう。アニメーションを使うと、結果として何が起こるでしょうか?

とりあえず、おそらく世界で最も見られたであろう、アニメーションを使ったプレゼンを見てください。

これは現在の「スマートフォン」という概念が世の中に発表された瞬間です。いまや歴史の1コマですね。忙しい人のためにこのエントリーと関係ある部分から始まるようにしましたが、時間に余裕がある人は最初から見てください。それだけの価値があるプレゼンです。

話を戻しましょう。アニメーションの効果というのは、大きく分けると以下の3つです。

  1. 受け手をプレゼンのペースに同調させられる
  2. プレゼンに動きが生まれて、賑やかさを演出できる
  3. リソースがかかる(これは「効果」というより「結果」)

このうち、③は明らかなデメリットですが、①と②はメリットなのかデメリットなのかも含めて考える必要があります。

順に見ていきましょう。

アニメーションの効果①:受け手をプレゼンのペースに同調させられる

まず、アニメーションを使うことで、受け手をプレゼンのペースに同調させられます

当たり前ですが、1枚のスライドに掲載されている情報を一瞬で話すことはできません。そして、人間が何かを理解するスピードは、「聞く」よりも「見る(読む)」の方がはるかに速いです。

よって、アニメーションを設定せず、スライドの内容をすべて一気に見せると、受け手はあなたのスピーチより先に進んで、自分でスライドを読もうとします。悪く言うと、プレゼンを聞かなくなるわけですね。

アニメーションを設定すると、これを防げます。これから話すところだけを順次見せるようにすれば、受け手は先を見ることはできませんからね。

先ほどのプレゼンでも、「実は3つではなく、1つにまとまっています」というオチが先に見えてしまったら、全く面白くありませんよね。ジョブズの言葉とスライドの動きがセットでそれが明らかにされるから、あそこまで盛り上がるのです。

なお、この効果を得るためには、資料を事前配布していないことが前提となります。資料が受け手の手元にある場合は、アニメーションの有無に関わらず受け手は手元の資料を見ると考えてください。

受け手をプレゼンのペースに同調させるとは

受け手をプレゼンのペースに同調させるということは、プレゼンターが強い主導権を持つということです。プレゼンターが話を進めるまで、受け手は先が分からないわけですからね。

この行為が受け手に与える印象は、以下のように両面的な言い方ができます。

  • 良く言うと:スポットライトが当たっている、キラキラしている、力強い
  • 悪く言うと:ドヤっている、オラついている

どちらも正しいことは、先ほど見てもらったプレゼンから明らかでしょう。

プレゼンターが強い主導権を持つべきか

では、私たちはプレゼンターとして、強い主導権を持つべきなのでしょうか?

ここで以下の引用を見てください。

彼(ビル・ゲイツ)が参加するプレゼン会議では、発表者が発表をする時間は設けられません。彼のいうプレゼン会議とは、発表者との質疑応答の時間のことを指します。したがってスライドを動かしながら説明をするといったことはしません。資料は前もって送り、当日、質問を受けるだけです。

要するに、ビル・ゲイツはこう言っています。

私が知りたいことを最も分かっているのは私だ。だから君は自分から話さずに、私が聞いたことにだけ答えなさい

私の経験上、組織の偉い人というのは、概ね似たような考えだと想定して問題ありません(ビル・ゲイツほど振り切れてはいないにせよ)。

これの意味するところは、立場が上の人に対するプレゼンでアニメーションを使うと、その人をイラつかせる可能性が高いということです。「私の知りたいことだけ、さっさと話せ」と思っている人を、下の立場のあなたが自分のペースに従わせるわけですからね。

このリスクは、アニメーションのあらゆるメリットを帳消しにして余りあるものです。よって、受け手の立場があなたより上であるケースでは、アニメーションは使わないほうがよいでしょう。実際、社内会議でのアニメーションの使用を禁止している企業もあります。

Point

自分より立場が上の人に対するプレゼンでは、アニメーションは使わないほうが安全

もっと言うと、受け手の立場があなたより上であるケースでは、本番のプレゼンに比重を置かないほうがよいでしょう。下手をするとビル・ゲイツのように「プレゼンはいいから、資料を見せろ」と言われる可能性もあるわけですからね。資料を作り込むことにリソースを使うべきです。

逆から言うと、アニメーションを使い、主導権を握ってもいいのは、プレゼンターであるあなたがそれなりに強い立場であるときだけです。先ほどのスティーブ・ジョブズがいい例ですね。あの時点でジョブズのプレゼンは神格化されており、あそこにいる聴衆はすべてジョブズのファンと言っても過言ではありません。もはや「プレゼン」というより「ショー」なのです。

このように、受け手と自分の関係性に注目すると、適切な判断ができるでしょう。

アニメーションの効果②:賑やかさを演出できる

アニメーションの2つめの効果は、プレゼンに動きが生まれ、賑やかさを演出できることです。これは「animate(動きを与える)」という言葉の意味そのものなので、説明は不要でしょう。

ただ、普通の人はこの効果の恩恵を受けることはないでしょう。ほとんどの人は、社内会議や営業、研究発表といった「真面目なコンテクスト」でプレゼンをします。先ほどのiPhoneの発表会のような、大人数を相手に盛り上げる必要がある状況でプレゼンはしませんよね。

真面目なコンテクストでは、動きの大きなアニメーションを使って賑やかさを演出する必要はありません。そんなことをしても「ふざけてるのかな」と思われるだけです。アニメーションを使うとしても、そこに求める効果は先述の「受け手をプレゼンのペースに同調させる」もののみです。

具体的には、使うアニメーションは以下の2つで十分です。

  • フェード:コンテンツがフワッと浮かび上がる
    • アニメーションの中で最も落ち着いているので、基本はこれだけで十分です
  • ワイプ:コンテンツが一定方向に流れながら出現する
    • プロセスや矢印のような方向があるコンテンツは、こちらのほうが適切です

この2つは、使っても浮ついた感じになりません(ともに、PowerPointにおける名称です)。

Point

(普通の人は)アニメーションで賑やかさを演出する必要はない

もちろん、あなたが大人数相手の商品発表会などをするなら、この限りではありません。どういうトーンでプレゼンをしたいのかを考えると、正解が見えてくるはずです。

アニメーションの効果③:リソースがかかる

最後に、アニメーションを使うにはリソース(時間とエネルギー)がかかります。スライド上でアニメーションを設定したり、それに沿った事前練習をしたりといった具合です。

これは「すごく大変」というほどのリソースはかかりませんが、無視できるほど小さくもありません。スライド上でアニメーションを設定するのは大した手間ではありませんが、アニメーションに沿ってプレゼンできるようになるまでのリソースが大きいのです。

アニメーションを設定していなければ、スライドを進めるたびに次のスライドが映るので、それをチラ見しながらスピーチを紡いでいけます1。ところが、アニメーションを設定していると、映るのはせいぜいタイトルまでです。これでよどみなくプレゼンするにはそれなりに事前練習が必要になります。

このリソースが正当化できるかは、ケースバイケースとしか言えません。ただ、間違いなく言えるのは、アニメーションで変わるのは「伝え方」であり、「伝える内容」ではないということです。

プレゼンというのは、まずは中身がなければ勝負になりません。中身がないのに伝え方にリソースをかけることは、あらゆるケースで正当化できないことです。このあたりの話は以下のリンクも参考にしてください。

別の見方をすると、何度も繰り返すプレゼンでは、アニメーションにかけるリソースを正当化しやすいです。一度リソースをかけて伝え方を改善すれば、そのリターンを何度も受けられますからね。

このように、どれくらい(「伝える内容」ではなく)「伝え方」にリソースをかけられるかというのも、アニメーションの使用を判断する上での1つの視点です。

アニメーションのガイドライン

ここまでの内容を受けて、アニメーションの使用ガイドラインを考えてみましょう。

まず、判断の軸として出てきた要素は、以下の3つでした。

  1. 受け手との関係性
  2. プレゼンで演出したいトーン
  3. 「伝え方」にかけられるリソース

これを踏まえて、いくつかの典型的なケースにおけるガイドラインを考えてみました。以下のとおりです。

  • 社内会議:アニメーションは不要
    • あらゆる観点から、使う理由が見当たらない
  • 営業:キースライドで使うことを検討してもいいのでは
    • 力強い感じがあったほうが信頼される(こともあるだろう)
    • 社内会議ほど、こちらが完全に下ということもない
    • 扱う商品によるが、一般的には繰り返す
  • セミナー:キースライドで使う or 全部使う
    • こちらの立場が強い
    • 繰り返す

もちろん、これが正解だと言うつもりはありません。実践では、先ほどの3つの判断軸に照らし合わせて自分で判断してください。

以上、プレゼンにおけるアニメーションの使用について考えてみました。最後に宣伝ですが、資料作成やプレゼンに関する詳しい説明を、以下の書籍で行っています。第1巻は無料ですので、興味がある方は読んでみてください。

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  1. プレゼンは受け手のほうを見て話すのが基本ですので、スライドをずっと見てはいけません。