伝わる・分かるプロセス

このエントリーでは、「分かる」とはどういうことなのかを考えましょう。

会話や文章は、分かりやすいに越したことはありません。しかし、いざ「自分の話や文章を分かりやすくするには、どうすればいいか?」と問われると、意外と分からないですよね。

この原因は、「分かる」という言葉が漠然としていることにあります。もう少し意味を小さくしないと、分かりにくい原因も、どうすれば分かりやすくなるのかもハッキリしません。このエントリーでは、そのあたりを整理しましょう。

なお、話をシンプルにするため、分析の対象は文章とします。ほとんどの内容は文中の「読む」を「聞く」に置き換えれば会話(音声)にも当てはまるので、特に心配しないでください。

では始めましょう。

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分かる条件:全体像

早速ですが、以下のスライドを見てください。

伝わる・分かるプロセス

このスライドの上段では、文章が「伝わる」とはどういうことなのかを表現しています。

まず、何かを「伝える」とは、自分の頭の中にあること(知識や信念など)を、できるだけそのままの形で読み手に届ける行為です。スライドの左端にあるボール(円)を、読み手まで投げるとイメージするとよいでしょう。ボールがそのままの形で読み手に届けば伝わっているし、形が変わったり、届かなかったりすれば伝わっていません。

ただし、テレパシーが実用化されていないため、私たちは頭の中にあることを他者にそのまま伝えることはできません。そこで、書き手が自分の頭の中にあることを言語に変換して(=文章にして)、読み手に渡します。文章がうまくボールを運んでくれれば、「伝わる」わけですね。

Keyword

伝わる:書き手の伝えたいことが、そのままの形で読み手に届くこと

ここまでの話を読み手の視点で言い換えた言葉が「分かる」です。ということで、この2つは本質的に同義語ですが、「伝わる」よりは「分かる」が一般的なので、これ以降は「分かる」を使用します。

Keyword

分かる:読み手が、書き手の伝えたいことをそのままの形で受け取れること

分かるプロセス = 分かる条件

スライドにあるように、文章が「分かる」までには、受け手が以下の3つのプロセスを経る必要があります。

  1. 読む:文章を言語(情報)として認識する
  2. 意味を取る(解釈する):文章が伝えている意味・イメージを受け取る
  3. 納得する:受け取った意味・イメージを「正しい」と受け入れる

これらは、「分かる」ための条件だと考えることも可能です。つまり、分かりやすい文章とは、以下の3つの条件を満たす文章のことです。

  1. 読める:文章を言語(情報)として認識できる
  2. 意味を取れる(解釈できる):文章が伝えている意味・イメージを受け取れる
  3. 納得できる:受け取った意味・イメージを「正しい」と受け入れられる

この3つは、問題が生じる原因と対策がまったく異なります。分かりやすい文章を書くためには、これらを別々の話だと考えましょう。

順に説明します。

分かる条件①:読める

伝わる・分かるプロセス

文章が分かる最初の条件は、読めることです。これは具体的には、書かれているテキストを言語(情報)として認識できることです。

例を見てください。

سلام

これはGoogle翻訳で「こんにちは」を「シンド語」に変換したものです。おそらく、あなたはこれを読めないでしょう。私は文字の切れ目がどこにあるのかすら分かりません。

当たり前ですが、読めない文章が分かることはありません。まずは読める必要があります。

Point

分かる条件①:読める(言語・情報として認識できる)

文章が読めるための条件は以下のとおりです。

  • 読み手が知っている文字で構成されている
    • 日本人の例(義務教育は終えているとする)
      • ひらがな
      • カタカナ
      • 読める漢字
      • アルファベット
  • その文字が読める(汚くない)

注意が必要なのは「読める漢字」ですね。読み手が読めない漢字を多用すると、それだけで分かりにくくなります。

分からない原因①:読めない・読みにくい

ここまでの話をひっくり返せば、分からない原因が明らかになります。文章が分からない第1の原因は、読めないことです。

また、たとえ読めたとしても、読みながらストレスを感じるようでは、文章が最後まで読まれる確率は下がります。その意味で、「読みにくい」ことも分からない原因になります。

Point

分からない原因①:読めない・読みにくい

このうち、パソコンで普通のフォント(明朝体かゴシック体)を使い、読み手が読めない漢字を使わないことだけ意識すれば、「読めない」は回避できます。心配すべきなのは「読みにくい」でしょう。

読みにくくなる主な原因は以下の2つです。

  1. 抑揚がない
  2. 黒い

順に説明します。なお、原因と対策の詳しい説明は別エントリーで行うため、当エントリーでは簡単な説明に留めます。ご了承ください。

読みくい原因①:抑揚がない

まず、あまりに単調な(抑揚がない)文章は読みにくいです。 以下の表を見てください。

単調(抑揚がない)抑揚がある
同じ内容が繰り返される同じ内容は繰り返さない
テキストだけが連続する途中で写真・表・グラフ・図解などが挿入される
普通の文・段落だけで構成される見出しが含まれる
散文(普通の文章)だけで構成される箇条書きが含まれる
漢字が連続するひらがな・カタカナ・漢字のバランスがよい

比べると、右側の文章が望ましい(読みやすい)ことは自明でしょう。漢字まみれで同じような内容を延々と繰り返す文章は読む気がしませんよね。

読みにくい原因②:黒い

次に、あまりに黒い文章は読みにくいです。以下を見てください。

  • テキストだけが連続する
  • 漢字が多すぎる
  • フォントサイズが小さすぎる
  • 行間を詰めすぎている

こういう文章を読みたいとは思わないでしょう。共通するのは、総じて黒い印象を与えることです。

分かる条件②:意味を取れる

伝わる・分かるプロセス

先に進みましょう。文章が読めたら、次は意味を取れる(解釈できる)必要があります。これは具体的には、読んだ文章が「意味・イメージ」として解釈されることです。これが一般的な意味での「分かる」にもっとも近いですね。

Point

分かる条件②:意味を取れる

分からない原因②:意味が取れない・誤解している

同じように、話をひっくり返しましょう。文章が分からない第2の原因は、意味が取れないことです。

また、たとえ読み手が「意味が取れた」と思ったとしても、それが書き手の意図した意味とズレていては話になりません。つまり、「誤解する」ことも分からない原因になります。

Point

分からない原因②:意味が取れない・誤解している

意味が取れない原因は、以下のように文章の構成要素ごとに分けるとスッキリします。

  1. 語句(単語・文節)の意味を(読み手が)知らない
  2. の意味が取れない・取りにくい
  3. 段落・文章全体として何を言いたいのか分からない

ここは詳細を説明すると終わらなくなるため、当エントリーではここまでとさせてください。

分かる条件③:納得できる

伝わる・分かるプロセス

最後の条件は、納得できることです。これは具体的には「受け取った意味・イメージが自分のものになっている/その意味・イメージに異論がない」ということです。「納得できる」のほかには、以下の言い方もあります。

  • 合点がいく
  • 腹落ちする
  • 同意できる・肯定できる
  • 共感できる

この条件に関しては「分かる」とは別物であるという解釈も可能でしょう。実際、「意味は分かるけど、納得はできない」という表現は普通にあります。ただ、「まったく納得できない」という意味で「サッパリ分からない」と言うケースもあるので、条件の1つとしました。

Point

分かる条件③:納得できる

分からない原因③:納得できない

同じように、話をひっくり返しましょう。文章が分からない第3の原因は、納得できないことです。

Point

分からない原因③:納得できない

意味が取れているのに納得できないなら、その原因は文章の内容そのものにあると考えるしかありません。具体的には、以下のどれかです。

  • 根拠が妥当ではない
    • 例:感情ばかりでデータがない
  • 論理が破綻している(話が繋がっていない)
  • 具体例が足りない
    • 抽象的な話ばかりで、言葉の意味としては理解できても、具体的なイメージが自分の中に生まれていない

ここも、当エントリーでの説明はここまでとさせてください。

以上、「分かる」ということについて考えてみました。次回から、具体的な文章力トレーニングを始めましょう。

まずはタイポグラフィ(文字の見せ方)からです。タイポグラフィは「文章力」とは言えませんが、このエントリーで学んだとおり、読みやすさは分かりやすさの一部です。読みやすい文章にするための最低限の知識を勉強しましょう。

また、文章力に関する全エントリーは以下のリンクにまとめてあります。