ビジネスとは何か/どういうものか

このエントリーでは、「ビジネスとは何か/どういうものか」を学びましょう。

社会人になれば、多かれ少なかれ「ビジネス」というものに関わらざるを得ません。しかし、改まって「ビジネスって何?」と聞かれると、答えに窮してしまう人も多いのではないでしょうか。このエントリーでは、ビジネスの全体像と、その構成要素を説明します。

toc

ビジネスの全体像

早速、ビジネスの全体像を見てください。以下のスライドにまとめました。

ビジネスとは|ビジネスの全体像

最初に冒頭の問いに答えておくと、ビジネスとは、なんらかのゴールを達成するために、資本家からお金を調達し、それを使う活動です。これがもっともハイレベルなビジネスの定義なので、とりあえず押さえてください。キャッチーに書くと以下のようになります。

ビジネスの全体像

ゴールの達成 = 資金の調達 × 資金の使用

まだピンとこないと思いますが、これから順に説明します。

企業・自社・経営者

先に進む前に、ビジネスを語るうえで欠かせない言葉を定義しましょう。

まず、「企業」とは、ビジネスを行う主体(個人、または集団)のことです。法律上はこの主体が「法人」や「個人事業主」に分かれたりするのですが、今回はそのあたりのややこしい話はしません。とにかく、ビジネスをしていれば、個人であれ集団であれ、それを「企業」と呼ぶことにします。

Keyword

企業:ビジネスを行う主体

また、あなた自身が属している企業のことを「自社」と呼びます。これもセットで覚えてください。

Keyword

自社:あなたが属している企業

最後に、「経営者」とは、企業の運営に関わる意思決定をし、その責任を負う人物のことです。ざっくり、企業のトップ(社長)のことだと考えて問題ありません。

Keyword

経営者:企業の運営に関わる意思決定をし、その責任を負う人物(=企業のトップ)

ちなみに、大企業では「運営に関わる意思決定をし、その責任を負う人物」が複数人になります。この場合は、「経営者」ではなく「経営」と呼ばれるので、これも覚えておいてください。

企業のゴール

準備ができたので、先ほどのスライドを掘り下げましょう。再掲します。

ビジネスとは|ビジネスのフレームワーク

ポイントは以下の2つです。

  1. 企業のゴールを一般論で考える意味はない
  2. ビジネスとは、お金を何かに換えて、お金を増やす活動である

まずはゴールの話から始めましょう。

結局のところ、企業におけるあらゆる活動は、企業のゴールを達成するために行われています。そうでなければ、オフィス街に大きなビルを建てたり、従業員が満員電車に乗って通勤したりするわけがありませんよね。何かゴール(目的)があるのです。

では、企業のゴールは何なのでしょう?

教科書的な答えだと、ここは「利益の創出」や「顧客の創造」などと言われるところです。

しかし、現実的には、企業のゴールを一般論で考えることには意味がありません。現実のビジネスにおいて、ゴールを決め、それに従い資金の調達・使用方法を決めるのは、「企業」という抽象的な存在ではなく、「経営者」という具体的な人間だからです。

世の中には、さまざまな考え方の人が存在します。すべての経営者が同じゴールに向かって活動しているわけがありません。

企業のゴールに関しては、これ以上掘り下げると脱線になるため、詳細は以下のエントリーにまとめました。教科書的なゴールを含めて説明しているので、このエントリーの後に読んでみてください。

具体例

ここまでの話を具体的に考えてみましょう。

例として、「(あなたが)浜辺でかき氷を作って、海水浴客に売る」という状況を想定しましょう。以降、このビジネスのことを「かき氷ビジネス」と表記します。

せっかくなので、先ほど定義した言葉も使っておきます。

  • 企業:あなた
  • 経営者:あなた

とてもシンプルな状況ですね。

さて、質問です。あなたがこの「かき氷ビジネス」をする目的は何ですか?

ここでもし、私が「あなたの目的はお金儲けである」と断定したら、それはおかしいですよね。ほかにも目的は考えられます。

あなたは海水浴客に喜んでもらいたいのかもしれないし、ほかの誰にも真似できないようなかき氷を作りたいのかもしれないし、ひょっとしたら、ビジネスをするフリをしながら海水浴客を眺めたいだけかもしれません。

結局、目的を決められるのはあなただけです。このビジネスの経営者はあなただからです。

このように、ビジネスの目的とは個別具体的なものです。一般論で何かを述べたり、他者が目的を断定することに意味はありません。当事者が好きなように目的を決めればいいのです。

まとめ

一旦まとめると、「ビジネスとは、Xを達成することである」といった捉え方をすべきではない、ということです。こう捉えても、Xがケースバイケースなので、これ以上の具体化ができません。

言い換えると、ビジネスは手段(活動)です。目的ではありません。シンプルに、「ビジネスとは、Yのような活動のことだ」という形で、表面的な活動だけに着目すべきなのです。

Point

企業(ビジネス)のゴールを一般論で考えることには意味がない

ビジネスとはどのような活動か

では、ビジネスとはどのような活動なのでしょう?

結論を先に述べると、ビジネスとは、お金を何かに換えて、お金を増やす活動です

以下のスライドを見てください。先ほどのスライドを具体的にしました。その分ゴチャゴチャしていますが、ご容赦ください。

ビジネスとは

緑の矢印はお金の流れを意味し、グレーの矢印はお金以外のモノの流れです。緑の矢印の太さはお金の量を意味します。また、数字は大まかな順序だと考えてください。

順に見ていきましょう。

プロセス①:資金を調達する

まず、資金を調達します(1番)。資金調達としてイメージしやすいのは資本家(銀行やお金持ち)からお金を借りる・出資してもらうことですが、資金さえ用意できればどんな手法でも構いません。もちろん、自分の貯金を使うことも資金調達の一種です。

かき氷ビジネスにおける資金調達は、自分の貯金を使うか、両親から借りるか、といったところでしょう。銀行から借りるのは厳しそうですね。

プロセス②:問題解決する

次がポイントです。企業は資金を何かに投下して商品に変換し、顧客に問題解決を提供します(2番)。

なお、「問題解決」という言葉がピンとこない人は、「顧客の要望に応えること」と読み換えてください。問題解決に関しては以下のリンクで説明していますが、まずはこのエントリーを読んでしまうのがオススメです。

話を戻しましょう。企業が資金を投下するのは、人材に代表される経営資源や、プロモーション費用などです。ここでは詳細は気にしなくていいので、お金が、お金以外のものに変換されるという点を押さえてください。

かき氷ビジネスで考えてみましょう。浜辺でかき氷を売るためには、最低でも以下のものが必要です。

  • 店舗(テントと机)
  • かき氷を作る仕組みと材料
    • かき氷を作る機械
    • シロップ
    • 器とスプーン
  • 販売員

足りないものもありそうですが、やはり詳細は気にしなくて大丈夫です。これらはお金ではないことを確認してください。これらは、お金を使って用意するものですよね。お金が、お金以外のものに変化しています。

こうして、晴れてかき氷を売れるようになりました。暑い浜辺でかき氷を食べたお客様(顧客)は、喜んでくれますよね。これが問題解決するということです。

Point

企業は、お金を何かに換えて、顧客に問題解決を提供する

プロセス③:報酬を受け取る(価値が創造される)

先に進みましょう。企業が問題解決できれば、顧客は価値を感じます。価値の対価として、企業は報酬を受け取るわけですね(3番)。

ここで、「報酬」の矢印が「資金」より太いことを確認してください。スライドを再掲します。

ビジネスとは

つまり、全体として、投下した資金を商品に換えた結果、最初に投下した資金よりも大きなお金が帰ってきたわけです。これが「価値が創造された」ということです。

Point

問題解決に成功するとお金が増える(価値が創造される)

なお、実際のビジネスでは、必ずしも投下した資金より大きい報酬が得られるとは限りません。そもそも顧客がいなかったり、問題解決に失敗したりするからです。しかし、そういうビジネスは長期的には淘汰される(赤字なので継続できない)ので、一般論としては「報酬は投下資金より大きい」としてしまって問題ありません。

かき氷ビジネスで具体的に考えてみましょう。

もし猛暑で、かき氷が美味しく、値付けも妥当なら、かき氷は売れるでしょう。そうすると、売上の合計は先ほど挙げたモノを調達するのにかかった費用より大きくなるはずです(というより、そうなるように値付けする)。これは、かき氷ビジネスが世の中に価値をもたらしたことを意味します。

逆に、もし冷夏で、そもそも海水浴客がいないようであれば、どう頑張ってもかき氷は売れません。投資は回収できないでしょう。これは、かき氷ビジネスが価値を創造することに失敗したことを意味します。

プロセス④ー⑤:お金を返す/納める

価値が創造できたとして、話を進めましょう。

あとは、手元に残ったお金の一部を、国家や資本家に納めます(4番、5番、6番)。納税・借金返済・配当などですね。こうしてビジネスの継続性を担保すれば、一連のプロセスは終わりです。

かき氷ビジネスでも、両親から借金をしたなら返さないといけないですよね。また、利益が出たならきちんと納税しないといけないし、利益が出なくてもビジネスの結果は税務署に報告する必要があります。

だから何なのか

さて、「で、だから何だよ?」と思ったかもしれません。ここまでに述べたことはまさに「ザ・お勉強」という感じで、示唆が弱いんですよね。そこで、逆から捉えてみましょう。

ビジネスとは、お金を何かに換えて、お金を増やす活動でした。ということは、お金をお金のままで保有している企業は、ビジネスをしていないのと同じです1

言い換えると、ビジネスの世界では、お金は常に使い道を求めています

こう考えると面白くなるし、世の中のニュースを理解するヒントになるはずです。たとえば、「なぜ不良債権が生まれるのか」という問いに対する一つの答えは、「銀行はお金を貸したがるから(=銀行はお金をお金のままで持っていると、ビジネスをしていないことになってしまってマズい)」ということでしょう。

個人の感覚だと理解しにくいニュースやお金の流れの背後には、この「ビジネスでは、お金は使い道を求める」というメカニズムが働いています。覚えておいてください。

Point

ビジネスでは、お金は使い道を求める

資金の使用

資金の使用

次に、スライドの右側について説明します。

資金の使用のフレームワーク

資金の使用 = マーケティング × コンプライアンス

問いの形で書くと、以下のようになります。

  • 資金の使用:調達した資金を、何に使うか?
    • マーケティング:顧客への問題解決による、価値創造のために使うか?
    • コンプライアンス:法令・倫理の遵守のために使うか?

このフレームワークで覚えておくべきことは、企業はマーケティングだけに資金を投入するわけにはいかないということです。あくまで、国家や社会からの承認があって、企業はビジネスを続けられるのです。

順に説明します。

宣伝:Liffelの電子書籍 資料作成・プレゼンのプロセス

【第1巻は無料】 ロジカルな資料作成・プレゼンの教科書シリーズ

マーケティング

まず、言葉の意味を明確にしましょう。このフレームワークにおける「マーケティング」とは、価値創造プロセス全般のことです2。これは「マーケティング」という言葉のもっともハイレベルな使い方です。

Keyword

マーケティング:問題解決を通じた価値創造プロセス全体のこと

ちなみに、「マーケティング」という言葉の意味は人によってバラバラで、このように「価値創造そのもの」として使う人から「プロモーション(販売促進活動)」の言い換えとして使う人までさまざまです。どれが正解ということはないのですが、使う人の間で意味の齟齬が生まれないよう、注意してくださいね。

マーケティングに関しては今後も別エントリーで説明するため、本エントリーではここまでとします。

コンプライアンス

次に、「コンプライアンス」とは、法令・倫理の遵守のことです。

Keyword

コンプライアンス:法令・倫理の遵守

ここで特に重要なのは、法令の遵守です。法令を守ることは、企業にとってマーケティングに優先します。理由はシンプルで、そうしないとビジネスを続けられないからです。

たとえば、会社を作って起業するときには法務省に法人登記をし、その後は毎年決算(財務会計)をします。これらの活動は、「やらないとどうなるのか」を調べるのが馬鹿らしいレベルで、当たり前にやることです。つまり、法令を守るためのコストは企業にとって優先順位がもっとも高く、絶対にカットできません。

先ほどは分かりやすさのために「報酬が生まれてから納税する(マーケティング→コンプライアンス)」という流れで説明しましたが、あれは厳密には間違いです。正しくは、報酬が生まれようが生まれまいが、最低限のコンプライアンスコストが先に発生します。

Point

法令コンプライアンスは、マーケティングに優先する

ここから、あなたがなぜ勤怠管理や領収書の整理に時間を使わされるのかが分かるはずです。これらの業務は法令コンプライアンスにかかるので、企業としては、あなたの普段の業務より優先順位が高いのです。

ということで、今後「何でこんなことしなきゃならんのか」と思う業務があったら、法令コンプライアンスの筋を疑ってみてください。イライラが少しは減るかもしれません。

以上、ビジネスの全体像を説明しました。このように、ハイレベルな視点からビジネスを捉えておくと、あらゆるケースで役に立ちます。頭の片隅に置いておいてくださいね。

余談:ビジネスの起点は何か

余談ですが、最後にビジネスの起点についてお話します。もう一度、先ほどのスライドを見てください。

ビジネスとは|ビジネスのフレームワーク

誤解してほしくないのですが、このサイクルの根本的な発火点は資本家ではありません。一連のサイクルを分かりやすく説明するために、このようなスライド上の表現になっているだけです。

このサイクルの根本的な発火点、つまりビジネスの火種は、問題を抱えた顧客の存在です。問題を抱えた顧客がいるから、その問題に対する解決策を考える企業が現れ、その解決策を実装するための資金需要が生まれるのです。

そして、問題とは要するに人々の欲望のことです。このあたりの話は、先ほど紹介したリンクも参考にしてください。

つまり、ビジネス(経済活動)のエンジンは人々の欲望です。人間の欲望が、ビジネスのサイクルを回すのです。資金が潤沢にあったところで、このサイクルが回るわけではありません。

逆に言えば、現状に満足して、何の欲望もない人が増えるほど、ビジネスチャンスはなくなっていくわけです。欲しくもないものを買わせるというのは、基本的に無理筋ですからね。

これは「経済成長」というものを考えるうえで興味深い話です。

たとえば、日本経済が停滞している原因として、高齢化社会が挙げられますよね。しかし、私としては「現代の先進国では、ほとんどの人は衣食住が満たされて、あとはスマホがあればハッピーなので、一人あたりの欲望が前ほど大きくない」という筋もあるのではないかと疑っています3。ただ、「貧しいから欲望もなくなった(買えないモノは欲しがらない)」という筋もあるので、検証は難しいですが。

ということで、ちょっと話が大きくなってしまいましたが、面白いテーマだと思うので、あなたも考えてみてくださいね。

以上、ビジネスとは何か/どういうものかを説明しました。

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。文中でも紹介しましたが、次は企業のゴールは何かを掘り下げていきましょう。

また、マーケティングで使える主なフレームワークは、以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。

Footnotes

  1. ただし、この話は建前論です。実際は、より魅力的な投資機会を待つ、市場縮小リスクに備える、といった理由で企業が現金を貯め込むことはまったく普通のことです。程度問題だと考えてください。

  2. ただし、文中で説明したとおり、価値が創造されたかどうかは投入した資金(ファイナンス)との比較で決まる話です。その意味で、本当の意味での価値創造プロセスはビジネス全体のことを意味するのですが、便宜上、「商品を顧客に届けて報酬を受け取る」部分のことも「価値創造プロセス」と呼んでいます。

  3. 厳密に書くと、「一人あたりの欲望が前ほど大きくない」というより、「テクノロジーの進歩(主にスマホ)によって、人間の基本的欲望を超低コストで実現できるようになった」ということです。