【シート付き】資料(文書やプレゼンテーション)の目的を明らかにする方法

2022-10-20
Daisuke Shoka

このエントリーでは、資料(文書やプレゼンテーション)の目的を明らかにする方法を学びましょう。

資料を作るときには、実際にそれを作り始める前に、目的を明確にします。それも当然で、資料やプレゼンを通じて他者を説得しようとするのは、その先に何らかの目的があるからです。目的がなかったり、曖昧なまま資料を作り始めるのは、ものごとの進め方として完全に間違っています。

言い換えると、何を伝えるか考えたり、伝え方を作り込んだりする前にすべきことがあるということです。その代表例が「目的を明確にする」ことですが、他にもあるので、このエントリーはそのあたりの「資料を作る際に、最初に考えておくべきことを考える」ことを「設計」と呼ぶことにします。このエントリーでは、設計を学びましょう。

なお、以下の電子書籍では、このサイトよりも包括的な形で解説しています。第1巻は無料ですので、時間がある人はこちらをオススメします。

宣伝:Liffelの電子書籍資料作成・プレゼンのプロセス

【第1巻は無料】ロジカルな資料作成・プレゼンの教科書シリーズ

では始めましょう。

「設計」とは

「設計」とは、具体的に何をすることなのでしょう?

答えを先に述べると、設計とは、以下の2つを行うことです。

  1. 目的を明確にする
  2. ロジックとレトリックの方向性を考える

ただ、こんなことを言われてもサッパリですよね。とりあえず、説明が終わるまでは「設計する」とは、以下の設計シートを記入することだと考えてください。

設計シート

もちろん、重要なのはこのシートで何をするのかを理解することであり、どうしてもこのシートを使う必要はありません。ただ、説明がしやすくなる関係上、当サイトではこのシートを使うこととさせてください。

仮想の状況と記入例

空のシートだけではこの先の説明が分かりにくいので、仮想の状況に関して記入済みの設計シートも作成しておきました。設定した状況は、以下のようなものです。

  • あなたは、ある会社の社長(山田 太郎)の右腕である
  • 先週の業績報告会で、関西支部の業績が急速に悪化している(昨対比マイナス20%)ことが判明した
  • あなたは「お前が担当しろ。どうすればいいか、来週に報告してくれ」と社長に言われた
    • 本日は2020年4月1日である
  • 社内のルールとして、報告はプレゼンで行うこと、パッケージのデータはプレゼン前日17時までに会議の参加者に送付することが決められている

この状況下で、設計シートを記入した結果が以下になります。

設計シート

ダウンロード

設計シートは、以下のボタンからダウンロードできます。私はこのシートの著作権を放棄しますので、カスタマイズや再配布も自由に行ってください。マストではありませんが、再配布の際には当サイトの宣伝をよろしくお願いします笑。

では、シートの詳細を見ていきましょう。

説得の目的

では、上から順に設計シートを見ていきましょう。まずは説得の目的からです。なお、「資料の目的」となっていないのは、資料を作って終わりということはなく、それを使って誰かを説得するからです。

これは要するに「誰に、何をしてもらいたいのか」を具体的に述べることです。そのためには、以下の点を考えましょう。

  • 問題と論点は何か(どんな問題意識があって、具体的に何を考えるのか)
  • 答えは何か/どんなことになりそうか
    • このタイミングでは作業をしていないので、答えが分からないことは問題ではありません
  • ターゲットは誰か(誰を説得しようとするのか)
    • その人に何をしてもらいたいのか

実際に、先ほどの事例で設計シートを埋めた例を見てみましょう。

一番下の「詳細」に書かれていること、つまり、「関西支部の売上回復施策の内容・予算を承認してもらう」ことが今回の目的になります。

目的を具体化する方法

目的を具体化するには、何をすればよいのでしょう? 

答えはシンプルで、シートの上側を記入していくだけです。つまり、説得の目的を具体化するためには、問題と論点を明確にします。この2つこそが説得の起点であり、説得の目的はここから具体化されます。

ということで、この2つを掘り下げていきましょう。

問題と論点

早速ですが、問題と論点とは何か、それが説得とどのように関係するのかを、以下のスライドにまとめてあります。

問題と説得の関係

順に見ていきましょう。

問題

まずは「問題」から始めましょう。

問題とは、「ゴールとギャップのある現状」のことです。スライドを見ると、ゴールと現状にギャップがありますよね。

ここに関しては別エントリーで詳しく解説しているので、このような「問題」という言葉の用法に不慣れな人は、以下のリンクを読んでから先に進んでください。

説得の根本的な起点

説得をするとき、その根本には受け手の問題が必要です。言い換えると、説得が成立するためには、受け手が何らかの不満・欲求を有していなければなりません。

これは受け手の立場で考えると明らかです。たとえば、あなたはいま当エントリーを読んでいる(=私から説得されている)わけですが、あなたが資料作成やプレゼンにまったく興味を持っていないということがありえるでしょうか? 普通に考えてありえません。興味がないなら、他のことに時間を使いますよね。

つまり、問題を抱えていない(=興味のない)テーマに関する説得を受ける人はいないのです。私もそんなことはしませんし、あなたもそうでしょう。

こうなる理由はシンプルで、説得されることにもコストがかかるからです。文書を読むにしてもプレゼンを聞くにしても、時間は確実にかかりますし、場合によってはお金もかかりますよね。受け手がそのようなコストを払うためには、「自分の抱えている問題が解決されそうだ」という期待が必要です。

もちろん、例外はあります。分かりやすいのは強制的に参加させられる会議や集会ですね。あなたが問題を有していようがいまいが、説得を受けるしかありません。これを説得者の側から見れば、まったく問題を抱えていない受け手が来ることもあるということです。

ただし、このようなケースはあくまで例外です。原則として、説得が成立するためには、受け手が「知りたい・どうにかしたい」といった問題を抱えている必要があります

Point

受け手が問題を抱えているところでしか、説得は成立しない

ということは、どんな説得も、受け手の問題を理解するところから始まるということです。これが、設計シートの一行目が「問題」になっている理由です。

記入例

では、設計シートの記入例を確認しておきましょう。

今回の状況設定では、関西支部の業績が昨対比マイナス20%と急速に悪化していましたよね。これは明らかに受け手(社長)にとって「よろしくないこと」です。よって、これをそのまま「問題」として記述すればOKです。

問題を書くときは、とにかく「受け手の問題」になっているかに注意してください。たとえば、「社長に命令された業務を遂行しなければならない」というのも、この状況下における問題です(ゴールは業務が遂行された状態で、現状は業務が遂行されていない)。しかし、それはあなたの問題ですよね。受け手はそんなことに興味がありません。ここに書いていいのは受け手の問題だけです1

また、ここに書いたことはそのまま資料に転載するので、受け手に見せられるレベルの表現で書いてください。一言一句を推敲するということです。設計シートの大半は自分向けのものであり、受け手に見せませんが、問題と論点だけは例外です。

論点

先に進みましょう。問題の次は論点です。

ここでの「論点」とは、要するに「問い」のことです。問題から生じる問いを「論点」と呼ぶわけですね。詳しく知りたい人は以下のリンクを参考にしてください。

記入例

論点の記入例を確認しておきましょう。問題をひっくり返すだけです。

これも問題と同じように、「受け手の論点」になっているかを確認してください。言い換えると、受け手が答えを知りたがる問いになっているかということです。この例だと、「関西支部の売上を回復させるために、何をするべきか?」という問いの答えを、社長は知りたがりそうですよね。

目的を明らかにする方法

論点が書けたら、次はその論点の答えを想像してください(まだ確定した答えである必要はありません)。あとは、「その答えに対し、ターゲットがどうしてくれると嬉しいか」を考えれば、あなたの目的は明らかになります。先ほどのシートで確認してください。

以上で、目的が明らかになりました。とにかく、最初から「目的を明らかにする」と考えるより、「問題と論点を明確にする」と考えてください。遠回りなように見えて、このほうが近道です。

ロジックとレトリックの方向性

目的が明らかになったら、次はロジックとレトリックの方向性を考えましょう。分かりやすく言うと、「どれくらい厳密な話をするか」と、「どのように伝えるか」の方針を決めます。

たとえば、同じ「スマホ利用の注意点」というテーマで資料を作るとしても、相手が大学教授と近所の小学生では、内容や伝え方はまったく変わりますよね。相手が大学教授なら論文のデータなどを根拠にする必要があるでしょうし、伝える内容はできるだけ文字に落とすべきです。一方、相手が小学生ならとにかく大きな文字で重要なポイントだけを断言してあげたほうが親切なこともあるでしょう。

このように、内容や伝え方そのものを考える前に、状況や受け手との関係を加味して、「どれくらい厳密な内容が必要か」、「どういう伝え方をするべきか」を考えておくのです。

具体的に考えるべき要素は、以下のとおりです。

  1. 本番の形式(どういう状況で資料を使うか)
  2. 受け手の分析(受け手はどんな人で、自分との関係性はどうなっているか)

つまり、自分が資料を使うコンテクストを分析するということです。詳細は割愛するので、シートを見てください。

シートを埋めた例も見ておきましょう。

このように、コンテクストを分析することで「文書(Word)がいいのかプレゼン(PowerPoint)がいいのか」、「プレゼンなら、フォントサイズはどれくらいにするべきか」といった問いに対する答えが出てきます。これらの方向性が定まったら、資料作成を始めましょう。まずは内容からです。

ちなみに、これは特にプレゼン(PowerPoint)に言えることですが、ネットや書籍で見つかるノウハウの大半はこのようなコンテクストを考慮していないため、一部の人には当てはまらない(むしろ、間違っている)内容になっていることが多々あります(例:「テキストをできるだけ使うな」)。コンテクストによって正解は変わるので、まずは自分のコンテクストを分析するのがオススメですよ。

以上、簡単ですが説得の設計を説明しました。詳細に説明すると長くなりすぎる関係上、このエントリーではバッサリ割愛した部分もあるので、設計を詳しく学びたい方は以下の書籍をお読みください。

宣伝:Liffelの電子書籍資料作成・プレゼンのプロセス

【第1巻は無料】ロジカルな資料作成・プレゼンの教科書シリーズ

次は内容の作り方を学びましょう。以下のエントリーに進んでください。

また、プレゼン関係のエントリーは以下にまとめてあります。こちらも参考にしてください。


  1. もちろん、受け手の問題が、あなたの問題でもある状態が理想です。その方がやる気が出ますし、説得を楽しめるからです。しかし、説得が成立するための絶対条件は受け手の問題だけです。あなたの問題は「あった方がマシ」程度の位置づけなので、ここを間違えないようにしましょう。