比較表の作り方

このエントリーでは、比較表の作り方を説明します。

生きていると、複数の選択肢から1つを選ぶ状況が多々あります。たとえば、電化製品の買い物です。候補となる製品の中から、1つを選ばなければなりません。

このような状況で正しい意思決定をしたければ、比較表が役に立ちます。比較表とはどんなものか、選択肢をどのように並べ、どんな視点で評価すればいいのかを学びましょう。これはあらゆるシーンで使える思考ツールなので、しっかり押さえてください。

では始めましょう。

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比較表とは

早速ですが、以下のスライドを見てください。比較表とは何かをまとめました。

比較表の作り方

このように、比較表とは、横軸に選択肢(1列目のみ価値観)、縦軸に評価軸を持つ表のことです。たとえば、携帯電話の比較表なら以下のようになります。

X PhoneY Phone
ディスプレイ5インチ6.2インチ
バッテリー18時間24時間
価格6万円9万円

あなたも一度はこのようなものを見たことがあるはずです。なお、「価値観」については後述するので、ここでは割愛してあります。

この表は何を考えているのか

まだピンとこないかもしれませんが、実際の作成例はこの後に出てくるので安心してください。その前に、この表は何を、どんな順番で考えているのかを明確にしておきましょう。ここがポイントです。以下のスライドを見てください。

評価のフレームワーク

このように、比較表とは、選択肢を評価するフレームワーク(考え方の枠組み)です。私たちは、選択肢の中から1つを選ぶためにこの表を作成します。このことを忘れないでください。

評価のフレームワーク

選択肢の評価 = 評価軸 × 評価軸ごとの評価 × 価値観

論点(問い)の構造で書くと、以下のようになります。

  • 選択肢の評価:もっとも優れている(=選ぶべき)選択肢はどれか?
    • 評価軸:それぞれの選択肢を、どのような視点で評価するか?
    • 評価軸ごとの評価:選択肢ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
    • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

なお、実際は選択肢を洗い出すところから考えます。そして、なぜ選択肢を洗い出すかといえば、結局は何をするか決めたいからです。

ここまでの話をまとめると、論点の構造は以下のようになります。

  • 解決策として、何を行うか?
    • 解決策の洗い出し:解決策として、どんな選択肢があるか?
    • 選択肢の評価(絞り込み):どの選択肢が優れているか?(=どの選択肢を実行するか?)
      • 評価軸:それぞれの選択肢を、どのような視点で評価するか?
      • 評価軸ごとの評価:選択肢ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
      • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

このあたりの話は、すべて説明していると長すぎるので割愛します。ピンとこない人は以下のエントリーから順に読んでください。

つまり、比較表とは、上記の論点の構造を表に落とし込んだものです。言い換えると、論点の構造が先で、比較表はそのアウトプットにすぎません。

ここをしっかり押さえておかないと、いつの間にか表を作ることが目的化して、何を考えたかったのかを見失うことがよくあります。比較表を作成する目的は「何をするか決める」ことであり、表はあくまでも中間成果物です。この点に注意してください。

Point

比較表を作成する目的は、選択肢を評価し、意思決定することである

比較表の作成例:部活の選択

ではここから、比較表の作成例を見ていきましょう。ここでは誰もが一度は経験しているであろう、部活の選択を例に説明します。

Example

あなたは今日、ユーラシア高校に入学した。ユーラシア高校では、1年生は必ず部活に所属しなければならないルールになっている。評価のフレームワークを使って、どの部活に入部するか考えなさい。

まずは論点の構造を書きましょう。先ほどのフレームワークをそのまま適用するだけです。

  • どの部活に入部するか?
    • 解決策の洗い出し:ユーラシア高校には、どんな部活があるか?
    • 選択肢の評価(絞り込み):どの部活が自分にとって望ましいか?
      • 評価軸:それぞれの部活を、どのような視点で評価するか?
      • 評価軸ごとの評価:部活ごとに、評価軸ごとの評価はどのようになるか?
      • 価値観:それぞれの評価軸をどのように重み付けするか?

この論点の構造を、比較表に落とし込んでいきます。

ここから先はなるべく、Excelなどの表計算ソフトを立ち上げて、自分でも表を作成してください(ノートとペンでも可能)。自分の手を動かすことに勝る学習はありません。

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STEP1:最終的に作りたい比較表のイメージを作る

最初に、最後に見たいものを作成します。ここがキーポイントです。

フレームワークに従えば、最初に比較表の枠組みを作れます。ということで、実際に作ってしまいましょう。続きを読む前に、最終的な表がどのような形になるか、自分でも想像してみてください。

比較表の例

この段階では「横軸に部活の種類、縦軸に評価軸が入る」ことが分かっていれば十分ですが、それを明確にするためにも、いくつか具体的な内容を書き込んでしまうのがオススメです。また、最後の行に加えている「総合評価」に関しては後述します。

この「最後に見たいもののイメージを、最初に作る」というのは、比較表に限らず、とても重要なことです。ゴールがなければ、作業は的を得ないものになってしまうからです。今回のケースでも、情報収集のために人に質問しようにも、最終的な成果物のイメージがなければ、そもそも何を質問すべきなのかが分かりません。

もちろん、作業を進める過程で「このイメージではダメだ」ということになれば、イメージを作り直すことは問題ありません。とにかく、個々の作業をする際には、「最後に何を作るために、その作業をしているのか」を念頭に置くようにしましょう。

Point

最後に見たいものを、最初に作る

STEP2:横軸(選択肢)を埋める

枠組みができたら、あとは作業をして表を埋めていくだけです。まずは横軸を埋めましょう。具体的には、選択肢の幅出しをするということです。ユーラシア高校には、どんな部活があるでしょうか?

今回のケースでは、この論点を考える必要はありません。普通は高校から部活のリストが配布されるからです。ということで、ユーラシア高校には以下の部活があることにしましょう。分かりやすさのために、数は少なめにしてあります。

  1. サッカー部
  2. バスケット部
  3. 美術部

これがあなたの選択肢です。早速、この選択肢を表に入れましょう。ここでは、運動系と文化系のカテゴリー分けも加えておきました。

比較表の例

なお、この例題のように、選択肢がいきなり網羅的な形で提供されるケースは例外なので注意してください。

実践では、どんな選択肢を用意できるかはあなたの創造力やリサーチ力で決まります。ここで漏れてしまった選択肢は選べないので、しっかり時間を使ってください。

今回のケースなら、「自分で新しい部を創設する」というのは創造的な選択肢になるでしょう(学校のルール次第ですが)。話が複雑になるので今回はここまで考えませんが、「与えられた選択肢以外の可能性を模索する」という視点を持っておくと、選択肢の幅が広がります。

STEP3:縦軸(評価軸)を埋める

次に、評価軸を決めます。部活を選ぶ際のポイント(視点)には、どのようなものがあるでしょうか?

簡単に思いつくものとしては、以下のものがあります。

  • 自分がやりたいことか
  • 拘束時間
  • 顧問の先生の評判

ほかにはどんなポイントがあるでしょうか? 先に進む前に、自分でも考えてみてください。過去に自分や周りの人がどんな基準で部活を選んだか、思い返してみるとよいでしょう。また、「部活選び ポイント」といったキーワードで検索をかけることも有効です。

比較表の例

ほかにも、以下のような評価軸がありえますが、あまり軸の数が多くなっても分かりにくいので今回は割愛しています。

  • 費用(部費や、機材にかかるもの)
  • 学校内でのヒエラルキー
  • 社会に出ても役に立つスキルが身につくか
  • 拘束時間の部分も、「夏休み・冬休み中の活動」も加え、年間トータルの拘束時間を見積もったほうが確実

また、評価軸に「その他」を入れておくと、評価軸以外の視点が出てきたときにフォローできます。とりあえず入れておくのがオススメですよ。

なお、ここも選択肢と同じで、実践では、評価軸はできるだけ多く出すべきです

詳しくは後述しますが、不要な評価軸は価値観による重み付けで切り捨てるので、この段階で評価軸が多いことは問題ではありません。むしろ、怖いのは重要な評価軸が漏れてしまうことです。私見ですが、今回の例では「レギュラーになれそうか(活躍できそうか)」という軸は重要なわりに見落とされやすいと思います。

評価軸が出せない場合にどうするか

ただし、今回のケースのように、綺麗に評価軸を切り出せるとは限りません。おそらく、最初はうまく評価軸を出せないでしょう。これには2つの理由があります。

第1に、コツを掴むまでは、軸を切り出すことは難しいです。これはもう、どうしようもありません。

この場合の対策はシンプルで、まずは「メリット/デメリット」、「ベネフィット/リスク」といった、ざっくりした評価軸だけ書いておき、次のステップ(評価する)に進んでください。

評価を書く中で、何度も出てくる単語があるはずです。そこに注目して、評価軸を括り出しましょう。たとえば、評価の中に「高い/安い」という言葉が頻出するなら、あなたが気になっているのは「コスト」です。

逆に言うと、もし縦軸が「メリット/デメリット」のような曖昧なもののままなら、それはあなたが評価軸を括り出せていないことの証明です。これはプロとして比較表を作成するなら恥ずかしいことなので、絶対に避けてください。世の中には「メリデメ表」という言葉もあるようですが、そんなものを作るべきではありません(慣れるまでは仕方ないですが)。

第2に、経験がない領域では、評価軸は分かりません。たとえば、プログラミングを一度もやったことがない人がプログラミング学習法の比較表を作成しようとしても、評価軸が分かるはずがありません。今回は「部活の選択」という、多くの人が経験している状況設定なので、評価軸を出すのは簡単に思えるだけです。

経験がない領域で比較表を作る場合は、以下のような方法で評価軸を探すことになります。

  • 自分でひととおり経験する
  • 検索する
  • 専門家(経験者)に質問する

もっともオススメなのは、自分でひととおり経験することです。納得感・説得力が違いますからね。ただし、時間や費用の関係でこれができないこともあるので、その場合はほかの方法を使ってください。

選択肢と評価軸の配置

余談ですが、軸の配置が逆(選択肢が縦軸で、評価軸が横軸)になっている比較表をよく見かけるので、これについて補足します。

まず、原則としては、横軸に選択肢を配置するべきです。人間の視野は横に広く、横に並んでいるもののほうが瞬間的に比較できるからです。比較表を作るとき、比較したいのは選択肢であって評価軸ではありませんよね。よって、選択肢を横軸に配置すべきです。

問題はスマホの存在です。知ってのとおり、スマホは縦長です。縦長のディスプレイで選択肢を横軸に配置すると、(見せたい側である)選択肢が画面からはみ出るという事態に陥ります。よって、以下の2つの条件を満たす場合は、縦軸と横軸を入れ替えることを検討してください。

  1. 表をスマホで見ることが想定される
  2. 選択肢の数が多い(目安としては5つ以上くらい)

ただ、軸の入れ替えはあくまで最終手段だと考えるべきです。横軸に選択肢を配置するのが王道なのは間違いないので、縦軸に選択肢を配置すると素人感が出ます。できれば、選択肢をカットするなど、別の手段も検討してください1

STEP4:表を埋める(評価する)

話を戻して、先に進みましょう。評価軸が決まったので、実際に評価をします。それぞれの部活を先ほどの評価軸に従って評価すると、どのような結果になるでしょうか?

ここでは、質問や観察といったリサーチを通じて、できるだけ客観的な評価をします。以下のエントリーも参考にしてください。

ただし、今回のケースもそうですが、すべてを客観的に評価しきることは難しいです。評価することが最終ゴールではないので、どこかで諦めて先に進むことも重要であることは覚えておいてください。

では、あなたは友達や先輩から情報収集し、評価を終えたとしましょう。表を埋めた結果、以下のようになりました。

比較表の例

ここでのポイントは2つあります。

まず、スタンスをとって評価しましょう。具体的には、「◯・△・✕」か、数字のどちらかを書き込むということです。評価として使えるのは、このどちらかしかありません(「◯・△・✕」に「◎」を加えたり、「良い/悪い」などの表現に変えるのはOK)。

このような比較表でよく見かけるのは、「テキストのコメントだけが書いてあって、評価が分からない」というものです。これでは意思決定に使えないし、人に見せるために表を作っているなら、評価から逃げたような印象を与えます。必ず評価を書き込んでください。

もちろん、評価が間違っている可能性はあります。しかし、評価とセットで、評価の根拠も書いておけば問題ありません。あとは議論すればいいのです。

次に、個々の評価軸の評価が終わったら、選択肢そのものを評価しましょう。このケースだと、「要するに、サッカー部はどんな人が選ぶべき部活なのか?」という論点を考えるということです(バスケット部と美術部も同様)。それが一番下の「総合評価」に書いてあることです。

繰り返しになりますが、私たちが最後に決めるのは「どの選択肢を選ぶか」です。個々の評価は、それを決めるためのインプットでしかありません。個々の評価に夢中になって、「どの選択肢が、どんな人にオススメなのか」が曖昧なままでは本末転倒です。この落とし穴に落ちないよう、注意してください。

STEP5:価値観を明らかにする(評価軸に重みをつける)

最後に、価値観を明らかにします。表に提示された評価軸の中で、あなたはどれを重視しますか?

これが分かれば、選ぶべき選択肢はおのずと決まります。たとえば、どうしてもやりたいことを部活でやることを重視するなら、バスケット部を選ぶべきです。高校では勉強を頑張りたいから、部活はとにかく拘束時間の短いものを選びたいということなら美術部でしょう。ここで太字にしているのが、具体的な価値観の例です。

参考までに、価値観の列を埋めた表の完成形を掲載します。

比較表の例

この場合だと、サッカー部に入るべきという結論が出ます。これにて、比較表を作成するゴール(=意思決定をする)が達成されました。

ただし、実際にここまで細かい価値観を設定できることはまずありません。価値観というのは「要するに、重要なのはこれだ」という類の、ざっくりしたものになりがちです。よって、本番の意思決定では、重要な評価軸は1つか、せいぜい2つくらいに絞り込まれることが多いです。

実際、あなたが部活を決めたときに、こんなに細かく考えなかったでしょう。「これがしたいから」、「拘束時間が短い部活がいい」といった、少数の評価軸だけで意思決定したはずです。

このように、最終的に重要な評価軸は価値観によって絞り込まれるので、STEP4と5は順序を入れ替えても構わないし、可能であればそうすべきです。価値観が先に分かれば、重要な評価軸だけを評価することで、トータルの作業量を減らせるからです。

しかし、仕事でこのような比較表を作るときは「自分以外の誰かのために表を作る。かつ、その人に会うことは難しく、価値観は分からない」ことが多々あり、なかなか理想どおりには行かないというのが私の実感です。

また、表を作らせる側の視点に立つと、先に価値観を伝えてしまうと、都合のいい意思決定になるように評価が歪められるリスクがあるのです。あなたが表を作らせる側の人間であるなら、たとえ自分の価値観が明らかだとしても、それを伝えるべきかは慎重に検討すべきです。

価値観が分からない場合

さて、ここで一つのことを考えてみてください。普通は、中学より高校のほうが部活をうまく選べますよね。これはなぜでしょう?

答えはシンプルで、中学での経験を通じて、部活の選択に対する価値観が形成されているからです。部活を選ぶ際のポイント(評価軸)や、そこで自分が何を重視すべきか(価値観)を、中学での実体験から分かっているわけですね。

逆に言えば、中学における部活の選択は価値観を形成しようがないため、どうしてもギャンブル的な側面が強くなります。「友達が入るから」、「流行っているスポーツだから」といった理由で部活を選び、後悔した人もいるのではないでしょうか。

このように、経験がない領域においては価値観が定まっていないため、決められなかったり、間違った意思決定をしてしまったりします。どうしたらよいのでしょう?

私の知るかぎり、これはどうしようもありません。どうしても決める必要があるわけではないなら、意思決定を保留してもいいでしょう。しかし、決めるしかないなら、たとえ価値観が定まっていなくても決めるしかありません。

現実的な対応策としては、決めた後で意思決定を変更できるオプションを持っておくことが有効です。

部活のケースなら、「1年ごとに転部OK」といったルールを作ることがこれに該当します。これなら、選択を間違ったときでも、被害が1年で済みますよね。ただ、これが現実的に導入可能なのかは分かりません。

もう少し分かりやすい例だと、就職があります。一度も働いたことがない状況では、労働に対して価値観を形成することは不可能です。かといって、「働かない」という選択はほとんどの人にとって現実的ではない上に、これでは何も前進しません。とりあえず、どこかで働くしかないのです。

実際に働いてみれば、「やっぱり給料がすべてだわ」、「ここまでハードワークしたいわけじゃないな」といった、自分なりの価値観が形成されます。これを受けて、現在の職場で働き続けるか、転職などを模索するかを再び意思決定すればよいのです。

つまり、就職のケースでは「転職しようと思えばできる状況に自分をおいておくこと」が、「意思決定を変更できるオプション」になります。

比較表の題材

最後に、比較表を作成する題材として面白そうなものをいくつか紹介します。時間があるときにチャレンジしてみてください(解答例はありません)。

  • 就職先
    • 業界:どの業界に就職するべきか?
    • 企業:どの企業に就職するべきか?
  • プログラミング学習法:どのようにプログラミングを学ぶべきか?
  • 大人になってから始める趣味:いまから、何を趣味として始めるか?

以上、比較表の作り方を説明しました。意思決定するときには、最初に「最後に見たい比較表」が作れると、後はサクサク進むことが多いです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、意思決定の基本スキルなので、何度も練習して身につけてくださいね。

さらに学習を進めたい人は

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。ロジカルシンキング学習をさらに進めたい人は、以下のエントリーに進んでください。比較表の縦軸には必ず入れる、コストについて説明しています。

また、ロジカルシンキング関連のエントリーは以下のページにまとめてあります。こちらも参考にしてください。

Footnotes

  1. 個人的には、「1つの選択肢を選ぶこと」ではなく「数多くの選択肢の全体像を見せること」が主目的の場合は、選択肢を縦軸に配置したほうが分かりやすい気がします。